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G【虹のシンフォニー】  作者: 左と右(SATOWU)マコト
第一章:止まない雨の島(全22話)001-022
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第001話:虹のオーブ


第一章: 止まない雨の島


挿絵(By みてみん)


画像はイメージです。



ぽつ……ぽつ……ぽつ……。


窓の外は今日も雨だ。


グローブは窓の外に広がる灰色の空を、静かに眺めていた。


◇

*グローブ:

単調な雨の音は嫌いじゃない……。

どちらかと言えば……好きだ。

自分でも理由は分からないけど……。

ただ、この音を聞いていると不思議と心が落ち着くんだ。

◇


グローブは幼い頃から、雨音を聞きながら壊れたカメラや時計を分解しては、また元通りに組み直すのが好きだった。


=

*マリヤ:

ちょっと、グローブ、グローブ!

=


背後から聞こえてきたのは、祖母であり、この島の村長でもある、マリヤの優しい声だった。


=

*マリヤ:

朝からまた、雨を見てたのかい?

そろそろ出かける支度、しなさいよ。

=


グローブは頷くと、レインコートに袖を通した。


◇

*グローブ:

ボクは物心ついた頃から、ずっと祖母と二人で暮らしていて――

両親は、ボクが6歳の頃に亡くなったと聞いている。

それ以前の記憶は、まるで切り取られたように、まったくないんだ。

そしてなぜか、両親の詳しい話を聞こうとすると、いつもはぐらかされる。

だからボクは、両親の名前すら知らない。

◇


=

*グローブ:

じゃあ、いってきます。

=

*マリヤ:

いってらっしゃい。

=


グローブが家を出ると、その向かい側には『ダイヤモンドビーチ』が広がっていた。


=

*ナギ:

よう、グローブ!

おはようさん!

=


声をかけてきたのは、ベテラン漁師のナギだ。


=

*ナミ:

おはよう、グローブ。

今日もありがとうね。

最近、あんたが手伝ってくれるようになったから、本当に助かるわ。

=


ナギの隣で、網を繕っていた妻のナミも、穏やかに目を細めた。


グローブは挨拶を済ませると、網を手に取り、黙々と作業を始めた。


あっという間に網のほつれを繕っていく。


そして最後に、指先でそっと結び目をなぞった。


その瞬間――

淡い光が網の表面を走った。


=

*ナギ:

おいおい……すげぇな、お前は。

なんで簡単にそんなことができるんだ?

=

*ナミ:

本当……。

私たちがやるより、何倍も速いし……。

それに軽くて、頑丈になってるのよね。

=

*グローブ:

えっ?

言われた通りに直してるだけだけど……。

=

*ナギ:

俺たちもお前と同じグレーの髪だから、特別な波長を使えるはずなんだけど……。

全然うまくいかねえんだよな。

=

*ナミ:

そうそう。

それをグローブは、無意識でやってしまうんだもの。

=


グローブが繕った網は、波長の力によって、魚も傷つけにくくなっていた。


それからしばらくすると、パタパタと小走りの足音が近づいてきた。


=

*チサト:

おはよう、グローブ!

お父さん、お母さん、お弁当、持ってきたよ。

=


元気な声を響かせながら駆けてきたのは、幼馴染のチサトだ。


グローブは片手を軽く上げて応えた。


=

*ナギ:

おう、ありがとよ!

=

*ナミ:

チサト、いつも助かるわ。

=

*チサト:

ちょっと足りないものがあったから、いつもより遅くなっちゃった。

ごめん。

=

*ナギ:

大丈夫だよ。

まだ休憩には早いからな!

=

*ナミ:

そうね。

今やってるところが終わってから、お昼にしましょうね。

=


チサトはいつも、みんなの昼食を用意してくれている。


ようやく一区切りがついた頃――

ナギが大きく伸びをした。


=

*ナギ:

よーし、そろそろ飯にするか!

=

*ナミ:

そうね、もうお腹ペコペコだよ。

=

*チサト:

グローブ、お疲れ様。

向こうで一緒に食べよっ!

=


二人は船小屋まで移動して、濡れたレインコートを脱いだ。


=

*チサト:

たくさん作ってきたんだから、いっぱい食べてよ。

=

*グローブ:

うん。

……本当に今日はたくさんだね。

じゃあ、いただきまーす!

=


グローブは勢いよく、おにぎりにかぶりついた。


口いっぱいに広がる優しい味に、自然と頬が緩んだ。


=

*グローブ:

うまっ!

チサトのお弁当、本当に美味しいよ。

それに「シャキーン」って頭が冴える……。

なんで?

=


そんなグローブを見て、チサトは嬉しそうに胸を張った。


=

*チサト:

えへへ、ありがと。

だって、隠し味があるからね。

=

*グローブ:

えっ、隠し味って?

