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代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第三章
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70、討伐報告

 ようやく王都へ帰還した僕達は、当然だが王城まで同行を求められた。


「まぁ、今回の件は色々お前さんが重要な役割を担っているし、二人目の魔獣人や蜂の女王と戦ったのもお前達だけだしな。後、素材系も早めに渡しておかないと後々うるせぇ事いわれるから我慢してくれや」


との、レックスさんの有難いお言葉。


 まぁ、結局は色々話す必要がある以上、レックスさん達に付随する形で話をした方が楽だろう。

素材の半数を僕達が貰う話も上の人達に納得して貰わないといけないしね。




 ◇ ◇ ◇




 王城へ着き、取り敢えずは話をお偉いさん達に報告すると言われ、レックスさん達部隊長四人と一緒に応接室の様な部屋に通された。


「俺達みたいな三小隊を束ねる部隊長クラスじゃ、本来こんな部屋には通されない。明らかにお前を意識しているな」


レックスさんの嬉しくない説明を受けて若干ガッカリするが……まぁ、仕方が無い。

前回の件で色々バレてしまって居るしね。


 しばらくすると、前回の魔獣人を引き渡した際に立ち会った四人に加え、第一王子であるアレスクルト様まで部屋に入って来た。

流石に少しは慣れた気はするが……正直、早く帰りたい気分で一杯だ。


 アレスクルト様が入って来たので当然立ち上がろうとしたが、


「ああ、座っていてくれ。初対面では無いのだから挨拶はいいだろう」


と言われた。

あまり形式に囚われない性格なのかもしれない。


「帰って来たばかりで申し訳ないが、また厄介な事があったと聞いてね。どうせならルーク君の話も一緒に聞けた方が不明な点も全て判るだろう、という意見があったのだよ」


「はい。理解しております」


アレスクルト様の説明に、僕が答えたのだが……話し方がよく判らないのでぎこちなくそう答えた。


「それでは、蟻の残り以外の件について聞かせて貰おうか」


レックスさん達の直属の上司の方がそう促し、まずは代表としてミルファさんが説明した。

流石にアレスクルト様が居る場所で、レックスさんがメインで説明させる事には不安があったのかもしれない……。


 基本的にはミルファさんが状況を説明し、付け加える部分を他で補う流れで説明は続いた。


「第二の魔獣人、そして巨大蜂の巣か……。魔王の復活で魔族の動きが活発になるとはいえ、こんなに早くこの大陸で活動する事など今までは無かったはずなんだがな」


レックスさんの上司の方がそう言い、


「もしかしたら……勇者様の降臨が遅れた理由等にも関係するのかもしれませんね。今回の魔王復活はいつもと違うのかもしれません」


地下幽閉施設の管理者の方がその言葉に対する自分の考えを言う。


「ところで……気になったのだが、一つ良いかな?」


アレスクルト様が僕を見ながらそう言った。


「先程の話だとルーク君が蟻の巣で使った方法で閉じ込め、順次倒していったとの事だが……詳しい話は敢えてしていない雰囲気を感じた。その件に関しては秘密……という訳かい?」


僕の方を見ながらだった事もあり、予想はしていたが質問の内容はやはりそこだった。


「今回の件はハッキリ言えば投入戦力が不足しておりました。ルークが公開したくない方法を私達が秘匿する事を条件として使用して貰い、なんとか今回の成果を得ています。その方法が無くては、私達は間違いなく目的の達成は出来なかったでしょう。今回は緊急時につき私が独断でルークとの契約を行って事なきを得ていますが、本来であれば戦力の不足は明らか……ルークの件を明らかにしろと言うのは、死地へ部隊を送り込んだ責任問題を明らかにして頂く事が必要になりますが……宜しいでしょうか?」


レックスさんが、流石にアレスクルト様の前なので多少は言葉に気を付けてはいるが……内容は明らかに挑戦的というか挑発的な発言をしている。

下手をすれば残りの蟻だけでも全滅の危険がある任務だった事に対して、大いに思う所があるのだろう。


 流石にこの質問には、アレスクルト様以外が渋い顔をする。


「確かに戦力が不足していた事は認める。しかし、魔物相手で即時に動かせる部隊は十二小隊が限度であった事は理解して貰いたい」


王城警備担当の方がそう言った。


「そうは言いますが、戦力の不足時には予備戦力をお互いに提供する……これは王国軍内部に存在する立派なルールのはずですが? 私達が出発した時には無理でも、その後の期間で準備を進めていたのでしょうか?」


