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【完結】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
第7章 終焉の血戦編

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466話 カオス

 

 神人の内に、確かなものは何もなかった。


 記憶は曖昧。

 感情も不確か。


 五つの魂が混ざり合い、全てがカオスと化している。

 レゾの憎悪。

 ヴァイスの執着。

 ルドルフの狂気。

 ガルモの衝動。


 そしてミラージュリヴァイアスの忠誠。


 記憶は意味を成さない。

 誰が誰だったのか。

 何をしていたのか。


 全てが、濁流のように渦を巻いている。


 あるのは——


 殺意だけだった。


 全てを殺す。


 ただ、それだけ。



 しかし、たった一つだけ鮮明なものがあった。


 目の前の人物。


(危険……)


 それぞれの魂に共通して刻まれた記憶。

 遥斗という存在。


 コイツだけは——


 絶対に殺す。

 真っ先に殺す。

 何を置いても殺す。



 オーラが一気に跳ね上がった。


 大気が震え地面が軋む。

 それは明確な殺意と破壊への渇望。


 しかし、遥斗はそれを目の前で見せられても心は静かだった。


 魂の奥底を観察するように、冷徹な瞳が神人を見据える。


 動じない——

 ただ、粛々と戦う準備を進めるだけ。


 遥斗が、ランスと盾を手放した。

 勿論、それらは地面に落ちない。


 マリオネイターの糸が、武器を支えているのだ。


 さらにマジックバックから、魔力銃を取り出す。

 それもまた、糸で接続される。


 三つの武器が、遥斗の意思に従い空中を舞う。


 そして、遥斗自身は——

 両手にグングニールを出現させた。


 魔力で形成された槍、竜騎士のスキル。


 遥斗の周りには自在に動く武器群。

 そして両手には、魔力の槍。


 それは、まるで武神のよう。



 神人の口が大きく開いた。

 まるで遥斗を嘲笑するかの如く。


 しかし嗤っているわけではない。


 溜めなし。


 ソニック・ロア。

 破壊の咆哮が瞬時に放たれた。


 その威力は以前の比ではない。


 効果範囲。

 射程。

 破壊力。


 全てが、桁違い。


 空気が裂ける。

 音速を超えた衝撃波が、全てを飲み込もうとする。



 遥斗はすでに動いていた。

「ドラゴンズ・イージス。ドラゴンズ・フォートレス」


 クリスタルシールドを神人の眼前に飛ばし、そこに二つのスキルが重ね掛けした。


 七色を称える盾が、魔力の光を帯びる。

 絶対防御。


 距離が近ければ近いほど——

 防げる範囲が増える。


 ソニック・ロアを完全に遮断した。


 衝撃波は、盾に阻まれ四方に散る。

 地面が抉れ、建物が崩壊する。


 しかし——


 遥斗も、他の者たちも、無傷だった。



 間髪入れず、遥斗が地を蹴る。


「ドラゴン・ダイヴ」


 標的まで一直線。


 竜騎士の突撃技による高速移動。

 風が唸りを上げる。


 神人が、横へ跳ぶ。

 遥斗の移動速度よりも圧倒的に速い。


 簡単に距離を取られてしまう。

 遥斗は魔力銃を飛ばし、即座に追撃を行う。


 パンッ!


