41、種族スキル《隷属》
ミラに確認した所、《隷属》と言うスキルは、ミラの種族が産まれながら持つスキルらしい。
獣人族の集落の中で弱い立場にある、人型の猫人族が生き残る為に習得したと予想されるスキルで、文字通り対象に対して隷属するスキルとの事。
解除する為には双方で解除の儀式を行う必要がある為、普通は奴隷扱いをされたまま一生を終える事が多い。
何故そのようなスキルが存在するのかと言えば、《隷属》すると自身の種族的特性を主の物に近づけ、主の持つスキルをそのまま複製してしまえるとの事。
複製したスキルを定着させるのにある程度の時間はかかるが、通常から比べれば物凄い速さで習得することができる。
一説では、昔勇者の仲間に選ばれた猫人族(人型)が居たらしく、そこから発生したと伝えられても居るらしい。
もしかしたら僕達と同じ、勇者育成システムの流用なのかもしれない。
そして、こんなスキルが何故必要かと言えば、強い異性の役に立つ事で寵愛を受け、なんとか次代に繋ぐ為の種族的存続の為に発生した物らしい……って!
…………えぇ!!
ゲルボドのスキル?
大丈夫なのか……?
ゲルボドのスキルは、僕では習得不可能な物ばかりだった。
現在とついて居たりする物もあるが、基本的に習得出来て居ない。
姉さんの前世の物も無理なので、この世界のスキル以外は正直……仕様自体が怪しい。
まぁ、やってしまった物は仕方が無いので、不調が無いかを確認しよう。
「ミラ、何か変な感じがするとかは無い?」
「特には……無いですね」
う~む。
大丈夫そうか……?
いや、スキルを使うまでは判らないな。
そういや、スキルとかどうなって居るんだろう?
「ミラ、そう言えばスキルを覚えるって言うけど、どう確認するの?」
「スキルを使いたいと意識すれば、任意で使えるタイプの物は選んで使えます。それを繰り返していくと、使う事に慣れて自分の物になります。状況的な物が必要な場合は、機会があると選べると聞いています」
「じゃあ、今使える物って何があるの?」
そして挙げられたのは以下の物だった
・スキル:片手剣(異世界)
・スキル:両手剣(異世界)
・スキル:弓(異世界)
・スキル:片手棍(異世界)
・スキル:短剣(異世界)
・スキル:強打(異世界)
・スキル:魔法強化(異世界)
・能力 :嗅覚強化(異世界)
・能力 :広視界(異世界)
・能力 :腕増やし(異世界)
・詠唱魔法:魔術師魔法(異世界)
・詠唱魔法:神官魔法(異世界)
・触媒魔法:錬金魔法(異世界)
・念動魔法:超能魔力(異世界)
一部……突っ込みたくは無いが……突っ込まざるを得ない……。
腕増やし……?
……どういう事ですか……。
「シャ――――? 前は腕を一本増やしていたシャ――――! 盾持ってオーディンソード持つには手が足りなかったシャ――――!」
それで腕増やしたのか……既に人を捨てている気がするのだが……ゲルボドなら気にならないという事か……。
「でも、こちらの世界に来たらどこに落としたのか、無くなってしまったシャ――――!」
いや……落ちないだろ!!
「まぁそんな事はどうでも良いわ」
どうでも良いんですか……姉さん。
「ミラ、使える魔法の中で、適当に使える呪文を使ってみて」
「はい、エルおねぇちゃん」
姉さんの指示でミラが魔法を使おうとして見るようだ。
「あれ? 使える魔法が有りません……」
「やっぱりね。予想はしていたわ」
姉さんは、どうやら何かを予想していたらしい。
「ゲルボド、私に最低レベルの魔法を撃って。そうねぇ、《魔術師魔法》で良いわ」
「わかったシャ――――!」
そう言ってゲルボドは詠唱した後に、姉さんに小さな火の玉の魔法を当てた。
勿論、姉さんは無傷だ。
でも、……当てる必要があったんだろうか?
「ミラ、もう一度《魔術師魔法》の使用可能魔法を見てみて」
「はい。……あ、《火炎球》と言う魔法が使えそうです」
ん?
ゲルボドが使ったから増えたのか?
「予想通りね。ミラが使えなかったのは、この世界で一度も使った事が無い魔法だったからだと思うわ」
「シャ――――?」
「ルーク、例の誰が記載しているか不明な、習得不可能と現在習得不可能とかの表示があったでしょ? あれの条件を考えては居たんだけど、今回の件で予想がついたわ。ゲルボドがこちらの世界で魔法やスキルを使うと、神なのか世界自体なのかは判らないけど、どこかで解析されてこの世界でも通用する形になるんだと思う。そうなると、現在習得不可能な物は、全魔法を使用した時に解放されるんじゃないかと予想できるわ」
確かにあり得る。
「さっき言っていたスキルの中ですぐ使えそうなのは……《広視界》かな。これってこっちの世界で使った事は?」
「そういえば、常時発動のはずなのにいつの間にか効いて無いシャ――――!」
もっと早く気付けよ……と、言いたい!
