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代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第一章
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5、魔法

 翌日からも僕達は毎日クエストを受ける生活をしていた。

基本的には薬草や森で取れるキノコや木の実等の採取とそこに現れる魔物の討伐だ。


正直に言えば手っ取り早くスキルを入手する為に他の冒険者と行動をしたい所ではあったが、姉さんが戦力にならない事や僕自身まだまだ未熟である事から、もう少し力を付けて別行動を取れるようになってからの方が良いということになり、当面の資金稼ぎをしている。


「ん~、今日はどれにしようかな」


姉さんがいつものようにクエストを確認していると受付のお姉さんに声を掛けられた。


「エルさんとルークさん、おはようございます。後一回のクエストでランク二へとなれる規定回数に達しますよ」


 そういやギルドランクを上げる必要があるのに、詳しい回数なんかは聞いたことが無かったな。


「ランク三に上がるまではクエストのクリア回数だけが評価になります。採取系も討伐系も同じ一回です」


「これは正規のギルド会員になる為の試験的な意味が大きい制度なので戦闘能力は問わない為です」


「ランク三になると二種類のクエスト資格に分かれます。戦闘能力を評価対象にする資格と採取や街中での作業等を行う非戦闘系の資格です」


「雑務などはどちらでも可能ですが、資格の必要なクエストの場合はパーティー内に資格を持っている方が居ないと受けることが出来ません。又、非戦闘系クエストは資格さえあれば受けることができますが御自身のスキルでクリア可能かどうかは自己責任になるので内容をしっかり把握してから受けて下さい」


「ランク試験は個別で行いますので自分の実力に合わせた資格を上げることになりますので自分に合った方向にお進みください。又、両方の資格を保有したい場合は個別に試験を行って取得して頂きます」


