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でもどうしてこんな何も無い所にbyハツカ

 静かな住宅街をうろつき、いつもの様に空き巣の狙いを付けていたオイラ。

 小さな公園を通りかかった時、そこに制服を着た女の子が1人で居るのを見つけた。

 茶髪セミロングでムチムチボディ、オイラとそんなに歳は変わらなさそうだ。

 1人用のブランコに座りギイコギイコと揺らしている。


「ねえねえそこの女の子っ、そんなとこで何してんのさ?」


 俯いていた女の子がオイラを見上げてきた。

 オイラは更に近付く。


「ヒマならふたりで遊ばない?

 オイラ丁度カノジョ募集中だしさ、ふたりで燃え上がろうよ」

 ねっ、どう?」


「残念。

 ツレがその内戻って来るから」


「ちぇっ、まあそうだろうさ。

 君みたいな可愛くてスタイル抜群の子が、ぼっちなワケ無いもんね?」


 自分の後頭部を左手で撫で、ペロッと舌を出す。

 女の子は何か気に障ったみたいで、口をへの字に曲げてオイラを軽く睨んだ。


「ぼっちで悪い?でもあんたみたいなのとくっ付くよりは、

ぼっちで居る方がずっとマシね。

 ほら帰った帰った」


「えっ?今ツレが戻って来るって言ったよね?」


「カレシとは言ってないでしょ」


「じゃあ女友達かい?」


 女の子がそっぽを向いた。


「……半分正解」


「もう半分は?」


「男友達。

 良い加減察しなさいよ」


「あー……」


 つまり、カップル1組とこの子の3人なのかな。

 でもどうしてこんな何も無い所に……?


「ココア、戻ったぞー」


 オイラの後ろから男の声がして、女の子がそっちを見た。

 振り向くと、中肉中背の男子と気持ち背の低い黒髪ツインテの女の子。


「ぜんざいあったよ!」


 ツインテの子が茶髪の子に駆け寄り、缶ジュースを手渡す。

 オイラの隣に並んだ男子が、オイラを指差してくる。


「ココア、こいつ誰?」


 さっきからココアココアって、もしかしてこの茶髪の子の名前なのかな。

 キラキラネームってやつ?


「ただのナンパ男。

 しつこいから追っ払ってくんない?フジミヤ」


 フジミヤってのが、この男子の名前?


「ナンパかぁ。

 ココアは今先輩にフラれてフリーだろ?試しに付き合ってやれよ」


 何故か棒読みするフジミヤに対して、ココアちゃんは缶ジュースをぶん投げた。

 顔面セーフって言うには無理があるけど、フジミヤは声ひとつ上げなかった。


「余計なお世話よ」


「ココアー。

 選り好みしてたら行き遅れちゃうよ?

 ホントだよ?」


「ヨリコ! 上から目線やめて!」


 黒髪ツインテの子はヨリコちゃんか。

 まあ小動物っぽくて悪くは無いけれど、オイラは断然ココアちゃんのが好みさ。


「変なことされないか心配だってんなら、俺達が一緒に居てやるからよ」


 フジミヤは平然とした様子で腰を折り、自身に投げつけられた缶ジュースを拾い上げる。

 鼻血出てるのに。


「あのキミ、鼻血が……」


「私知ってる! これってダブルデートって言うんだよね?」


「あんた達さ、勝手に決めないでよ」


「とりあえずショッピングモールでも行くか。

 ナンパするくらいだから暇だよな?」


 フジミヤがオイラの肩をポンと叩く。


「え!?」


「ナリツグぅ。

 こないだ嫌な予感がするとか言ってたじゃん」


「今日は良いんだよ今日は。

 じゃ、早速行こうぜ」


 フジミヤはオイラの手首を掴み公園の外へ引っ張る。

 すぐにヨリコちゃんが小走りで付いて来た。

 ナリツグってのは下の名前かな。


「ちょっとフジミヤ、待ちなさい!」


 オイラが肩越しに見ると、ココアちゃんがブランコから立ち上がった。


「置いてくぞー」


「ホントだよ?」


「こら! ぜんざい!」


「えっと……オイラはどうしたら?」


 フジミヤはオイラを引っ張ったままココアちゃんを置き去りにし、

ヨリコちゃんを伴ってどんどん公園から離れて行く。

 強引な展開に困り果てていると、フジミヤが耳打ちをしてきた。

 血の匂いがする。


「あいつツンツンしてるけどかなりの苦労人で寂しがりだからさ、

 愚痴とか話だけでも聞いてやってくんねえかな?」


「まあ、それくらい構わないけど……」


「俺フジミヤ。

 不死身なんかじゃないけどな。

 お前はなんて言うんだ?」


「ハツカさ」


「私はヨリコだよ。

 ハツカ、ココアをよろしくね」


「だから! 勝手に決めないでって!」


 ココアちゃんが怒鳴る。

 一応オイラ達について来てるみたいだ。

 これ、燃え上がっちゃって良いのかな……?


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