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守れ!不死宮くん〜あの時も不死身だったら〜  作者: 山盛り
彼だけが良く知っている
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放っておく訳にはいきませんbyウララ

王様ゲームに勝利した私の絶対命令で、ココアさんはフジミヤさんに告白をするべく、

私を置いて一足先にドーナツショップから出て行きました。

残った私は引き続きドーナツを楽しんでいましたが、

独りだと話す相手が居ないので黙々と食べてしまい、あっという間にドーナツを完食。

私の透視能力で偶然異物混入を見抜いたきな粉ドーナツだけが、

全くの手付かずでトレイの上に置いてあります。


「どうしましょう、これ……」


ココアさんに怪しまれない為とは言え、

異物さえ取り除けば食べられなくもないドーナツをワザと床に落とすのは、

今思えばあまり宜しくなかったかも知れません。


ただ、幾ら透視出来るとは言っても砂の様な小さ過ぎる異物までは視えませんし、

異物が混入している時点で食べ物として扱うのは難しいですよね。

それに、これはお店で作ったドーナツですから。

一切の責任はお店側にあります。


「……やっぱり、入ってますね」


念の為にきな粉ドーナツを千切ってみた所、中から米粒大のガラス片が出て来ました。

自分の能力を疑っていた訳では、決してありませんが。

しかし、心の眼ではなく肉眼で直視するとショックが大きいですね。


このきな粉ドーナツを手にしたのが私だったから良かったものの、

ココアさんや他のお客さんが知らずに口にしていたらと思うと、

かつてアツシさんに「少しは怒りを感じろ」と言わしめたこの私でさえ、

店員さんに文句の一つも言いたくなります。


……いえいえ、ここは言いたくなるで終わらせず、きっちり言っておかないと。

私はキリリと眉に力を込め、強く出る決意を持って席を立ちました。


『ブルルルル』


「はい?」


スマホが振動しています。

何かの着信が来たみたいですね。

異物混入の件は一旦後回しにしておいて、私は再度着席。

ハンドバッグからスマホを取り出して起動します。


アツシさんからだと嬉しいのですが、彼はただでさえ口数の少ないタイプなのに、

超能力を失ってからはより一層自分の殻に閉じこもってしまっているので、

あまり期待は出来ませんね。


「……カイリさんから?」


私にメッセージを送信したのは、今朝病院で面会したばかりのカイリさんでした。

ケガの影響で操作がしづらいと聞いていましたけど、

無理を押してでも連絡したい事が起こったのでしょうか。

私は僅かに首を傾げながらも、メッセージを確認します。


「えっと、オサムに幽霊が憑いてるかも知れねえ。

悪いけど今日中にまた俺様んとこ来てくんねえか?

タダとは言わねえから。

頼む!この通り!」


だそうです。

メッセージの最後には、

茶色い猫のようなキャラクターが両手を合わせて土下座している画像が添えられていました。

誰に聞かせる訳でもないのに、ついつい声に出して読み上げてしまいましたね。


「……幽霊、ですか」


カイリさんが何故そう思ったのかは置いておくとして、

幽霊絡みとくればこの私の専門分野ですし、

霊能力を持たない普通の人には手に負えない為、放っておく訳にはいきません。

私はカイリさんに返信します。


「良いですよ、一度見てみましょう。

今日は予定が空いていますので。

いつ頃にしますか?」


すぐにまた、カイリさんが返信してきます。

ケガしている筈なのに文字打ちが速いですね。

誰かに操作を代わってもらっているのでしょうか?


「……えっ、今すぐ?」


カイリさん、何やら大慌てのご様子ですね。

最も、眠るオサムさんの顔を最初に見た時のカイリさんの取り乱しようは、

今思い返しても凄まじいの一言に尽きます。


私は女ですし男友達も居ません(アツシさんは……恋人です)ので、

男同士の友情には明るくないのですが、

一刻も早くオサムさんを回復させてあげたくなる気持ちは、

このメッセージからだけでも十分伝わってきます。

きっと、カイリさんとオサムさんのお二人の間にはかつて、

友情を超えた、愛情のような強い関係があった事でしょう。


「分かりました。

今から向かいます。

それ程遠くないので、30分以内には着きますよ……と」


私がメッセージを送信すると、カイリさんはまたしても素早い返信を。

先程と同じ猫が眼を潤ませ、そこからまるで滝のように大袈裟な涙を流し、

祈るように指を組んでいる画像のみが送られてきました。

おまけに、猫の頭上にはthanksの単語が浮かんでいます。

カイリさん、私に来て貰えるのがそこまで嬉しいんですね。


「ふふっ」


猫の画像がちょっと可笑しかったので、つい笑ってしまいました。

独りで居る私が急に笑ったりしたら、

周りのお客さんに気味悪がられたりしないでしょうか?

……考え過ぎですね。


「さて……」


今から向かうと宣言した以上、約束は守らなければなりません。

私はスッと席を立ち、ハンドバッグを持って歩き出しました。

私が今こうしている間にも、

眠るオサムさんを見てカイリさんが心を痛めているかと思うと、

歩くペースが自然と早くなってしまいます。


「……あっ!」


ドーナツショップを出た直後、私は異物混入を店員さんに報告するつもりだった事を、

今更になって思い出しました。

それ以前に、トレイを片付けるのさえも忘れてしまっているではないですか。

今からでも遅くはないとドアに振り返った所、

透明な壁越しに私が座っていたテーブルが見えました。


「ああっ……」


私の残したトレイを、店員さんが異物混入ドーナツ毎回収してしまっています。

異物のガラス片自体は肉眼で見る為に取り出してありますから、

その存在自体は店員さんも気付いてくれる筈です。


しかし、あれだとガラス片がきな粉ドーナツの中に混入していたとは判断出来ません。

単に私がドーナツを一個丸ごと(千切ってありますが)残した上、

ゴミのガラス片まで一緒くたに放置したと捉えられかねませんね。

でも、もう手遅れです。

後はあの店員さん次第ですね。


「うーん……」


飛ぶ鳥跡を濁さずなんて言葉がありますが、今日の私はそうはなれなかったようです。

不完全燃焼な気分を引きずりつつも、

私は本日2度目となるカイリさんの居る病院へと足を運びました。

思えば久方ぶりの幽霊案件、腕が鳴ります。

私は準備体操をするような気分で、両肩をグルグルと回しました。

切り替えなくちゃ。


『ゴキッ』


「あ痛!」


本当に腕が鳴ってしまいました。

いえ、これだと肩でしょうか?

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