第8話
「…進…そろそろ…お昼ごはん…」
「ん?そうか…了解!」
窓を後回しにしたお陰で、取り敢えず全部のベランダの床掃除が終わった。
多少荒いかもしれないが、そこはご愛敬である。
「先に風呂入ってくるな」
「…ん…待ってる…」
因に、食事作成担当は俺だ。
包丁握ったこと無いらしいからね…仕方ないね!
「ふぅ…いい湯だった…」
風呂から上がり、ホクホクのまま、厨房に立つ。
「フッフッフッ…今日の昼食はモヤシじゃないんだなぁ…」
そうコレ、そうめん!
近場のスーパーで見つけた、在庫品限りのスーパーセール。
なんと一袋100円!
しかもそれだけではない…そうコレ、付けダレの試供品!
なんと、来週発売の付けダレの試供品を、店頭で…それも無料で配っていたのだ!
その量は、1・2回分の試供品クオリティーだが…それで十分!
一家族様1つの所を、別々に並んで二つ手に入れた我々に死角はない!
「…そうめん♪…そうめん♪」
「待ってろよソフィ…後は茹でるだけだからな…」
えーっと、5分間か…スマホのタイマーセットしてっと…
投入ー!…ポチっとな!
「フフフ…学園長…私にも言っていた意味がわかって来ましたよ…」
「そうだろう、そうだろう…多分、残してる半分は夕食用だな…」
「予め多めに食べてきて正解でしたね…さて、掃除に戻りますか…」
「そうだな…午後からは仕事だから、今の内に出きるとこまで進めるか…」
ピピピピピ!
「おっ出来たか!」
「…そうめん!…」
無茶苦茶目がキラキラしてる!
「後は、お湯を切って…水で締めて…出来上がりだ!」
「…早く…食べよう!…」
「そうだな」
コップに付けダレも用意して…いざ実食!
「…ツルツルツル………むふー…」
すっ凄い得意気だ!かつて無い程にどや顔をしている!
「…母様に…習った………こっそりだけど…」
「なるほど、確か海外の人だとうまくすすれない人が多いんだっけ?」
「…すすらないのは…当たり前…マナー違反に…なっちゃう…」
「じゃあ、頑張って覚えたんだな」
むっちゃ頷いてる!…からのどや顔!
…よっぽど気に入ったんだな…そうめん…
「…蕎麦に…うどんに…ラーメン…すすって食べるのは…絶対コンプリートする!…」
違った!すすれる麺料理に目がないだけだった!
「…早く食べないと…私が食べちゃうよ?…」
「ハハハ、じゃあ取られないように急いで食べなくちゃな!」
「…むぅ…残しても良いんだよ?…」
「しっかり食べないと、午後の掃除で力がでないので食べきります!」
「…それもそう…しっかり食べて…」
そうして、笑いながらも食事は進んでいくのだった。
「じゃあ、私達はここで帰るな」
「また、学園で会えることを楽しみにしていますね」
そんな言葉を残して理事長達が帰った後…俺達には戦いの時がおとずれていた。
「…家長室は…進が使うべき…」
「いやいや、ソフィが使った方が丸く収まるんじゃないか?」
そう!家長室の押し付け会いである!
事の起こりはそう、理事長の一言だった。
「ああ、階段登って直ぐの部屋は寮長室だから、どっちかはそこの部屋使ってくれ」
確かに、『なんか若干広い部屋があるなー』とは思っていたし、別にそこまではよかったのだ…次の一言までは…
「寮長は予算会議とかの場に出席義務が出来るから、よく話し合って決めてくれよ」
その瞬間の俺達の気持ちは同じだっただろう。
『いかにして、この寮長を相手に押し付けるか』
これに、今後の学園生活が掛かっていると言っても過言ではない。
何故かって?単にめんどくさいからさ!
時間も取られて責任もある。
そんなものに…少なくとも俺は…なりたくない!
「…家計をやりくりしてるのも…進…ご飯も…進…これで…私が寮長になったら…大顰蹙…」
「それこそ、ソフィはお姫様な訳なんだから…それを差し置いてってのも問題なんじゃないか?」
「…母様から…許可は…出てる…この学園内では…私はただの女の子…」
くそっ!カードが1つ減った!
「…それとも…ここでも…王女様しなきゃ…駄目?…」
あぁぁぁぁ!まずい!その表情は心に来る!
でも…耐えろ…俺!ここに、今後の学園せいか………
「そんなことはないさ、俺に任せとけ!」
無理だぁ…俺には勝てねぇ…
「…うん!…」
まあ、嬉しそうだし…いっかぁ…
「しかし学園長…」
「なんだ桐生?」
「酷い嘘つきますね…」
「嘘は言ってないだろう!…肝心な部分も言ってないが…」
その日の夕方、ポストに入っていた申請用紙を見て、俺達は愕然とすることになる。
「…副…寮長?…」
「寮長と同じ義務?」
「「…学園長ぉ!」」
結局、二人共会議に出ることが確定した瞬間であった。