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【完結】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
第7章 終焉の血戦編

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463話 猛攻

 全長百メートル余。

 白い鱗が光を反射し、神々しいまでの輝き。


 ミラージュリヴァイアスの巨体が、地を泳ぐ。

 しかし、その瞳には狂気が宿っていた。


「さぁ~、お相手しましょうか~」

 マリエラが軽やかに宙を舞った。

 蝶のように優雅な動き。


 ロングソードを振るい、ミラージュリヴァイアスの鱗に斬撃を叩き込む。


「竜薙ぎ!」

 衝撃波が広がるが、鱗に傷一つつかない。


「はぁ~硬いわね~」

 マリエラが呑気に呟く。


 ヘスティアも魔刃術で連撃を繰り出す。

 透明な刃が、無数の軌跡を描いた。


 手、足、肘、膝——あらゆる関節から斬撃が放たれ、千の刃が舞い踊る。

 金属音が響くが、やはり鱗を貫けない。


「くっ……神獣の防御力……流石ね」

 ヘスティアが歯噛みする。


 パァン!とエレナの魔力銃も火を噴いた。

 弾丸が正確にミラージュリヴァイアスの目を狙う。


 しかし、直撃しても瞬きすらしない。

 眼球すらも鋼鉄のように硬い。


「貫通弾ならどう?」

 エレナが弾を入れ替え、再び発砲。


 今度は口内を狙う。

 唯一の柔らかい部分。


 それすらも効果はなく、弾丸を、ただのみ込んだだけ。


「グオオオオオ!」


 咆哮。

 ガルモが苛立ちを露わにする。


 巨体が加速した。

 体当たりをするつもりだ。

 質量をそのまま武器にした、単純だが防ぎようのない攻撃。


「マリ!左へ避けて!」

「もちろん~お任せ~」


 二人が左右に跳ぶ。


 ドゴォォォン!!


 ミラージュリヴァイアスが通り過ぎた場所は、深いクレーターと化していた。

 地面が抉れ、建物が倒壊する。


「あぶないわ~」

 マリエラが着地しながら呟く。


 しかし、すぐに次の攻撃。


 ミラージュリヴァイアスが体を捻り、尾を振るう。

 あまりにも巨大な鞭が、ヘスティアを薙ぎ払おうとする。


「っ……大きすぎる!」


 ヘスティアが地を蹴り、跳躍。

 回避すにはあまりにも巨大すぎた。


 直撃ではないものの、掠った勢いで地面に飛ばされる。

 そのまま叩きつけられ、土埃が舞うが、それを逆手に取った。


 尾の下を潜り抜け、至近距離まで接近。

 そして魔刃術を腹部に叩き込んだ。


 僅かに傷跡を残すが……浅い。

 魔力で強化されたためか、硬度が上がり、ダメージを軽減しているようだ。


 次の瞬間、ミラージュリヴァイアスが体を仰け反らせた。

 押しつぶす気だ。

 下敷き、逃げ場がない。


「ヘス~!」

 マリエラが走る。

 それは風よりも疾かった。


 ギリギリでヘスティアを抱えて横っ飛び。

 何とか回避した。


 ドスンと地面が揺れる。

 ヘスティアは息を荒げながら立ち上がる。


「このままじゃ……押し切られるわ……」

 マリエラも同じことを考えていた。

 神獣の防御力は想定以上。

 接近戦しかできない今、大技を使う隙がない。


 敵が大きすぎて、通常攻撃では的が絞れない。

 体ひとつで暴れられるだけで、こちらは防戦一方。


 時間を稼ぐので精一杯だった。


「双皇覇を使いたいけど……」

「タイミングがないわね~」


 長年の親友だからこそ、言葉にせずとも分かる。

 その隙は訪れないことを。


 その時、チャンスの女神は微笑んだ。


「自分らも加勢するっす!」

 空から、シエルの声が降ってきた。

 風に乗り、宙を舞う。


 グランディスも地上を駆ける。

「母さんたちを助けるっち!」


 走る勢いを利用して、グランディスがデスペアを投げる。

 黒いチャクラムが回転しながら、ミラージュリヴァイアスの鱗に向かう。


 カァン!


