4、近くの森へ
まずはギルドでの依頼方法を確認した。
基本的には二種類、違約金が発生するかしないかに分かれている。
街の周囲の安全のために常に発行されている魔物討伐、ゴブリンやジャイアントトード、サイレントスネーク、ブラッドウルフ等は年中ある。
回復薬の基本となる薬草と毒消しの素材なども常にある依頼だ。
もっとも、冬期間にはあまり機能してはいないようだが。
これらには違約金が発生しない。
又、必要数が決まっていて早い者勝ちの物もこれに含まれる。
それらに対して期日が決められていたり、隊商の護衛任務等で最低限の働きすらできなかった場合は違約金が発生する。
違約金が発生しない物はカウンター横の掲示板に張り出されており、受付に申請する。
違約金が発生するものは条件確認等が必要なためカウンター内にある依頼表一覧と詳細を見せて貰う方式だ。
基本的に討伐も収集系も常時あるものなら終わってから受けて清算可能である。
今回は初めてだし近くの森での薬草収集とその近辺に出るゴブリンの討伐を受ける事にする。
受付のお姉さんに地図を見せて貰い森の位置を確認してギルドを出た。
現在は昼の三時過ぎだが、この世界にはそこまで細かい時間の確認方法はない。
僕がなぜわかるのかと言えば《ターゲット》の四角の上に時間表示があったからだ。
「スマホの画面表示には確かにあったけど、あれってゲーム外の表示だったはずなんだけど……」
と、姉さんはちょっとあきれていた。
便利だから重宝しています。
森までは一時間程度らしいので収集が早く終わる様なら戻って宿へ、時間がかかるなら明るい内は収集して暗くなったら野宿の予定だ。
森までは何事も無く順調に移動できた。
薬草自体は森の境目付近に沢山あり、姉さんが今までに収集したことがある種類だったので迷うことはなかった。
僕は周囲を警戒しながら姉さんの作業を待っていたが、突然チクリとした違和感を感じる。
これまでにも感じた事のある《スキル:危険感知》の警報だ。
周囲を警戒しながら姉さんに警告の声を掛ける。
見つけた。
森側の木の陰から弓持ちが一匹、短剣持ちが二匹腰を屈めながら近寄ってきていた。
身長八十cm、緑色をした肌と尖った耳を持ったゴブリン達だ。
《アイテム》から短弓と矢を出し、まずは弓持ちを狙う。
こちらに発見されていると判断した短剣持ちが奇声を上げながら突進してきた。
落ち着いて弓持ちに三発撃ち込む。
一本が目から抜けて後頭部まで突き抜けた。致命傷だ。
左手から弓を《アイテム》に収納しながら、何も持っていない右手を目の前まで迫ってきた短剣持ちの一匹に向けて振る。
これまで練習してきた事を生かし、振っている右手の中に剣を《アイテム》から取り出す。
突然現れた剣に反応する事が出来ずに首の半分まで刃が食い込み、頸椎が折られる。
最後に残った一匹を確認した上でもう一度周囲を確認する。
他には居ない事であらかじめ予定していた行動に出る。
回避に専念して相手のスキルを確認する作業を始めた僕は短剣の攻撃を難なく回避できた。
ゴブリンの初回の攻撃は短剣を横に振った。
これにより敵のスキル欄に、スキル:短剣 聖眼獲得率40%が現れる。
聖眼の成功率は雑魚の場合80%を大まかな行動の種類で割った%で、それぞれの使用を確認すると上がるらしい。
こいつの場合、力任せに振るのと回避の2種類しかないため各40%で、残り20%はすでに見た行動を再度見ると少しづつ上昇する。
ゲームでは雑魚80% エリア中ボス60% エリア大ボス40% ラスボス20%だったとの姉さん情報。
すぐに100%になったので、《スキル:短剣》……聖眼獲得値:熟練度1を入手。
他に何もスキルが無さそうだったのでサックリ倒した。
魔物討伐の際に必要なのは倒した証明なのだが、これには二つ方法がある。
