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テンプレ異世界召喚に巻き込まれたデュエリストですが、持ち前の魔導書(デッキ)で何とか頑張ってます  作者: 秋月静流


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1話 盲点

「ふう……

 どうにか人心地着いた、かな」


 部屋に内設された暖炉に燈る炎へ薪をくべながら、悠馬は溜息を漏らす。

 レミットの為に召喚したのは<シュバルグラン城塞>というマナカードの一種である。

 千年凍国<グリザニア>に対抗する為に築き上げられたという背景バックヤードを持つその城塞は、耐寒性に優れるだけでなく数多のガーダー達に守られ守備力も高い。

 レアリティの高いカードだけあって住み心地(?)も上々だ。

 更に剣や弓矢等の武具のみならず、薪や寝具、食材を含む調理器具一式まで完備されているという、旅行く召喚術師のお供に一枚はお勧めしたいハイスペックであった。

 まあアイレスの懸念通り、パーティメンバーの人数に対しこの規模が必要かどうかは正直疑問である。

 幾分過保護とはいえ、これもレミットに対する無意識の愛情発露なのだろう。

 当の本人はそういった心の動きをまだ自覚していないみたいだが。

 一方レミットはアイレスに見守られながら、部屋に備え付けられたベットで熟睡していた。

 荒かった息遣いも落ち着き、頬は健康的なピンク色に染まっている。


「……レミットの容態はどうですか、アイレスさん?」

「先程までの痛ましい状態に比べ、大分良くなりましたわ。

 これなら一晩安静にしていれば問題ないと思います」


 華奢なその手を握って汗をハンカチで拭うアイレスもホッとした表情だ。

 さすがに強行軍による無理が祟ったのだろう。

 が、実際危ない所であった。

 先程の様な状態が続けば、あと小一時間もしない内に肺炎を引き起こした可能性がある。

 たかが肺炎と思われるかもしれないが、体力が低下している状態の肺炎は様々な合併症を招く。

 そうなると完全に治癒するのは魔術を以ても難しい。

 無論この琺輪世界は医療系魔術も充実している為、肺炎くらいなら治癒魔術かポーションで簡単に治るのだが……レミットの力がそれを阻害してしまうのだ。

 掛けられた治癒魔術は打ち消され、

 口に触れたポーションはただの液体になる。

 巫女として医学知識を学んでいたティナの適切な対処が無ければ、応急処置しか対応出来ないアイレスの手に余った事態になっていたのは間違いない。


「ん。良かった。

 趣味である薬草採取が役立ったみたい」

「ありがとうございます、ティナ様」

「気にしなくていい。

 レミットは私にとっても妹みたいな存在。

 こうして役立てるのは何より嬉しい」

「まあ」

「でも一つだけ不満がある」

「はい?」

「そこの唐変木からは何も聞いてないのだけど?」

「んあ、もしかして俺の事か?

 ありがとうな、ティナ。

 マジでティナがいなかったら危なかったよ~」


 軽薄(軽くて薄い)。

 悠馬の返答にティナはリスの様に頬を膨らませて抗議する。


「むう~(むかむか)

 ユーマの想い人を救ったというのに……何てつれない態度。

 貴方は私にもっと感謝するべき」

「アリガトウ、ティナ。

 オレ、カンシャシテル」

「何故にカタカナで片言?」

「いや、何となく」

「……誠意が感じられない」

「繊維ならあるが(ほれ)」

「字が違う。

 はあ……いくらレミットルートに入ったとはいえ、ユーマは冷たい。

 サブヒロインにはもっと気を配るべき。

 そうじゃないと……」

「と?」

「刺される。グッサリと」

「マジで!?」

「ん。エロゲなら確実」

「だから何でエロゲーを知ってるんだよ!」

「と、父が言っていた。

 バットエンドになるから気をつけろ、と。

 ところでエロゲって何?」

「取って付けた様に言いやがって!

 本当は知ってるだろ、お前!」

「そこは企業秘密。

 あまり広言すると消される……

 世界を狙う、闇の組織<ダークミレニアム>に」

「怪しい厨二病設定の組織名を勝手に作り出すな!

 皆が混乱するだろうが!」

「そういうメタ的な発言はどうなの、ユーマ?」

「お前が言い出した事だろうが!」

「どうどう。

 落ち着いて、ユーマ」

「はあはあ」

「深呼吸してリラックス。

 はいこれ」

「ああ、センキュー……

 って不味いわ!

 こんな薬にも使えない根っ子部分の薬草を食べさすな!」

「まさか口元に持って行くなんて……

 何という的確な状況判断力。

 アドリブとツッコミにも光るものがある。

 もう、芸人として私が教えるべき事は何もないわ(ウルウル)」

「いつから師匠になったんだよ!」

「まあ真面目な話、好感度を稼ぐに越したことはない。

 何なら胸を貸す」

「……寄り掛かる所がないんだが」

「むっ。随分と生意気な発言。

 でも……ここでキレたりしない。

 ティナはこう見えても寛大。

 何故なら貧乳キャラは希少なので過酷なヒロイン戦線でも生き残れる」

「自分で言うのはどうなんだ?

 しかしまたピンポイントで便利な薬草を持ってたな」

「ねえ、ユーマ」

「ん?」

「深く推察しては……駄目よ?(ゴゴゴゴゴゴ)」

「……ああ。

 こうして大人の階段を昇っていくんだな、俺。

 汚れちまった……哀しい」

「男は強くなければ生きていけない。

 優しくなければ生きていく資格がない」

「ハードボイルドだな」

「あとエロくなければキャラが立たない。

 色んな意味で」

「お前達を見てるとすっごい実感するよ。

 でも助かったのは事実だ。ありがとな」

「ん。戦艦の技師長を見習っただけ。

 彼の名言は偉大。

 様々な場面で活用できる(ぶい)」


 乳鉢で摺り下ろした薬草を新たに混ぜ合わせながらティナは微笑む。

 こんな事もあろうかと。

 何故か都合よく解熱効果のある薬草を所持していたティナによって煎じられた薬を飲み、レミットの容態が安定していた。

 魔術的な力に頼らない内服薬の薬効効果は問題ない様である。

 ありとあらゆる特異な力を打ち消すレミットの<イレイズ>能力。

 超常に対し無敵とも思えた力。

 実際レミットならば神々の奇蹟すら打ち消してみせるだろう。

 しかしこういった弱点となる一面があることは悠馬にも盲点だった。

 今までも配慮はしていたが、これからは毒やガスなどにより一層気をつけて対処しなくてはならない。

 ランスロード皇国のレカキス一族とやらがレミットの命を狙うのを諦めた訳ではないのだから。


(守らなくっちゃな……俺の全てに代えても)


 ティナとのやり取りにドッと疲れを覚えながらも悠馬はレミットの寝顔に改めて誓うのだった。

 

 



ティナとのやり取りを加筆しました。

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