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十三話 武器を選ぼう

 一面が芝生の訓練場の端。


「今日は君の使う武器を決めてもらおうと思う」


 突然訓練場に呼び出されたミタツは、開幕一番目の前に武器を並べられて困惑していた。それとは対照的にフェリは満面の笑みである。


 何にフェリがうきうきしているのか理解できないまま、ミタツは自分の前に広げられている武器たちに目を向けた。


 青々とした芝生の上に左から、両手持ちのクレイモア、二メートルはあろうかという長槍、またそれより一回り小さい長刀があり、そこから片手剣、日本刀、ダガー、爪と並んでいる。


 ミタツは尋ねる。


「遠距離武器の選択肢は?」

「無いね。今回の暗殺は屋敷に潜入するつもりだから、あんまり音が出たり、魔力が残ったりするようなものは好ましくない。上にもみ消されるとしてもね。納得したかい?」


 ミタツは渋々うなずく。正直あまり死ぬ感覚を味わいたくはないので、遠距離から攻撃できるようなものがいいな、とこっそり思っていたのだ。


 だがその望みもむなしく消え去り、ここにミタツが一度は死ぬ未来が確定した。ミタツは複雑な心境のままじっと武器に目をやる。


 そして、まずは順番に手にとることにした。


 ミタツはクレイモアに手を掛ける。


「重たい……」

「ま、クレイモアはさすがに君には無理だろうね」


 一〇キロのダンベルなど目では無いほどに思い。正直少しもてるのでは無いかと期待していたミタツは、ここでもまた自分の非力さに失望するのだった。


 また、クレイモアは本来相手の骨肉を鎧の上から叩き潰すためのものである。よって暗殺者には不向きだ。なぜここにあるのか。


 ミタツは静かにクレイモアを置き、今度は長槍を持ち上げる。


「……これも潜入には不向きじゃない?」

「うん? まあ確かにそうだね。一応持ってきただけだよ。ちなみに、手にはなじむかな?」

「いいや、全然。結局は重いし」


 先ほどのクレイモアほど重くは無く、持ち上げることは可能だが、軽く振るだけでも重心が持って行かれて、槍に遊ばれる。これもまた無理だと見切りを付けて、ミタツは槍を地面に置いた。


 日本刀は既にキャンプで触っていたのでスルーして、今度は西洋の片手剣を持ち上げた。


 なんとかミタツの筋力でも持ち上げられる。しかしミタツは首を傾げる。


「……なんか合わないな。自分のキャラじゃない気がする」

「不思議な言い方だね。物語の登場人物じゃあるまいに」


 そう本人たちが知らず知らずのうちにメタ的なことを言うが、ここに誰かの意図は無いことをお伝えしておく。


 片手剣を何回か振ってから手応えを確かめて、やはり違ったのでそっと地面に戻した。


 そしてミタツはダガーを拾った。


 ダガーはミタツの筋力でも扱いやすく、またよく手に馴染んだ。


 ミタツは軽く振ってみる。重みは手の先を伝って、対象を両断するエネルギーに変換された。


 ミタツは一人で頷く。それを見てフェリが微笑む。


「なんだ、暗殺者二人になるんだね。バランスが悪いなぁ」

「うっ……い、いつか筋力も付けるから!」

「ま、期待してるよ」


 フェリが残念な物(主に腕)に目をやってミタツの肩をポンポンと叩いた。叩かれたミタツの肩は心做しかしょんぼりと高さを下げるのだった。


「ま、そうと決まれば特訓だね。もうそろそろ依頼も来るだろうし」

「……そうなの?」

「早ければ二週間、長くても一月の間には来るね」

「そっか……。それまでにもっと鍛えなきゃなぁ」


 依頼がやってくるのを、ミタツは切に願う。


 その間、フェリがミタツから少し距離をとってナイフを構えた。


「それじゃ、ちょっとやってみよっか」

「うん。よろしくお願いします!」


 そうしてミタツの長い特訓が始まった。

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