〈二話〉月と太陽(二)
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「ソル、ルナ。朝だよ起きなさい」
そう言いながら父親のパルテが仲良く寝ている娘の二人を起こそうとする。だが二人は父に声で抗議するのではなく、ベッドの上でさらに丸まるという行動で抗議する。パルテは愛娘たちの微笑まし行動を見ながら窓へ移動し、カーテンを勢いよく開ける。
窓ガラスを通して燦燦と大地を照らす光が部屋中に射し、「うー」「まぶしー」とソルとルナが悲鳴を上げながら布団を頭まで被る。
「ほら起きなさい、朝食が冷めちゃうぞ」
微笑とは裏腹にパルテは二人が被っている布団を無常に剥がすが二人はまだ愛らしい唸り声を上げながらベッドに顔を埋めさらに枕を被る。しばらく経ってルナが目を半開きにし身体を起こした。
「おはよう・・・・お父さん」
「おはようルナ。ほら妹のルナが起きたぞ、お姉ちゃんのソルも起きなさい」
「ん・・・・おはよう、父さん」
「おはようソル」
ソルも抵抗を諦め不機嫌顔で起きる。二人は父のいう通りにベッドから出て、トボトボと部屋を出ると母テルースがちょうどテーブルに料理を並べていた。二人に気付き笑顔で挨拶をする。
「おはようソル、ルナ」
「おはようお母さん」
「・・・・おはよう」
「食べる前に顔を洗いなさい」
二人はいわれた通りにキッチンの隅に桶は二つあるが水は入っていない。ソルは右手を桶にかざし水魔法を発動すると、桶の底から水が少しずつ生成されてあっという間に水が桶一杯に注がれた。隣では同じようにルナが桶に両手をかざし、水魔法を使って桶一杯に水を満たそうとしている。
だがソルが軽々と終わったのと違い、その生成速度はとても遅く時々止まる。ソルはその様子を見ても急かさずに水が桶一杯になるまでに待つ。ようやく桶一杯ではないが八分目まで水を満たせた。それでもソルの二倍以上の時間もかかり、まるで激しい運動をしたかのように全身に少し汗をかき、息も少し乱れており整えるため深呼吸をしている。
息が整ったのを見計らってソルはバシャバシャと勢いよく顔を洗い始め、逆にルナは少しだけ水を掬いピチャピチャと優しく綺麗に洗う。桶の水を半分程使いベルトに挟んでおいた布で顔を拭き「ふう」と一息する。ルナも同じように布で顔を拭き残った水に布を浸し絞り、首筋や腕など少し汗をかいた体を拭く。
「もういい?」
「うん」
ソルは桶二つを両手で持ち外へ出て、家の裏手で放し飼いしている鶏の水飲みに桶の水を入れる。二人が目覚めてやる日課だ。家の中へ戻るとテーブルの上にはすでに四人分の野菜多め少しだけ入った鶏肉のスープ、黒く固いライ麦パン、生野菜のサラダが並びソル以外はすでに席についている。
ソルも自分の椅子に座る。全員が座ったのを確認したテルースが目を瞑り軽く頭を下げ、三人も同じようにする。パルテの生まれ故郷であり四人が住んでいる村に伝わる食事前のお祈りだ。しばらくすると「さあ、食べましょ」とテルースの言葉で全員が食事を始め、四人は無言で食事を勧める。
四人とも綺麗に食べるが、ルナ以外はスープとパンの減りが早い。というよりかはルナが遅いだけなのかも知れない。まるで鳥にあげるようなサイズにパンを千切って口へと運んでいる。ルナがパンとスープを半分になった頃にはソルや両親は食事を終えていた。
ソルとパルテは両手で水を掬うように合わせ、水魔法で手の中に水を生成させそのまま飲む。飲み終えるとパルテは立ち上がり「じゃあ行くかソル」と声をかけると、「うん」といいながらソルも立ち上がる。二人は入口の横にかかっている弓と剣を装備し、ソルはキッチンの上に置かれてあった包みを腰のポーチに入れる。
テルースは食器を下げながら二人に「いってらしゃい」といい、ルナも食事の手を止め「お姉ちゃん、お父さん気負付けてね」といった。
「夕方までには帰るよ」
「いってきます。いいかルナ、無理をしないようにな」
「うん」そういうと二人は家を出ていった。ルナは食事を再開せずに食器を洗っている母に聞く。
「おとうさん、今度はいつ仕事に行くの?」
「畑の方に専念するらしいから、しばらくは家にいると言っていたわ」
母の答えにルナは嬉しそうに食事を再開する。パルテは傭兵でよく長期に渡って家を空けている。ルナが住むイニティウム王国は東大海に面しており沿岸に沿った細長い国で、農業をする土地が少ない。かと言って海へ漁を出るにしても冬の間は流氷で完全に閉ざされた海になる。
そうすると自ずと糧を得る手段は限られてくる。そのため国民の半数は畑や船を持っていても冬の間は傭兵として他国の戦場へ出稼ぎに出向く。ルナが食べ終わったのは食器を洗い終え、ゆったりと薬草茶の香りを楽しんでいた頃だった。自分で食器を洗いながら「今日は何を手伝えばいい?」と聞いた。
