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これを知ってるのは俺だけで良いbyフジミヤ

 現在真夜中の11時。

 俺は自宅の自室にて机に向かい、これまでの超能力関連の経緯をノートにまとめる。


 まず大前提として、俺は瀕死時に発動するタイムリープを付与されている。

 1周目の時点でな。


 そしてヨリコが不死身だ。

 これについては仮説の域を出ないが、

1周目にてココアが銃を撃つまでに幽霊のヨリコが俺に憑依し、

タイムリープ発動に相乗りしたんだと思われる。


 そして1周目の幽霊のヨリコがあの時そうしたように、

2周目以降の生きたヨリコにオサムの不死身をシフトしたんだろう。

 幽霊が視えるであろうウララが目視出来る範囲に幽霊のヨリコが居なかったってのが、

この仮説を補強する一因となる。


 そもそも俺の知る限りでは、他人の超能力を操作出来るのは幽霊のヨリコのみだ。

 この仮説が正しいとすると、

幽霊のヨリコは俺を交通事故の無限ループに閉じ込めようとした事になる。


 タイムリープ前の段階で既に片鱗を見せまくってはいたが、

ヤンデレと認定して差し支えないだろう。

 ……仮説だ、これはあくまでも仮説だ。

 次に移る。


 カイリはどうだ。

 俺とのケンカ自体行なっていないので、カイリの馬鹿力は開花していない……筈。

 そもそも2周目以降の俺は不死身じゃないから、カイリの怒りを引き出しようが無い。

 あいつはこのまま一生開花しないかもなあ。


 んでヨシトモ。

 ヨシトモは危険予知……もといタイムリープを失っているらしく、

話しかけてもごく普通の反応しか返ってこない。

 俺に親切丁寧なのは相変わらずだが。


 1周目では危険予知で交通事故を回避した結果、

同じ場所で俺とヨリコが事故に遭ったと。

 ヨシトモはそう言っていた。

 2周目以降も俺達が事故に遭っているので、ここは変わらないんだろう。


 となると俺が2週目にタイムリープした瞬間、

それまでヨシトモに向けられていた超能力が俺にシフトされたと、つまりこうなるのか。


 不死身の本来の使い手であるオサムは今も病院で眠っているんだが、

同じく超能力を奪われているヨシトモはああはなっていない。

 超能力を奪われるのと植物人間になるのとは直接結び付いていないみたいだ。

 1周目のヨシトモもシフトされた訳だが、特に倒れたりしなかったしな。


 ココアは今の所開花していない様子。

 ショッピングモール自体行ってないので先輩の浮気を目撃してないし

(のちに普通にフラれた)、

アツシとも接触していない。


 飛び降りに関しては日時を知ってるので、事前に止めさせてもらった。

 1周目の俺よろしく不死身のヨリコに受け止めさせる手も考えたが、

無痛症の俺と違ってヨリコは普通に痛みを感じるので却下。


 ショッピングモールをパスすると縁結びが開花せず、

ココアの両親が仲直りしないんじゃ無いかと懸念していたが、結局仲直りしたらしい。

 そうなる運命だったのかも知れないし、ココアは既に開花してるのかも知れない。

 元々効果が分かり辛い能力だったが、どちらにせよ本当に良かった。


 アツシとウララについては、触らぬ神に祟りなしって所か。

 俺達とは別の高校に通ってるらしいし、当分出くわす事も無いだろう。


 ここまででも流れがかなり変わってるので、本来ならハツカの事はスルーでも良かった。

 あの日にココア達が大公園を訪れない限りは大火災に至らないだろうしな。

 だけどさ……可哀想じゃん。


 お節介焼きな俺は時間を合わせ、

 俺とくっ付けず完全フリーのココアとハツカを半ば無理矢理付き合わせた。

 なんだかんだで仲良くやってるみたいだが、

最低限大火災にならないよう、ココア達のスケジュールを監視しておかなくてはならない。

 

