478話 終焉の血戦(3)
全員が、戦闘態勢を取った。
エーデルガッシュ、マーガス、アマテラス、ブリード、大輔、さくら、るな、エレナ、そして遥斗。
それぞれが武器を構え、覚悟を決める。
「奴は物体を瞬間移動させる!気を付けるのだ!攻撃も対象に取られるぞ!」
アマテラスの言葉に、全員が息を呑む。
空間を捻じ曲げ、因果を超越する能力。
それがエルミュレイナスの神子のスキル。
エーデルガッシュが、遥斗に視線を向けた。
「遥斗……皆に指示を頼む!」
その言葉に、全員が頷く。
ここにいる全員——
気持ちは同じだった。
誰かが指揮を執らなければならない。
バラバラに動いては、エルミュレイナスに各個撃破されるのは火を見るよりも明らか。
連携こそが勝機。
遥斗は迷わなかった。
(誰かがやらなくちゃ。全員の能力を把握している僕がやるのが、一番効果的なはずだ!)
感情ではなく、合理的な判断。
ならば、やるだけ。
遥斗の思考が、加速する。
瞬時に、全員の能力と状態を分析。
戦闘経験、スキル、魔力量、疲労度——
全てを、考慮に入れた。
(前衛は……戦闘力があってダメージが少ない者が適任。ユーディ、マーガス、アマテラスさん……か)
エーデルガッシュの神子の力は極限まで強化されている。
マーガスのオリハルコンは絶大な補助効果、他にも希少金属を多数装備。
アマテラスは護符で引き上げられた、自軍最高のレベルを有する。
三人とも、十分前線を張れる能力と余力がある。
(中衛は……援護と追撃が可能な者。ブリード、るな、そして……僕)
ブリードは剣聖、前衛を任せるには力不足だしダメージも負っている。
るなは神獣で戦闘力も高いが、遠距離こそが真価を発揮するタイプ。
遥斗はどこへでもサポートが可能で、回復役でもある。
これらは前衛が作った隙に対して、攻撃を叩き込む。
(後衛は……サポートに徹する。さくら、大輔、エレナ)
さくらはモンスターテイマーとして、るなをコントロール。
大輔は竜騎士の力を失ったが、それでも皆を守る力は十分にある。
エレナはもう一人の回復薬として、最後方で待機。
配置、決定。
遥斗が、静かに告げた。
「前衛——ユーディ、マーガス、アマテラスさん」
「中衛——ブリードさん、るな、僕」
「後衛——さくらさん、大輔、エレナ」
「全員、僕の指示に従って。バラバラに動かないでください。必ず連携を意識するように」
遥斗の指示に全員が頷く。
準備は整った。
「お願い、マーガス!」
「おう!行くぞ!」
先陣を切ったのはマーガス。
オリハルコンの大剣を構え、魔力を込める。
「レア・アルケミック!」
ミスリルの胸当てが変形した。
無数の短剣に変形し、刃が空中に浮遊する。
「投擲!」
遥斗の指示が飛ぶ。
マーガスが腕を振るうと、無数の短剣がエルミュレイナスに襲いかかった。
さながら機関銃のようだ。
しかし——
それは陽動。
「ユーディは右!アマテラスさんは左から遅らせて!」
遥斗の声が響く。
エーデルガッシュが、地を蹴りエルミュレイナスに迫る。
神速の踏み込み。
体の小ささを逆に利用して、地を這うような移動術。
アマテラスも、同時に動く。
金色の残光を残して、左側から。
挟撃。
意識が、短剣に取られている今こそチャンス。
エルミュレイナスとて、三人の動きは当然捉えていた。
しかし、動かない。
動けないではなく、動かない。
片手を、ゆっくりと上げた。
「ヘル・エクスプロージョン!」
無詠唱。
黒き爆炎が、短剣を飲み込んだ。
ミスリルの刃が熱で溶けていく。
しかし——
マーガスは既に跳んでいた。
「うおおおお!オーラブレード・クリムゾン!」
オリハルコンの大剣が紅く輝く。
マーガスのオーラを纏いて、切れ味が飛躍的に上昇した。
さらに刃からの魔力噴射で斬撃が加速する。
超速の上段斬り。
エーデルガッシュの接近は、迎撃が難しい地面スレスレ。
狙いは、足。
上下同時攻撃。
「マーガス、ユーディ、狙いを絞らせないで!」
遥斗の指示に、マーガスが即座に反応。
振り下ろす速度を、僅かに遅くする。
エーデルガッシュの剣と、交錯するタイミング。
完璧な、連携。
しかし——
エルミュレイナスは、目を閉じた。
「児戯……」
片手で、オリハルコンの大剣の側面をそっと、叩いた。
軽く。
本当に、軽く。
それだけでマーガスの軌道が逸れた。
エーデルガッシュの方へ。
「ユーディ、前転回避!」
エーデルガッシュが、攻撃から回避へ。
前転で、超速斬撃をかわす。
オリハルコンの大剣は、地面に突き刺さった。
回避を選択しなければ、エーデルガッシュの首は切断されていただろう。
「サンダーボルト!」
アマテラスの魔法が炸裂。
アマテラスはマーガスたちの攻撃が防がれた時の為に、二の矢として機会を伺っていたのだ。
天より降り注ぐ雷の奔流が、エルミュレイナスを包み込もうと降り注ぐ。
「レジスト!」
エルミュレイナスは、またも無詠唱。
雷が直撃するが、完全に無効化された。
「くっ……!」
アマテラスが、歯噛みする。
「マーガス、剣を槍に!ユーディ、マーガスに間合いを取らせて!」
「アルケミック!」
マーガスが、叫ぶ。
オリハルコンの大剣が、長槍へと変形した。
切っ先をエーデルガッシュが掴む。
遥斗の指示に従って、全力で槍を引いた。
自身も、後方に跳躍。
エルミュレイナスと距離が開いた。
「さくらさん!セレスティアル・ムーンライト!ブリードさん!合わせて!」
るなの全身から、月の光が溢れ出す。
ブリードが、剣を振るう。
「シュトルムバッハー!トルナーーード!」
神獣の必殺スキルと剛剣の暴風スキルが発動した。
月の光と豪風。
二つの力が融合し、エルミュレイナスに襲い掛かる。
エルミュレイナスは、片手を翳す。
「ブラックホール・フェイド!」
最高位魔法でさえも無詠唱。
黒い球体が出現し、全てを吸い込む。
月の光も。
暴風も。
全て——
消えた。
強い。
圧倒的に、強い。
底知れぬ強さ。
なぜなら——
エルミュレイナスは、今だ一歩も動いていないからだ。
全ての攻撃をその場で捌いている。
移動する必要が、ない。
しかし遥斗は、その戦い方を見ていた。
そして、冷静に分析していた。
(無詠唱魔法……圧倒的なスピード……そして、冷静な判断力……そこまでは分かる)
(でも……なんだろう、この違和感……)
「エレナはまだ動かないで!」
遥斗が、後方にも指示を出す。
「白虎は温存!アイテムも僕が指示を出すまで使用しないで!大輔は2人をカバー!」
エレナと大輔が、頷く。
(今は情報が欲しい……違和感の正体を知りたい!)
遥斗の思考が、加速する。
「マーガス、もう一度行こう!ユーディ!アマテラスさんは後続で!」
指示が、次々と飛ぶ。
「ブリードさんと、さくらさんは一時待機!攻撃態勢は維持して!」
遥斗は——
エルミュレイナスを見ていた。
その動きの全てを。
(必ず……見つけてみせます……あなたの秘密を……)
遥斗の目が鋭く光った。




