どうしてヒョウ柄パンツなんか履いてんのbyフジミヤ
目覚まし時計にキッチリ起こされ時間に余裕のある俺は、インスタント味噌汁をすすりながら、
テレビのニュースを見ていた。
時計は昨日のうちに買い直し、寝ぼけて壊さないよう冷蔵庫の上に置いてある。
いやー、味噌汁最高だね。
この国に生まれて良かったぜ。
俺が魔法瓶なんか持っててもすぐに壊しちまうから、
持ち運びは難しいけどな。
命の塩水とは使い分けだな。
「次のニュースです」
画面の向こうの美人なニュースキャスターが、次のニュースを読み上げようと紙をめくる。
「…建設途中で放棄されていた廃ビルが、突如倒壊。
倒壊に前後して、同地域では震度2の地震が観測されており、
現地ではこの地震が、老朽化していた廃ビル倒壊の引き金になったものと予想されています。
怪我人は、有りませんでした」
ニュースキャスターが読み上げている間、
倒壊前の廃ビルと倒壊後のガレキの山の映像が、比較として順番に流された。
間違い無く、昨日俺とカイリが暴れたせいだ。
お騒がせしてすんません、バリバリ当事者です。
飲んでいたインスタント味噌汁が底を尽き、
ヨシトモの時と同じように、沈んでいたワカメが現れる。
昨日は非常事態だったので残したが、今回はしっかり味わってやろう。
「しちじよんじゅうごふん!しちじよんじゅうごふん!」
時計をかたどったキャラクターが画面内を動き回り、視聴者に現在の時刻を知らせる。
「そろそろ行くか…」
既に着替えていた俺は、リモコンを取ってテレビを消し、
すぐ側に置いてあるカバンを拾い上げた。
勿論中には、俺の命の塩水が入っている。
今日は飛び降りたり、猛ダッシュする必要は無い。
普通に玄関を出て鍵をかける。
エレベーターを使おうとしたら、二台あるうちの一台が最上階の11階で停止していて、
もう片方は1階に降りたところだった。
通勤通学ラッシュの時間帯の割にはツイてるほうだ。
俺は最上階から降りてきたエレベーターに乗り込み、1階行きのボタンを押す。
エレベーターは降りて行き、4階で一旦止まった。
しかしドアが開いても、エレベーターを待っているはずの人の姿は無かった。
「何だ、誤作動か?」
思わず漏れた独り言に対し、んな訳ねえかと思いつつ、
ドアを閉じるボタンを押す。
その後はスムーズに進み、俺は1階に到着した。
早く朝の日差しと外気に当たりたいと、ホールを小走りで駆け抜ける。
自動ドアをくぐり、空を見上げた。
「…は?」
女子高生だ。
茶髪の女子高生が落ちてくる。
その高さはざっと4階。
さっきボタンを押したのはこいつだったのだろうか。
こういう時、俺の場合はどうする?じゃなくて、
どうしてヒョウ柄パンツなんか履いてんの?が正解だ。
少なくとも、目の前の命を見殺しにはしない。
俺は迷わず、ヒョウ柄パンツの女子高生を受け止めた。
「きゃあっ!」
悠々と登校するフジミヤの頭上に、突如舞い降りた女子高生。
彼女の身投げには、いったいどんな事情が……?