「そうね、なら薬草を調合してくれる? 数が少なくなっているから調合して頂戴」
「うん。ここで作ってもいい?」
「また旅の話を聞きたいの」
「うん!」
テルースはここらで唯一の治癒魔法を使える治癒使いだ。そもそもテルースは王国生まれではなく、生まれてからずっと放浪の治癒使いであった両親と旅をしながら育った。治癒使いとして一人前であると師匠である両親から認められ、両親のように一人で旅をしながら生きてきた。
ある時、戦場で雇われ負傷兵の集められたテントで仕事をしていた際にテントが襲撃された。テルースも殺されそうになったが、その時に傭兵として戦場にいたパルテがテルースを助けた。これをきっかけにパルテとテルースは付き合うようになり、結婚を期にパルテの生まれ故郷である村に帰ってきた。二人がこれまで貯めてきた金で家を建て田畑を耕した。
テルースは生まれてずっと放浪する治癒魔法使い、パルテも同じように傭兵として戦場を渡り歩いていた時間が長かった。結婚した後でもジッとできず、しばらくの間二人は一緒に戦場を渡り歩いた。だがテルースの妊娠を期にお互いに旅を止め診療所を開いた。パルテも子供のことを考えて前線で戦う傭兵から、町や街道を警備する比較的に安全な仕事をするようになった。
だが比較手に安全だが拘束期間が長い、そのため仕事に出向く前は狩りに出て肉を多めに狩るのだ。子供であるソルとルナは村から外へ出たことはない、そのためよく旅の話をよく両親にせがむ。
「これは私が大陸中央の森を旅していた時の話だけど・・・・」
ルナはゴリゴリとすり鉢で薬草を磨り潰しながら母の旅話に聞き入っている時、ドアが勢いよく叩かれるのと同時に焦る声が聞こえた。
「テルースさん! いるか!?」
テルースは椅子から立ち上がり扉へ向かい開ける。扉の前には隣村の若い狩人の親子だった。ソルやルナより少し大きいダークエルフが父親に抱えられていた。
「どうしたの?」
「息子と森で狩りをしていたら崖に落ちてしまった」
テルースは抱きかかえられている少年を見る。肩に布が巻き付けられ血が滲み額には脂汗を浮かべている。
「怪我は肩だけ?」
「肩それと全身を強く打ち付けた」
「入って。ルナ水を頂戴」
聞きながら中へ入れ診察室のベッドに寝かせ、ルナは水の入った桶を渡して必要な道具を準備する。少年をテーブルの上に寝かし布を外して水をかけると傷口があらわになった。
「肩の方は、あららーパックリやっちゃってるわね。肋骨の二、三本が折れているわね。他にもヒビが入っているわね」
「治せるか?」
「当然でしょ。完全に? それとも半分?」
「半分で頼む」
父親の方と短く話てから少年の肩に手をかざし、スウっと小さく目を細め意識を集中して治癒魔法を使う。すると二つに裂け出血していたが、血は止まり皮膚もほんの少しだけ一つに戻る。完璧には直さずに胸へ移る。
同じように手をかざし骨も同様に少しだけ繋げる。完璧に治すこともできるが、その場合は治療費用が高くなる。そのためよっぽどのことがなければ殆どの患者は半分を選ぶ。
「はい終わり」
「助かったよ、礼をいう」
「ありがとうテルースさん」
終わると父親と少年はお礼をいう。少年は自力で立ち上がるが完全に治癒していないため胸を少し痛そうにしている。
「ルナ、塗り薬を棚から取ってきて。言葉の礼より現物が嬉しいのだけれど?」
「すまない銀貨どころか銅貨も持っていない。狩りも途中だったから獲物もない」
「仕方ないわね。近いうちでいいから肉ならそこそこのやつを六食分、硬貨なら銅一〇〇枚よ」
「銅一〇〇? 高くないか」
「冗談おっしゃい。こんなに素早く治療してあげた上、薬も付けてよ? 街だったら銀十枚は取られるわよ。銅一〇〇という良心的な値段文句あるなら銀十でも別にいいけど」
「分かった、分かったよ」男は苦笑いする。
「はい服と薬」
そう言いながらルナは肩の破れた所を縫い直した服と塗り薬を少年に差し出した。
「・・・・ああ、ありがとう」
少年は素早くルナから服を着て薬を受け取り、二人は早々と家から出ていった。
「・・・・・・」
「気にすることないよルナ」
テルースは後片づけをしながらルナの気持ちが分かったのか、励ますようにいう。
「・・・・うん」
ルナから服を受け取った時、男のルナを見る目は明らかな蔑む目をしていた。
昔の映画に出てくる黒くてデカいライ麦パンて美味しそうに見えるよね。あとは西部劇に出てくる料理で、星空の下、焚火にフライパンをかけて豆とベーコンを炒るヤツとか、戦争映画でデカいボンレスハムをナイフで切ってそのまま食べるとか。映画「西部戦線」の食事シーンの豆スープ?とデカいライ麦パンとかまさに、だね。旨そうに見えるのは著者だけではないはず。
でも、実際食べたらそれほど旨くないんだろうなーとも思う。
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