ココアとの恋愛を通してハツカが空き巣から足を洗い、

真っ当な道に戻ってくれるよう俺は祈る。


 クマ子とシゲゾウは、特に気にしなくて良いだろう。

 俺が不死身だった1周目では派手にやらかしたせいで超能力者だとバレ、

コピー先として目を付けられていたが、

今は不死身じゃないし大人しくやってるので無問題。

 こいつらも気にしなくて良し。


 残るはオサム。

 彼が幽霊のヨリコによって眠らされているのは、1周目と変わりない。

 現在生きたヨリコが不死身である必要性は無いので、

カイリのためにも彼には目覚めて貰いたいもんだ。


 これまた1周目同様、

オサムを起こすには霊能力を持つウララの協力が必要になるだろう。

 ウララを見付けない事にはこれは叶わない。


 こうなると、

ココアと最初に会った日にはショッピングモールに行った方が良かったのかもな。

 ゲームコーナーでウララにだけ会って先輩やアツシは回避、特に先輩の方。


 ウララから情報を得たアツシが何かして来る可能性は否定出来ないが、

ウララも交えてやり取りすればそうそう暴力沙汰にはならないだろう。

 良識のあるウララは危険思想なアツシの良いストッパーだからな。

 なんせ火のトラウマでパニクっててもウララにだけは従っちゃうくらいだ。


 大火災のきっかけとなる拳銃騒ぎも気になるが、

これはもうお巡りさんに任せるしかないだろう。

 俺が不死身ならまだ何とかなるんだが、こればっかりはどうしようもない。

 ヨリコを壁にするなんてのもふざけた話だしな。


 ざっとこんなもんか。

 今後は緩やかにウララとの接触を図りつつ、ココアとハツカの動向に注目。

 特に1周目で大火災が起こった日は要注意だ。


「ナリツグ、何してるの?」


 俺は咄嗟にノートを本棚へ隠した。

 これを知ってるのは俺だけで良い。

 椅子をクルリと回転させ、背後に居たヨリコと目を合わせる。

 いつから居たんだ。


「何って、勉強だよ。

 てかお前何しに来たんだ? 時間分かってるか?」


「えへへ。

 ナリツグとキスしたくなっちゃって。

 寝れないし」


「おい……」


 ヨリコは問答無用で俺に抱き付き唇を重ねた。

 クマ子の様に舌を入れたりはせず、ヨリコはすぐに俺から離れる。

 チュッ、て感じ。


「はいっ! 終わり!

 ナリツグ分を補給しました」


「お前って随分積極的だよな。

 恥ずかしいとかないのか?」


 ヨリコは両手を背中に隠し、ニコニコしている。


「恥ずかしいなんて言ってる間に、いつ死んじゃうか分からないんだもん。

 いのち短し恋せよ乙女、だよ。

 ホントだよ?」


 即死級の交通事故を経験しているだけあって、ありきたりな言葉にも説得力を感じる。


「……それもそうだな。

 じゃあさ、ヨリコ」


 俺は椅子から立ち上がり、ヨリコの両肩にそっと手を置いた。

 ヨリコは元々丸い目を更に丸くし、ポカンと口を開けている。

 これから言わんとする言葉を心で唱え、俺は喉の渇きを感じツバを飲み込んだ。


「何?」


「……いかん、やっぱり恥ずかしい。

 忘れてくれ」


 ヨリコから離れ、再度椅子に座り机と向き合う。


「えっ、えっえっ、え?」


「忘れてくれ」


「ええーっ!? ナリツグぅ! 今絶対何か言いかけてたでしょ」


「もう寝る。

 お前も帰って寝ろ」


 寝たふりっぽく机に突っ伏してみた。

 すると、ヨリコが背中に覆い被さって来る。

 胸が潰れているが、同年代であるココアと比べて大分物足りない。


「ナリツグがさっきの続きを喋るまで帰らないから。

 ホントだよ?」


「おいおい、勘弁してくれよ」


 俺から言える訳ないだろ。

 寝れないんなら夜食として、一緒に激辛ラーメン食いに行こうなんてさ。

 守れ!不死宮くん

 完

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