 軽い音がして弾かれた。

 傷一つつかない。


「戻れ、デスペア!」


 チャクラムは手元に戻るがオカートは発動しない。

 傷を与えていないためだ。


「エアロツイスター!」


 シエルの風が螺旋を描く。

 ドリル化した魔力が、ミラージュリヴァイアスを襲う。


 しかし、やはり鱗に弾かれる。


「うそっ!効かないっす!」


 グランディスもディスチャージャーを発射。

 電撃が放たれる。


 が、神獣の体表を滑るように流れ、地面に逃げていった。

 ダメージなし。


「くそっ!全然駄目だっち!デカすぎんだよ!」

 グランディスが悔しげに叫ぶ。


「グランディス!シエル!そこから離れて!」


 エレナが叫んだ。

 魔力銃を構え、連射する。


 4発の「業火の弾丸」


 爆炎がミラージュリヴァイアスを包む。

 これは、あくまでも目くらまし。


 その間に、二人は距離を取る。


 しかし、ガルモの意識がエレナに向いた。


「グオオオオ……」

 低い唸り声。

 ミラージュリヴァイアスの巨大な瞳が、エレナを捉える。

 明確な、敵意。


「今!」

 ヘスティアが叫ぶ。

「準備出来てるわ~」

 二人が同時に構えを取る。


 空気が変わった。

 魔力が、凝縮されていく。


 双皇覇——


 あの大技を放つ隙が、ついに訪れた。


 しかし、ガルモは気づいていた。

 神獣よりも遥かに高い知能と洞察力。

 そして残虐性。 


 地面が、波打ち始める。

 固体の液状化能力。


 ミラージュリヴァイアスが移動時に使うスキルを、攻撃に転用している。

 ヘスティアとマリエラの足元が、突如として土の沼と化した。


「え……!」

「あら~」

 二人の体が、地中に沈み始める。

 腰まで。


 抜け出せない。


「くっ……!」

 ヘスティアが何とかしようとするが、地面に囚われて動けない。


 双皇覇は失敗した。



 その僅かな間に、シエルはずっと魔力を練り上げていた。

 両手を合わせ、呪文を紡ぐ。


「天地を集いし裂空よ、渦巻きて相克せよ。怒りの咆哮を以て、全てを薙げ!」


 風が、渦を巻く。

 炎と雷が、纏わりつく。


「ボルテクス・ファイアドラゴン!」


 炎と雷を纏った風の竜が、顕現した。


「行けぇぇぇ!」

 シエルの叫びと共に、竜が突進する。


 それに呼応するかの如く、ミラージュリヴァイアスの額の角が真紅に輝いた。

 膨大な魔力が、圧縮される。


「グオオオオオオオ!」


 クリムゾン・ホーンレイ。

 紅き破壊光線が、放たれた。


 風の竜と、死の光線が激突する。


 ドゴォォォォン!!

 爆発。

 風の竜は、かき消された。


 それだけに留まらない。

 紅い光はシエルに直撃する。

 完全に押し負けてしまった。


「きゃあああああ!」


 シエルの悲鳴。

 直撃寸前、咄嗟に風魔法で防御したため致命傷は避けられた。

 だが、ダメージは深刻。


 体が紙切れのように吹き飛ばされ、地面に墜落する。


 ドサッ!


「シエルちゃん!!!」

 グランディスが叫ぶ。

 エレナも、すぐにポーションを取り出し駆けつけようとした。


 しかし、それは許されない。

 ミラージュリヴァイアスが、大きく口を開ける。

 空気を吸い込む轟音。


 音速の咆哮が、放たれようとしていた。


 狙いは——


 エレナとシエル。


 二人とも、動けない。

 避けられない。


「やめろおおおおおおお!」


 グランディスが叫ぶ。

 しかし、声は届いたとしても何も出来ない。

 目の前で、ふたりが殺されるのを見ること以外は。


 その時——

 デスペアが、激しく振動した。


 グランディスの手から離れ、頭上に浮く。

 そして高速回転を始めた。


 黒い刃が超回転し、摩擦熱で色を変える。


 黒から赤へ。

 赤から白へ。


 純白の光。


 それは、頭上で輝く太陽のように。


「父さん!」


 グランディスが、呟く。

 ディスチャージャーから、温かい感覚が流れ込んでくる。


 父の魂。


 グランディスの意識が、父、デュランディスと共鳴した。


『マリエラを……仲間を……守れ……グランディス!』


 グランディスの瞳が、深い金色に変わった。

 全身から、紫電のオーラが立ち上る。


 雷光が迸る。


 しかし、それは暴走ではない。

 完全に、制御された雷。


 頭上に、白く輝く天使の輪が現れた。

 背中から、電撃を纏った巨大な翼が展開された。


 グランディスの姿が、光に包まれる。

 雷を纏った戦士が、そこに立っていた。


「お前は……許さん!」


 声が変わっている。

 もう、グランディスの声ではない。


 雷の翼が羽ばたく。

 体が浮き上がり飛翔する。


「雷鳴よ!」


 両手を天に掲げる。

 その掌に雷が集まる。


「轟け!」


 グランディスが腕を振り下ろす。

 巨大な雷撃が放たれた。


 ミラージュリヴァイアスを直撃する。


「グギャアアアアア!」

 神獣の、いやミラージュリヴァイアスの、いやガルモの絶叫が戦場に響く。


 ソニック・ロアを放つこともなく、地面に倒れ込み、巨大な体を痙攣させた。

 ミラージュリヴァイアスの鱗が、焦げて剥がれ落ちている。

 初めて——ダメージを負わせた。


 グランディスが雷の翼を静かに羽ばたかせ、ゆっくりと下降してくる。


「これで終わりではない。その命……もらい受ける!」

 雷を纏った戦士は神獣を見下ろしていた。

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