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代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第三章
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57、蟻討伐の証明

 現在の状況では、今回あった事を色々話さなくては収まらない所まで来てしまって居た。

僕達の様な低ランク冒険者に対してギルドマスターが出て来る様な状況は……普通無いはずだ。

あの魔族獣が確かに強敵だった事を考えれば……当然かも知れないが。

しかも、予想としてはそれだけが問題なのでは無いだろう。

ここには軍の隊長さんが二人も同席している。

それも、危険な魔物に対抗する為の部隊の……だ。


 王都へ着くまでの間にゼットさんと会う事は無かった。

途中で何者かに襲われた形跡は見つけていないので、僕達より早く着いているはずだ。

おそらくだが、昨日の夕方か今日の午前中だと僕は予想している。

その報告で軍が動くにしても、当然危険度の高い蟻の殲滅に向かう事になるので……人数を揃えるのに時間が必要になるだろう。


 正直な所、最悪村の一つ位は犠牲になっても仕方が無い……と、考えている筈だ。

そうなると、現在は殲滅部隊の編制中だった可能性が高い。

そこに……蟻の目撃情報があった村で依頼をこなし、魔族獣の毛皮を持ち帰った冒険者が居たとしたら普通はどう考えるか……。

そうなると、僕がゼットさんに渡した蟻の角に関して、何か知っているかもと探られるのは当然と言える。


 この段階になって、鑑定部門の責任者さんが僕達に対して《識別》を発動させたのが見えた。

相手の使用スキル欄の色は白……僕の聖眼熟練度より上である事を示している。

その習得確率が変動した回数からも、僕達全員に対して使った事がわかった。

しかも、その後でもかなりの回数の確率上昇があったので視線を確認してみると……ゲルボドの装備を見ていた。

取り敢えず、もう逃げ道は無い。

素直に話すとしましょう。


 因みに、あれだけ使われたので《識別》は余裕で更新しました。

聖眼熟練度52だそうです。




◇ ◇ ◇




 僕は現在順を追って経緯を話していた。

魔族獣との戦い。

魔獣人の追跡と戦闘。

蟻の発見。


 この段階で軍の隊長さんは、言葉にはしなかったがアイコンタクトで何らかの合図をして居るのが見えた。


「先程、《識別》で確認されていた様なので御存じだとは思いますが、僕は《女神の祝福》を持ち、ゲルボドは異世界人です。レベルはゲルボドが37、僕が33、ミラが27。30レベル程度の蟻ならば、撃退は可能だという事がご理解して頂けると思います」


その言葉に責任者さん以外は驚き、責任者さんの同意でなんとか信じて貰えた。


「正直に言いますと、僕は《女神の祝福》のお陰で幾つか特殊な能力を持っています。ただ、冒険者として活動するに当たって……公表しない方が良いと言うのがメンバーで決めた方針なのです。勿論この場で必要な事はお伝えしますが、是非とも他言は無用でお願いしたいのですが……」


この要求にギルド側は了承してくれた。

ただ、軍の方はそういう訳にはいかないらしい。

あくまで部隊長クラスのお二人にはそれを決める権限は無く、上へ報告する義務があるからだ。


「わかりました、ギルドの方はそれでよろしくお願いします。王国軍のほうにはどちらにしても報告、及び受け渡しが必要になる可能性のあるものが存在して居ますので、後でまた相談させて頂きます」


