9話 応酬
「隷属化って……」
「可能だろう?
魔導書内に封じてしまえば、対象が如何なる力を持っていようが関係ない」
「確かにそうかもしれないけど……」
「ならば問題ないだろう?」
悠馬の明るい声に戸惑うティナ。
勝者の選択を用いたデュエルによる隷属は絶対である。
そして一度でも隷属化されたならば現界出来る回数制限まで相互の身を守る絶対的な契約となる。
言い換えれば現界制限さえ迎えなければ対象を永続的に封じる事ともなる。
確かに悠馬の提案は妙案だ。
だがティナは思考の末、拒絶のかぶりを振る。
「どうして?」
「駄目よ。
貴方の実力が分からないもの。
腐嵐王を万が一斃し損ねたら、この地域全体が荒廃し灰燼と化す。
何も無くなって汚泥の海となるのよ?
無論、貴方も無事ではすまない。
貴方にそんなリスクを負う覚悟が――」
「ある」
「死ぬかもしれないのに?」
「ああ」
「何の見返りもないのに?」
「ああ」
「……どうして、貴方はそこまで……」
「そんなもの理由は一つしかない」
「えっ?」
「ティナの悲しむ顔を見たくないから」
ストレートな悠馬の一言にティナは黙り込む。
そしてスーッと悠馬の目線まで下降すると悠馬を上目遣いで見上げる。
「変わってる人ね、貴方」
「それ、よく言われるんだよな。
他にも天然とか酷いのだと変態とか」
「ふふっ」
「おっ――今笑った?」
「笑ってなんか……いないわ(コホン)」
「そっかー?」
「ええ、そうよ」
「ふ~ん」
腕組みをする悠馬を穏やかに見詰め直すティナ。
「貴方に……
賭けてみてもいいかもしれない」
「おっ、マジで?」
「ええ」
「やった!」
「ただ――」
「ああ、分かるよ。
俺が口だけの男じゃないかどうか。
実力を見たいんだろ?」
「ええ」
「ならば答えは簡単だ。
念動力を駆使し、超越存在であるティナに実力を示す方法。
それは勿論――」
魔導書を媒介とした力場が相対するティナへと侵食していく。
自らの理こそが唯一である、と。
多元時空を超え、
莫大なマナを湛え、
より広大な<場>を構築していく。
これこそ召喚術師による決闘。
互いの秘儀を尽くす古の作法。
それは即ち――
「久遠悠馬の名において宣言す。
ティナ・ハーヴェスト。
汝にデュエルを申し込む!」
「……いいわ。
封じられし永劫と豊穣に誓い、今ここに誓約す。
我が名はティナ・ハーヴェスト。
汝、久遠悠馬の申し出を受けるわ」
決闘誓約の成立。
その瞬間――世界の全てが弾け、決闘を行う闘技場へと再構成されるのだった。
お待たせしました。
更新、です。
合わせて異世界メイドシリーズも更新しました^^




