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違世界ダイジェスト  作者: ながずぼん
第7章 イェリコ~エルサレム編
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第61話 ねえ、読者の疑いってどうおもう?

 聖画工房の爺さんから、天日干ししておくから夕方までに取りに来いと言われ、ひとまず緑川たちと合流するため工房を出る。

 工房を出たところで「お腹空いちゃいましたね」と青山に言われ、バザールの屋台で何か食べてから合流場所へ向かうことに。きっと向こうも同じ流れだろう。

 大きい通りを北に進むと夥しい人の群れに飲まれる。「はぐれたら大変だから」と古典的な理由を口にして白井は青山の手を握る。―――嫌がられなくてよかった...


 人をかき分けるように進み屋台を物色する。本当にいろんなものが売っている。

「んふふ。デートみたいですね」青山はそう言って笑うが少し元気がない。

 召喚者の旗のような楕円のパンが大きな籠に入れられて売られている。みんなそれに塩のようなものを付けて食べている。おいしそうなので2つお買い上げ。

 さらに一品。揚げパイというかでかいラビオリみたいなやつ。2つお買い上げ。

 それらを買って一旦人混みから退避する。大きい通りから一本外れた通りを歩き、木陰を探す。ちょうどいい感じの壁の窪みの木陰があったので、そこに並んで座る。


 楕円のパンにはたっぷりゴマがまぶされていて、千切ってハーブミックスソルトにつけて食べる。外側はカリカリで中はふわふわ。めちゃくちゃおいしい。

 揚げパイは、中に羊肉とチーズ、あとは豆を潰したものが入っている。塩気が強いが楕円のパンとの食べ合わせは最高だった。


「食事って、どこで何を食べるかじゃなくて、誰と食べるかで美味しさが変わるらしいですよ。わたしはとっっってもおいしいです。白井さんはどうですか?」


「すっごくおいしいよ。こっちの世界に来て…、いや順位はいいか。とにかくすごくおいしいし、青山さんが元気だと安心する。昨夜はぐっすり眠れた?」


「えへへ。実は、イェリコの夜からあまり眠れてなくて…。わたしがいい思いをしているのに、あの子たちはご飯食べているのかなって…、気にしても仕方ないのに…」


 どこか元気がなかった理由を彼女は大粒の涙と共にようやく吐き出した。

 それを見て白井は手にした食い物を脇に置いて、ぎゅっと彼女を抱きしめた。


「君のせいじゃないよ。君は悪くない、君が悪いわけじゃないんだ」


 青山は白井の肩に顔をうずめ「ぅぅぅ」と小さな声を上げてひとしきり泣いた。

 白井はそんな彼女の髪を泣き止むまで黙って撫で続けた。


 少し落ちついた青山が泣き腫らした目で「えへへ、ありがとうございます」と少し恥ずかしそうに白井に礼を言い、改めて彼女の方から首に腕を回して抱き着いた。

 「これ、嫌じゃないですか?」バイノーラルで囁かれる吐息のような青山の声に白井の脳は完全に焼き焦がされた。「い、い、嫌じゃないですぅ」と素っ頓狂な声を上げて白井は腕の持って行き場次第では大変なことになると固まった。


「うふふ、ならよかったです。白井さんの左手で撫でられたから元気出ましたよ」


 二発目の青山謹製焼夷弾は彼の脳のみならず心臓をも焼き焦がした。

 全身からぷすぷすと白い煙を上げ「あ、青山さん、その左手っていうのは…」と白井が真意を問うと、青山はぱっと腕を解いて身体を離し「あー、揚げパイすっかり冷めちゃいましたね!」と笑って脇に置いた食べ物をもぐもぐ食べ始めた。

 ―――どこまで知っていて言っているんだ…、まさかとは思うけれど…



 食事を済ませたら緑川と赤坂と合流するため聖墳墓教会の前に行く。

 彼らは先に着いていたが、昼食を済ませてきたからつい今しがた到着したらしい。どうやら同じものを食べていたらしく、ゴマのパンおいしいよねと盛り上がった。

 竿も槍頭も段取りは済んでいて、旗の布を持ち込めば取り付けてくれるそうだ。


 4人で旅の装備品などを買って周り、道を尋ねて有名な『嘆きの壁』を見に行ったが、ネットで見た広場ではなく住居に囲まれた小さなスペースだった。黄色い帽子を被った人たちが地面に跪いて熱心に祈りを捧げているのを離れたところから眺めた。


 日差しが少し弱まり始める頃、例の旗を回収しに行く。道すがら白井は「いろんな事情が絡まっているのでデザインは気にしないようにしましょう。どこかで作り直してもいいし」と緑川と赤坂の期待値を下げるのに必死だった。

 そして二人が旗を目撃し、驚愕する。

「サ〇ロン… いや、まて、まさか… まさかね… ハハハ」と緑川。

「じ…、邪眼…、邪眼が戻って来た!」と赤坂。

 みんなで出し合って工房の爺さんにお礼だと言って金を渡し、金工市場へ。


 金工市場はとにかく煩いところだった。どこの工房も真鍮かなにかを叩いていて、あちこちからカンカン、カンカンと音がしている。

 緑川の案内でお願いした工房へ行き布を渡す。少し待つように言われ隅っこで待つ。


「そういえば、どうやって依頼したんですか?」


「ジェスチャーと、絵です。ほら、あそこの机に紙と葦のペンがあるじゃないですか。この辺は製紙技術が中国から来てるんで、西欧みたいに羊皮紙と羽根ペンじゃないんですよ。ふつうに紙をメモに使ってます」


 緑川の解説を聞いているうちに、召喚者の禍々しい旗が完成した。

 槍頭は丸くてそこだけかわいい。

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