表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TSサキュバス  作者: 藤塚ソラ
第1章
9/17

第8話:卒業祝い

「あ、お帰り。どう体調は?」


 俺とリリーは魔界に帰ってきた。

 そして出迎えてくれたのは若干のにやけ顔をしたドクターピアだった。


「もう本当に、びっくりするくらい元気になりました……」


 それは先ほどの行為が現実だったことを表す。

 いや、行為じゃない、うん、あれは食事なのだ、お腹が空けば飯を食う、生き物なら当然の道理だろう?


「私が入る隙もないくらいに激しくヤっていましたよ」


「リリーさん! 余計なこと言わないでください!」


 覚えているからこそ嫌なのだ。

 もう穴があったらそこで暮らしたい、一生。


「はは、元気なら結構。よかったじゃないか」


「うぅ……」


 誰か、記憶を消すことの出来る悪魔とかいないだろうか。

 もう本当に嫌だ!


「リリーさん、早くおいしいもの食べさせてくださいよ」


 もう今日はダメだ。

 早くなんか食べて寝たい、そして忘れよう。


「え、おいしいもの? なに、どんな男?」


 もうこの人やだ!

 俺はニヤニヤするリリーを睨みつけた。


「あはは、ごめんごめん。そんな怒んないでよ」


 そんな可愛らしく舌を出しても俺は許さないからな。


「ふふ、じゃあ行こうか。ドクターピアさんもどうですか? アリアの処女卒業祝いって事で。御馳走しますよ」


 誰が処女だ!

 なんでなんだよ、先に捨てるべきものあっただろうが……。


「気持ちは有り難いがお断りさせていただくよ。私はこれから出かけなければいけないのでな。また今度頼むよ」


「そうですか、わかりました。じゃあ色々ありがとうございました」


「ありがとうございました」


 ぺこりと頭を下げて病室から出ていく。

 病室を出るとすぐ外に出た。


「ここは……」


「あ、そっか。アリアはずっと気絶してたから初めてか」


 この病院だけではない、辺りには見渡す限りの様々な施設があった。

 酒場をはじめ、八百屋や宿屋などの小規模なお店が一帯にずらっと並んでいる。

 そして道を歩くのは様々な種族の悪魔たち。

 俺らみたいな人型の者もいれば、四足歩行の獣やケンタウロスもいる。

 顔がブタだったり、腕が四本生えていたり、見ているとキリがない。

 そしてどの種族の者も仲良く会話をしている。


「……」


 顔が違う者、腕の数が違う者、指の数が違う者、髪の色が違う者、肌の色が違う者が、皆それぞれ同じように過ごしている。

 ここでは全員同じ悪魔なのだ。


「どう? 凄いでしょ」


 うん、すごい。

 この多様性、そしてそれを受け入れていること。

 みんな違って、みんな良い。

 肌の色が違うだけで騒ぐ人間とは全く違っていた。


「へぇ……」


 俺は少し感動した。


「ここはね、魔王城の城下町なの。だから色々な種族が集まるのね」


「魔王城!? あのマンションの屋上で見せてくれた!?」


 え!? 相当な距離だぞ!?

 どうやって俺を運んでくれたんだ!?


「そうそう、あの魔王城があれよ」


 リリーが指した左側には巨大な建物が禍々しきオーラとともに存在していた。


「ど、どうやってここまで来たんですか!?」


「え、そんなの魔術を使ってささっと」


 けろっとリリーは答えた。


「ま、魔力は大事なんじゃないんですか!?」


 たしか言ってたよね!?

 するとリリーは俺に接近してきた。

 そしてそのまま俺のほっぺたを両側から引っ張った。


痛い痛い(ひたいひたい)何するんですか(なみすふんでふか)!」


「あのね! あれが緊急事態じゃなかったら何が緊急事態なの! 無駄遣いはダメって言ったけど、あれは無駄遣いじゃないでしょ? それとも、助けたのが余計なお世話だったって言いたいの?」


 ずいずいとリリーの顔が迫ってくる、怖い顔だ。

 俺はぶんぶん首を振った。


いえいえ(ひえひえ)全く思ってませんまっあくおもっへまへん助けていただき(たふけていあだき)感謝してます(かんひゃしてまふ)


 ぱちん。


「いたぁ……」


 両頬が熱い。


「はぁ、まあいいわ。とりあえず私もお腹が空いたからどこか行くわよ」


「はぁい」


 ほっぺをなでながらリリーに付いていく。

 リリーは慣れた動作であるお店に入っていった。

 俺も慌ててついていく。


「あ、りりーさん。今日はお二人ですか」


「私の弟子のアリアです、よろしくお願いします」


「よ、よろしくお願いします」


 弟子なのか?


「はじめましてアリアさん、ではこちらにどうぞ。あ、リリーさん、今日もあれですか」


「ああお願いします。いつもの(・・・・)で」


 ドヤァと振り返るリリー。

 俺は反応に困ったのでとりあえず拍手した。

 さあリリーの推すおいしいものとは何なのか、非常に楽しみだ!



 ♂→♀



「おまたせしましたー」


 ドン!


「うわぁ、おいしそう!」


「……!?」


 なんだ、この、ゲテモノは……?

 目の前にあるのは食べ物なのか……?

 真っ黒のこれが……?


 それは最早原型らしきものもなかった。

 黒い液体の中にドロドロの色々の物が入っている。


「いっただきまーす」


 リリーがフォークで巻いたのは、黒い液体がまとわりついた薄ピンク色の腸……?

 そしてそれを土に入れるなりもぐもぐと味わい始めた。


「うわぁ……」


 こんなに引いたのは久々かもしれない。

 いや、うん、はじめてかも。


「ほら、アリアも食べな」


「い、いえ! な、なんか食欲なくて、あはは……」


 うっ、そんなまっすぐな目で見ないでくれ。

 嘘ついてるのがばれそうだ。


「もしもーし、アリアさーん。目を合わせてくださーい」


「……な、なんですか」


 軽く目を合わせる、辛い。

 てかもう、ばれてると思う。


「一口、一口食べてみなって。おいしいからさ、ね?」


「……」


 ま、まあ見た目がだめなだけかもしれないし、いや中身もダメだったろ。

 なんだよあの気持ち悪い腸みたいなやつ。


「ほらほらー、食え食えー」


 フォークがこちらに近づいてくる。

 先には黒塗りのゲテモノが、


「うあぁー!」


 ばく。

 勢い、勢いが大事。

 ああいう見た目がダメなのは見すぎると逆効果だ。

 もっと食欲が失せるからな。


 舌先で感じてしまったぬめっとした触感が気持ち悪い。

 そして、肝心の味は、


「まっず!」


「えぇっ!?」


 ぺっと紙ナプキンにナニカを吐き出し、口の中を水できれいにする。

 ああ、水って旨いな、水サイコー!


 はたして俺がこの世界の生き方になれる日は訪れるのか。

 ちなみに俺はそんな日は一生来ないと思っている。

 とりあえず違うものを頼むとしよう……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