一つは証明部位の提示で、ゴブリンの場合右耳の上半分となって居る。
この部位は切ってもあまり血が出ない為あまり処理が必要ないので助かる。
ちなみに、魔物には大きく分けて二種類いる。
亜人と呼ばれる人間の様に二足歩行や人間の一部を有して道具を使用できるタイプ。
これらはあまり魔法物質に依存していないので普通の動物と変わらない。
もう一つは魔法物質によって身体を強化しているタイプだ。
このタイプは死ぬ事により魔法物質の供給が止まると三十分~一時間程度で肉体が崩壊する。
骨や牙、皮といったものは残るのでこれらが証明部位ならいいが、崩れる部位だった場合は表面を全て焼き固める等の処理が必要になる。
もう一つの方法は依頼を受けた際にギルドで原魔石を借りて使用する方法だ。
原魔石は死んですぐの魔物に使用すると血液と証明部位を中心とした部位から生命力や魔法物質を吸収して魔石となる。
魔石の安定度を維持する為に特定の同じ魔物にしか効果が発揮しないようにできている。
魔石は様々な用途があって人気が高いが、原魔石の制作コスト分の保証金が借りる際に必要である為今回は借りなかった。
ゴブリンの場合十匹位倒さないと魔石にならないので今日明日で換金できない可能性が高いのだ。
姉さんの作業は一時間もかからずに十分な数が揃ったので街へ帰ることにした。
出来たら宿には泊りたかったのが正直なところだったので、頑張って移動する。
途中で体長一mのサイレントスネークと遭遇したが無事撃破。
《スキル:消音移動》……聖眼獲得値:熟練度3を手に入れた。
ギルドで清算すると宿の食事込みで三日位は泊れそうな金額になったので受付のお姉さんに聞いて僕達が泊ってもあまり絡んでくる人が居ないであろう宿を紹介して貰った。
成人もしてない僕達みたいなのに絡んでくる人は何処にでもいるらしいので用心のためだ。
お勧めされたのは『白竜亭』だった。
ギルドからは多少離れているがその分力仕事を好む層があまり来ないので比較的静かな宿だ。
「すみません、宿をお願いしたいのですが」
「はいよ。お嬢さん、一部屋と二部屋のどっちだい?」
宿代は部屋の大きさと数で決まるらしいので、今後の事はまだわからない事もあり節約の為に大きめのベッドのある一部屋を借りる。
連続で泊る場合は翌日の分を前払いすると食事が一日一回サービスされるらしいが流石にもう少し様子を見てからの方がいいとの姉さんの判断により別料金で食事をする。
お勧めの料理を聞いたところ、夕方に焼いたばかりの黒パンとエルナリアラビットの肉が入ったシチューだったのでそれを頼んだ。
エルナリアラビットは魔物では無い普通のウサギだが体長が鼻から尻尾の先まで百五十cmある大きな種類だ。
この付近にしか生息していないがよく取れるので比較的安価で手に入る肉らしい。
草食動物なので臭みはあまりないだろうと思っていたが、それどころか香草のような匂いすら感じる。
ルルカナという種類の香草を好んで食べる為、肉にも爽やかな香りと甘みが付くらしい。
パンもシチューもとても美味しく、満足して二階にある部屋にあがった。
「とりあえずは明日からも暫くは収集系と討伐系を同時にこなせるように依頼を受けて少し資金を稼ぎましょう」
お金に余裕が無いと色々制限されるので、まずは当面の宿代や装備の充実をするとのこと。
その間に魔法の習得に必要な情報を得ていき、姉さんが優先的に魔法の練習を行う方針だ。
もし図書館等が僕達でも使えるようならそこら辺でも情報収集に使いたい。
そんな感じで早々にベッドで横になりながら相談していたら意識が無くなり、早々に寝てしまった。
やはり疲れが溜まっていたようだ。
僕達は夢すら見る事の無い深い眠りに落ちて行った。