決まり文句的な説明なのか、ゆっくりと区切りながら教えてくれた。




◇ ◇ ◇




 ランク二になってからも街の周辺でのクエストを受けて堅実にランク三へ向けてこなしていた。

クエストにもランクがあり、ランクが上がれば当然危険や収集難易度が上がってくる。

ランク二向けのクエストを規定数こなさなくては三へは上がれない。

ランク一の頃は森の入口付近でクリア可能なものがほとんどだったクエストも、ランク二では奥へ入る物が増えてきた。

森以外の場所でも似たような感じに難易度が上がった。


森の中での魔物との戦闘は格段に危険度が増す。

今の実力で姉さんを守りながらではじきに限界が来るだろう。

本格的に姉さんが魔法の習得する方法を決めていかないと厳しくなりそうだ。




◇ ◇ ◇




 街へやってきてから一カ月が過ぎた頃、僕達はランク三になった。

これまでのクエスト傾向や資質の判定を受けて僕は戦闘系ランク三、姉さんは非戦闘系ランク三の冒険者へと上がった。


 正規ギルドカードにはいくつかの魔法が掛けられている。

その一つに《照合》のスキルにより識別可能な情報が書き込まれるものがあり、各街のギルドでカードを通して情報を共有される。

基本情報として、名前、年齢、性別、出身地、討伐実績、収集実績、指定討伐実績、規則違反歴等が書き込まれている。

討伐・収集実績はこなしたクエストや収集した証明部位や素材を元にした記録。

指定討伐実績は各ギルドで指定されている難易度が高い特定の魔物を倒した称号のような物らしい。

このカードを作るには多少お金が必要になるがカードの作成にかかる手間賃とほぼ同じだ。

仮カードではこの街の通行料がかからなくなるが、正規カードなら他のギルドがある街へも入ることが出来る。

正式な身分証明としても多くの場所で使える為、最優先で取得する事にしていた。


 この一カ月で、毎日の様に顔を合わせる他の冒険者とも多少話しが出来るようになってきたので、魔法等の情報も多少得られている。

魔法には基本的には二種類六属性あるらしい。

冒険者が使うのはほとんどが自然魔法で、魔法物質を集めて属性を付与することにより自然現象に変化させる事によって行使するものだ。

手順としては一点に精神を集中させて魔法物質を凝縮させ、そこに各属性のイメージを送り込む事により属性変化が起きる。

各属性に変化した魔法物質は制御する呪文により明確な形へと変化させて使用する。

この魔法系統は威力が高くは無いが制御が比較的容易である事とイメージさえ持てれば誰にでも使える事が特徴だ。

使えるのと使いこなせるのは別問題で、魔法使いの素質が無いと威力や精神力的に実用とはならない。


 もう一つが変換魔法で、魔法物質を自然魔法で属性物質として発生させた後で錬金術により融合や変化をさせる。

典型的な物としては風属性で竜巻を作って他の属性を融合させる事による属性竜巻系魔法等だ。

単純な融合でも範囲が広くなり威力も強力になる。

更に難易度が高い物質変化を使用した物になると、複数の変化を同時に発生させて化学反応を起こす事により、通常では起こらない強力な効果を発生させる。

姉さんには化学という認識だが、この世界では化学という考え自体が確立されていないので個別の反応を色々試した結果を丸暗記して使っているらしい。

当然ながらこちらは錬金術の知識と技術が必須であり、使用するMPも大きい。


 属性は火 水 風 土 光 闇の六属性。

普通、闇属性は使えないとの事。

人間の精神だと、普通の人は闇魔法が使える域まで到達しないらしい。


 人や魔物には属性値と呼ばれるステータスがあり、各属性魔法を使えばそれぞれが上がり、魔法の威力アップや耐性になる。

ちなみにステータスを確認する魔法があり、上位のものだと属性値がわかるらしい。

多数の魔法を使えればそれだけ色々な耐性も上がり、様々な属性に強くなるが習得にも時間がかかる為に器用貧乏になる可能性が出る為、正解と言える上げ方はよく議論されるが答えは出ないようだ。




◇ ◇ ◇




「どうせ魔法を使えるようになるならやっぱり変換魔法ね」


「でも変換魔法は大きな街の学校なんかで数年かけて覚えないといけないらしいよ」


流石に貧乏な農村育ちの僕達にそんなお金も入学に必要な推薦者もいない。


「私が最近よくクエストを受けている錬金術師さんの名前覚えている?」


「クレリアさんだよね」


 クレリアさんは五十歳位の少しふくよかな体型の錬金術師さんだ。

姉さんは昔から薬などに使う素材の処理が上手い。

ランク二のクエストを受けるようになってからはクレリアさんの方から姉さんを優先的に指名する事が多くなっていた。


「そう、クレリアさんは以前変換魔法を王都で学んだ事があるの。それで、条件次第では教えて貰えるかもしれないのよ」


条件にもよるだろうけど、普通学ぶ事が出来ない変換魔法を覚えられる機会があるならそれはとてもすごい事だ。

また正直な所、姉さんには冒険者以外の生活手段が得られる方が良いのではとも思える。

手に職という意味では錬金術単体でもとても魅力的だった。


 この一カ月で蓄えはそれなりに増えていた。

加えて討伐した魔物で食べられるものは《アイテム》に回収してある。


普通の肉食獣は匂いがきつく肉が固すぎるものが多数だ。

魔物はそれを更に巨大にしたり凶悪にした感が強いため、食べられるイメージを持ちにくいが実際にはとても美味しい事が多い。

(流石に亜人を普通は食べない&食べても美味しくないらしい……)

それには魔物という存在の成り立ちが大きく関わっている。


魔物は自然の生物が魔法物質により変異強化された存在が多いのだ。

自重を保てない様な巨体を自在に操れるのは、呼吸するように周囲から取り込んだ魔法物質を変質させながら維持している。

同様に俊敏な動きや剛力も同様で魔法物質による恩恵だ。

では、死ぬとどうなるのかというと魔法物質の供給が止まる。

すなわち細胞の強度を魔法物質に依存して維持している為に起こる現象、死によって柔らかくなった細胞自体から肉体が崩壊していく事になる。

その崩壊速度は、ほんの三十分間程度で食用としての限界を迎え、一時間とかからずに液状となる。

とても美味なのに一般の流通に魔物が乗らないのはこの短すぎる時間によるものだ。


甲殻や角、牙が証明部位に多いのだが肉体と違って魔法物質が変質せずに定着されているので強度があり、魔法の付与等も容易なので魔法の加工品として使用されている。


話しがやや脱線したけど、要は姉さんの稼ぎが暫くなくても何とかなりそうだという事。

それが現在の結論になっている。


僕一人でも十分稼いで見せます!


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