「今、有効になったシャ――――!」
そう言った時に、
能力 :広視界…………聖眼獲得率80%
即獲得した……うぉ、これは凄いな……。
僕は昔からの練習で、視界の中の物は同時に大体全てを認識出来る。
しかし、この広視界は更に広く認識できている。
見えているのとは違うと思う。
何らかの方法で感じて居るんだと思うが、僕自身の感覚ではまるで見えている様に感じる。
「へぇ……これは凄いわね。魔法物質を捉えているのに、まるで見て居る様に再現しているわ」
だ、そうです。
現在感じる事が出来るのは、真横より少し後ろ位までだ。
もっと広くなるのか期待したが、流石に熟練度が存在しなかった。
残念。
これが切っ掛けになり、この日からギルドに戦闘系の《クエスト》を受け、ゲルボドに魔法を使わせる日々が始まった。
「取り敢えず、手札を増やす為にやる事が有るわ。ゲルボド、あなたのスキルを習得しておきたいから、順番に使って行って頂戴」
と言う、姉さんの指示からだ。
確かに僕達もゲルボドの魔法を使えれば、非常に有効な手札になる。
僕達も回数制で使えるのかMP消費になるのかは判らないが、最低でも《快癒》の魔法が使えるだけでも話が変わって来る状況も生まれる可能性が高い。
《快癒》はそれ位、強力な魔法だと思う。
◇ ◇ ◇
ゲルボドとミラのランク上げを兼ねて色々と受けては過剰な魔法を使いまくった結果、《錬金魔法(異世界)》と《腕増やし》以外は《聖眼》で習得可能になった。
加えて、《盾(異世界)》等も全技を使用したら出てきたので習得した。
面白い物は片手剣が、
スキル:片手剣(多世界)…………聖眼熟練度84
になった事だろう。
熟練度84とか……凄いなゲルボド……。
姉さんが言うには弱体化に引っ張られて、現在値は低くなっているみたいだ。
それでも、凄まじい所まで保証されている訳ですよ。
凄いとしか言いようがない。
《腕増やし》は自在に引っ込められないらしいから却下、《錬金魔法(異世界)》は全魔法使うには触媒が足りないらしいので断念した。
ゲルボドは効果に合った触媒があると見分けられるとの事なので、順次触媒が揃い次第使っていく事にする。
因みに、ゲルボドに対して《隷属》を使用したミラだが、ゲルボドは基本的に頼み事をしないタイプなので、命令の効果が発揮した事すら無い状態だ。
即ち、今までと全く関係が変わってはいない。
まぁ、そうでなくては困るので助かる。
その姿は種族こそ違うが、兄妹の様に見える程の仲の良さだ。
こうして日々は過ぎて行き、お嬢様の入学の日がやって来て、僕達は本格的な修行期間が始まる事になった。
まずはゲルボドとミラのランク上げの続きと、姉さんが一度故郷の村に戻る事になって居る。
ミラは僕達について来れる最低限の強さになって貰う事が必要なので、その期間に姉さんが村で迷宮を作るとの事。
折角なので街へ行き、領主様やクレリアさんにも報告と挨拶をすると言っている。
因みに、お嬢様は王都に居る間はミルロード六爵邸にお世話になる事になった様だ。
寮もあるのだが、ミルロード卿が是非と言って決まったらしい。
お嬢様にしても、辺境の六爵家の娘に対して見下す連中も居る事を理解しているので、有り難く了承したようだ。
姉さんはその話を聞いて、とんでもない事をやり出した……。
馬車を守った、《アースシールド》に魔素を送り込んでいた魔法具、あれを個人用に改良してお嬢様に渡したのだ……。
最初の発動はお嬢様から日々吸収したMPと小型の魔石に貯まって居る分の魔素で発動し、その後は姉さんから魔素が送られるらしい……。
明らかにやりすぎでしょう……。
「未来の妹候補に怪我をさせる訳にはいかないのよ! ルークは黙ってなさい!」
そう言われた。
因みに、クレリアさんの所で再度魔素供給用の魔法具は作って来るとの事。
あれだけ役に立つなら失敗作扱いでは無く、一種の製品として作る価値はある……と。
材料は迷宮で沢山手に入れたから、十分作成可能だとか。
こうして、僕達は次の段階へ本格的に移行することになる。
さて、これからも頑張りましょうか!