どうやら王城警備隊であっても非常時には協力するシステムがあるらしく、レックスさんは今回の対応に不満があった様だ。


「レックス、その辺にしておけ。その件に関しては今後私が他の部隊の責任者と話をする」


「分かりました!」


上司の方がたしなめると、レックスさんはあっさりと表情を崩しながら従った。

どうやら一応抗議はしますいうポーズを取る為だったらしい。

他の面々もそれが分かっているので本気で争うつもりは無く、やれやれという雰囲気が漂っている。


「その件はルーク君が居る場ですべきではない話だね。さて、話を戻させて貰うと、私としては是非どの様な手段なのかを聞いておきたい。しかし、無理に話させるような命令をするつもりも無い。そこで……どの程度の対価を支払えばその情報を明かして貰えるかを聞いておきたいところかな」


アレスクルト様は対価を支払ってでも内容を知りたいと言ってきたが……元々、上層部には伝える流れだったはずがこうなっているだけなので、外部にさえ広めないで貰えば僕としては問題は無い。

しかし、折角なのでこの際に頼んでおきたい事は言ってみても良いかな……。


「僕が希望する事は……三つあります。一つ目は王国で最上位の魔法使いによる魔法を見せて欲しいという事。二つ目は王都にある、出来るだけ多くの図書室に対する閲覧許可。三つ目に《付与魔法》を得意とする方から、お互いに時間がある時だけでいいので教えを乞いたい……と言うものです。どの程度までが妥当な要求なのか僕には判らないので、希望を全て挙げさせて頂きました」



 アレスクルト様は多少考え込む仕草を見せたが、


「正直な所、私が予想していた対価とはまるで違う方向性で少し困惑してしまったよ」


そう言いながら、愉快そうに笑った。


「まず図書館に関しては問題なく許可出来る。ただし、流石に王家の禁書庫だけは無理だけどね。魔法を見せる件に関しても問題は無い。そもそもが、後二ヶ月もすれば見る機会は自然とやってくる。最悪それを待って欲しい。《付与魔法》に関しては……頼めるかな?」


アレスクルト様がそう言いながら、物資管理部門の方に確認を取る。

即ち、この方が王国最高の《付与魔法》使いとの事だ。


 《付与魔法》に関しても同意を得られ、僕の要求は全て通る事になった。


「前回の蟻素材だけでも十分な財産を得ているので、今更金銭は要求してこない可能性も考えてはいたのだが……。それにしても、風変わりな要求ばかり揃えたものだね」 


アレスクルト様はそう言いながら、先程の件を文書にして正式な契約書を作成していく。


「そういえば、高度な《付与魔法》を学びたいと言うのならば、君自身もそれなりに《付与魔法》を使えるということなのかな?」


「いえ、実際に教えて貰う事になるのは姉です。今回の仕事では別の要件で不在でしたが、もうすぐ合流する予定です」


ふと思いついた感じのアレスクルト様の質問に僕が答えると、


「姉君も、君と同じように非凡な才能を持っているようだね。今度、機会を作ってお会いしてみたいものだ」


との発言が……。

姉さんと合わせるのは、色々危険な気がするので僕としては遠慮したい……。


「ところで、姉君のお名前は何と言うのかな?」


「エルといいます」


何気無い様子で聞いてきたのでそのまま答えたのだが……アレスクルト様が声を出して笑い始めた。

そして、


「アハハハハ……。成程、そう言う事か! 姉君も《女神の祝福》を保持している……それ故の非凡な才能という訳だね」


と、納得したような表情で僕に確認してきた。


「姉を御存知なのですか?」


「直接は知らないのだがね。とある御方から、エルと言う名前の女性と会う機会があった場合、力になって欲しい……そう言われていてね。《女神の祝福》を持つ女性だから、確認する事自体は難しくはないとも言っておられたのだよ」


う~む、姉さんの知り合いかな……?

でも、僕には思い当たる人物が……居ない。

まぁ、後で姉さんに直接聞こう。


 こうして話は纏まり、僕は迷宮の事を全て話した。

内容はここに居る人物以外には広めない事を約束され、又何かあった際にはよろしくと頼まれる。

ここで大体の話は終わり、時間の関係でアレスクルト様は退室した。

この調子で、今後も何かと会う機会がありそうな気がしているが……敢えて気にしない方向で……。

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