僕がそう言うと、特に異論は挟まずに男性隊長は頷いた。


 蟻を退治した話の信憑性を上げる為、僕は勇者様の《無限倉庫》に類似した能力がある事を伝えて蟻のつのを出す。

取り敢えず、一スタック九十九個分だ。

それを見た全員の目が点になっていたが、


「おいおい、本気マジでとんでもねぇ奴だな、こいつ等……」


男性隊長がそうつぶやいた。


 そこからは巣の話に移り、殲滅させた事も伝える。


「この数の角があるんだ、実力に疑いようは無い。しかし、巣の全滅となると……流石に言葉だけじゃ信じられないな。何か証拠になるものはあるのか?」


男性隊長が当然と言える要求をしてきたので、


「はい、これです」


そう言って、五十cmもの大きさの女王蟻の頭を出した。


「身体も持って来ているのでお見せできます。ただ、この部屋で出す訳にはいかない大きさなので、別の大きな場所の用意をお願いします」


そう、僕が言うと、


「わかった。では、ギルド倉庫の中でも上位の者しか入れない場所がある。そこで確認させて頂こう」


そう言ってギルドマスターさんが場所の移動を提案してくれた。




 ◇ ◇ ◇




 ギルド倉庫は買い取った魔物の素材や、販売している道具や魔法具が大量に保管されている。

本来は関係者以外立ち入り禁止なのだが、今回は特別に許可された。

ずらりと並ぶ素材を置いた棚や箱とは別の方向に扉があり、僕達はそちらへ案内される。


 この扉に入る際に……僕はかなりの違和感を覚えた。

そこまで大きく表に出したつもりは無かったのだが、その表情を読んだらしく、


「ルーク君は魔法物質に対して相当敏感なのかね? ここには保存の魔法が部屋自体にかかっている。しかし、普通は特に何も感じ無い様に手を加えてあるのだ。それを感じ取れるというのは熟練の魔法使い位なんだがね」


と、ギルドマスターに言われた。

姉さんならまだしも、僕が熟練の魔法使いと言われる事は無いだろう。

考えられるのは……複数系統を持っている事により、違いを感じる力が伸びているとかかな?


「僕はまだまだ熟練と言われる域には達していません。考えられるのは複数の系統を習得しているから……とかですかね」


取り敢えずはそう言っておいた。


 倉庫内は結構な大きさだが、物を殆ど置いてはいない。

高さ三m、長さ七m越えの女王の身体を出しても十分に余裕はあるようだ。


 女王蟻の死体は回収直前に怪しい挙動をしていた。

念の為に全員に離れて貰い、シールド系魔法を張ってから品物を出す事にする。


 準備が終わり、僕は《アイテム》から女王の身体と九十九匹のスピアアント、それに加えて九十九匹のワーカーアントを出した。

流石にこれを見せられては納得するしかないだろう。


 それを見て女性隊長とギルドの御二人は唖然とした顔、男性隊長は大爆笑していた。


「おいおいおい! これは無いわ! その人数でどんだけ狩ってるんだよ!!」


ギャハハハハハハ! とお腹を抱えながらそう言った男性隊長の横顔に女性隊長の鉄拳が飛び……思いっきりブっ飛んで行った……。

行き先は……スピアアントの山の中。

鎧のお陰で血だらけにはなっていないが、装備に傷が大量についていた。


「ミルファ! テメェ、何しやがる!!」


「貴方が悪いのでしょう? レックス。王国軍の品位を激しくおとしめる態度は慎みなさい!」


……おそらく、いつもやっているやり取りなのだろう。

敢えて僕は関与しないことに決めた……。


 その後も二人は言い争いをしていたが、僕はギルドマスター方へ向き直り、


「これで証明はされると思うのですが、どうでしょう?」


そう聞いた。


「勿論疑う余地など無いな……。ここまでの証拠と《無限倉庫》を実際に見せられては……な」


「そうですね。一部気になる点はありますが……問題は無いでしょう」


こうして、ギルド職員の二人に関してはこれで終了となった。


 因みに鑑定部門の責任者さんの疑問は、女王の身体が《無限倉庫》に入っていた事に対してだった。

《無限倉庫》は文字通り数に制限が無いとされている。

しかし、大きさには制限があり、これだけ大きな物は入らないはずとの事。

この話は結構有名らしく、過去に勇者様が関わった国等では記録にのこされており、大きな物が入らなくて色々工夫する逸話があるらしいのだ。


 あくまで僕の能力は《無限倉庫》ではなく類似した能力である事。

僕達は《アイテム》と呼んでおり、数に制限がある代わりに大きさの制限が厳しくない事を伝えて納得して貰った。


 出した素材は取り敢えずこのまま保管して貰う事になる様だ。

この後に王国側の色々な人を交えて、行動の方向性や今後の事を相談をする材料に必要なのだとか。

そして、魔獣人の死体に関しては別で相談しなくてはならないらしい。

これはギルドでは無く、王国軍の管轄らしいのでそちらの詰所へ行く事になっている。

もう少しだと信じて頑張りましょう……。

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