 銃声が響いた。


 だが、音しか聞こえなかった。

 弾丸は見えない。


 神人が、一瞬だけ気にとられた。

 それは油断と言ってもいい。


 直後——


 見えない弾丸が、神人の胸に着弾した。



 神人は幻を見る。


 子どもが殺される映像。

 泣き叫ぶ声。

 血に染まる光景。


 それは——異世界人の誰かのトラウマ。


 恐怖心の弾丸の効果だ。

 不可視の追尾弾。

 当たれば、相手の恐怖を呼び起こす。



 一瞬の硬直。

 それで十分だった。


 遥斗が、間合いに入る。


 両手のグングニールと、浮遊するアダマンタイトのランスの連撃が始まる。


「スピアスラスト!」

 一の突き——胸部。

「ライトニング・スピア!」

 二の突き——腹部。

「ドラゴンスラッシュ!」

 三の突き——頭部。


 確実に入った。

 全ての槍が神人の体を貫く。


 しかし——

 手ごたえがない、槍が突き刺さっているにも関わらず。


 傷口が、瞬時に塞がる。


 いや、違う。


 回復したのではない。

 単純に元に戻ったのだ。


 神人の体は、実体であって実体でない。


 いわば、エネルギー体。

 魔力と精神の塊。


 貫いたとしても形が元に戻るだけ。

 物理攻撃は、ほぼ無意味。



 遠くで見ていた者たちが、絶望する。


「そんなんありかよ……」

 大輔が呟く。


「もう……終わりだ……」

 エルウィラインも希望を失いかけていた。


 倒せない。

 こんなものと、戦いようがない。



 神人は絶望を喰らった。

 もはや勝ったも同然。

 後は死を振りまくだけ。


 ぞんざいに、遥斗へ拳を振るう。


 しかし——


 転んだ。

 神人が。

 前のめりに倒れ、地面に激突する。


 神人の思考が、停止する。


 なぜ?

 なぜ転んだ?

 何が起こった?


 答えは——遥斗。

 いつの間にか足に黒糸が絡みつき、動きをコントロールしていたのだ。


「エネルギー体……ということはゴースト系に似てるね。マリオネイターが最も得意とする相手だ。」


 遥斗はここに来るまでに「マリオネイターのポーション」を追加で飲んでいた。

 そのおかげで、いまやマリオネイターの能力も百パーセント使えている。


 黒糸は手で操る必要はない。

 魂から直接糸が出る。

 それは精神を操る力。


 エネルギー体に対して有効な能力。



 神人は立ち上がり、糸を簡単に引きちぎった。

 力勝負では、潜在能力が違いすぎるために分が悪い。


 スキルでの束縛など意味を成さない。


 しかし、神人は脅威を感じていた。

 やはり、この男は危険だ、と。


 様々なスキルを併用し、戦い方を変える。


 予測できない。

 油断できない。


 神人の額の角が赤く染まった。


 強大な魔力が集中する。


 クリムゾン・ホーンレイ。


 神獣の切り札である紅き破壊光線。

 それは神人も使えて当然のスキル。



 遥斗はこの瞬間を待っていた。

 動きの止まる、この瞬間を。


 浮遊するランスが、背後に回り込む。


 そして最速の一撃。


「ライトニング・スピア」


 紫電を纏ったランスが、神人の背中を射抜いた。


 しかし、神人は止まらない。

 ダメージなど皆無、魔力をため込む。


 クリムゾン・ホーンレイが放たれようとした、その瞬間。



「ドラゴンフォーム!」

 遥斗の声が、戦場に響く。


 黄金色の光が、遥斗の全身を包み込んだ。


 体が、変わっていく。


 竜の鱗が、肌を覆う。

 黄金に輝く、硬質な装甲。


 背中からも巨大な竜の翼が出現した。


 竜騎士の切り札であり、最強形態——ドラゴンフォーム。



 遥斗が、両手のグングニールを突き出す。

 それに反応して、神人に突き刺さったランスも暴れ出す。

 これで攻撃することも、回避することも出来ない。


 二本の槍が、交差する。

 魔力が、渦を巻く。

 凄まじいエネルギーが、一点に集中した。



「ダブル・ドラゴンインパクト!!」



 光。


 それは、グングニールから放たれた裂光。

 二本の槍から、極大の光線が迸る。


 黄金色の奔流。


 それは、地平の彼方まで伸びていった。

 空を裂き、雲を散らし、全てを貫く究極の輝き。


 大輔の放つドラゴンインパクトの2倍、いや3倍以上の過剰出力。


 それでも。

 それでも神人は立っていた。

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