=

*チサト:

それは、秘密。

内緒だよーだ。

=

*グローブ:

えーっ、教えてよ。

=

*チサト:

それより、グローブ!

今日はあなたの誕生日でしょ。

=

*グローブ:

あっ……。

=

*チサト:

「あ」って、あなた、まさか自分の誕生日、忘れてたんじゃない?

=


二人は顔を見合わせて、いつものように笑った。


そして昼休みも終わり――

気づけば、空は夕暮れの淡い灰色へと染まっていた。


=

*ナギ:

グローブ、お疲れさん。

=

*ナミ:

ありがとうね。

本当に助かったわ。

=


グローブは挨拶をして、自宅へと帰った。


=

*グローブ:

ただいま、おばあちゃん。

=

*マリヤ:

おかえり、グローブ。

お疲れ様。

=

*グローブ:

おばあちゃん、今日、ボクの誕生日だったんだよ。

覚えてた?

ボクはチサトに言われるまで、忘れてたんだ。

=

*マリヤ:

ええ、もちろん、覚えてたよ。

本当に大きくなったね……。

おめでとう。

16歳になったお前に、渡したいものがあるんだ。

=


マリヤは、長年首から下げていた宝珠の首飾りを静かに外した。


=

*マリヤ:

これはね、《虹のオーブ》というんだ。

=

*グローブ:

それって、おばあちゃんがいつも身につけてたペンダントだよね。

どうしてボクに?

=

*マリヤ:

うちが代々、この『グレーダイヤモンド島』を治める家系だってことは、知ってるね。

=

*グローブ:

うん。

おばあちゃんが村長なのも、その理由だよね。

=

*マリヤ:

ああ、その通りだよ。

そして、この《虹のオーブ》が――

次の後継者を選ぶんだ。

……触れれば、分かるよ。

=


グローブは戸惑いながらも頷き、それを両手で受け取った。


その瞬間――

《虹のオーブ》が、心臓の鼓動のように一度だけ温かく脈打った。


次の瞬間――

グローブの意識は空高く舞い上がった。


◇◇◇


島の北側にそびえる『オパールマウンテン』の山頂より、さらに遥か上空。


まるで、本当にそこにいるかのような、不思議な感覚に包まれた。


=

*グローブ:

何だろう、この感覚……。

どこかで見たことあるような気がする。

=


気がつくと、眼下には島と海、そして南北へと広がる大きな大地までもが見えていた。


そして視界の先に、巨大な光の文字が浮かび上がった。


=

*グローブ:

……【G】……?

=


その時――

どこからともなく声が響いた。


=

*???:

行きなさい……。

『オパールマウンテン』の山頂へ。

=

*グローブ:

えっ……?

=


その直後――

景色が反転し、グローブは真っ逆さまに落ちていった。


=

*グローブ:

うわぁぁぁーーーっ!!!

=


◇◇◇


激しい浮遊感のあと、グローブの意識はハッと現実へと引き戻された。


=

*マリヤ:

……グローブ、グローブ!

大丈夫かい?

=


グローブは、握りしめていた手をそっと開き、《虹のオーブ》に視線を移した。


=

*グローブ:

えっと……おばあちゃん。

ボク……。

気づいたら、『オパールマウンテン』よりずっと高い場所から世界を見下ろしていたんだ。

……《虹のオーブ》を受け取った瞬間、そんな感じがした。

=

*マリヤ:

……えっ!?

=

*グローブ:

あとは……【G】……?

=

*マリヤ:

……ジー?

=

*グローブ:

ええっと……。

ううん、よく分かんない。

ただ……。

『オパールマウンテン』の山頂へ行けって声が聞こえたよ。

=


マリヤはそれを聞くと目を見開いた。


何かを言いかけたが、やがて静かに息を吐いた。


=

*マリヤ:

……そうかい。

《虹のオーブ》は、お前を選んだみたいだね。

=

*グローブ:

ボクを……?

=

*マリヤ:

ああ。

だから、その《虹のオーブ》は、お前が身につけておきなさい。

=

*グローブ:

うん……。

=


グローブは《虹のオーブ》を首にかけた。


=

*マリヤ:

似合うじゃない。

……焦らなくていい。

これから、少しずつ覚えていけばいいよ。

=

*グローブ:

分かった。

=


こうしてグローブの16歳の誕生日は、静かに終わろうとしていた。


窓の外の雨は、いつもより少しだけ優しく聞こえる。


まるで――

何かの始まりを祝福するように。


ぽつ……ぽつ……ぽつ……。


そしてグローブが深い眠りに落ちたあと――

その胸元の《虹のオーブ》は、静かに淡い八色の光を瞬かせ始めた。


挿絵(By みてみん)


画像はイメージです。

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