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代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第二章
42/111

40、ミルロード六爵邸

 僕達は無事冒険者登録も終わったので、お嬢様達の居る御屋敷へ向かう。

そこで判った事は、ゲルボドは迷う事を苦にしないだけで地図を描かないと平気で迷う奴だ。

ミラはどうやら一度通ると道や建物を記憶して行き、二回目にはほぼ迷わなくなるらしい。

そのお陰で御屋敷には迷わずに着いた。

ちなみに、姉さんも描かないと若干怪しく、僕はこんな人混みでは全く役に立たなかった!


 再度訪れた御屋敷は、お嬢様がこれからしばらくお世話になるミルロード六爵邸。

一応ゲルボドの姿はあまり目立たない様に、フード付きのローブを着せて御屋敷の門番をしている人に声を掛けた。

この人は先ほども居た人なので、すぐに案内の方を呼んで中へ入れてくれた。


 この御屋敷は内装全体が豪華で、相当にお金が掛かって居るのが分かる。

エルナリア六爵家(お嬢様の家)は入口から応接間、そして一部の客間以外はあまり豪華にはして居なかった事を考えると、この御屋敷はその何倍も費用がかかり、維持にも相当な額がかかると予想できた。

お嬢様の御父上が懇意にしているなら、問題のある統治はしてないとは思うのだが……領民に負担を強いらずに、ここまでお金を掛ける事が出来るのだろうか?

どうしても気になってしまった。


 姉さんも色々見ながら歩き、ミラはちょっとビクビクしながら歩いている。

ゲルボドは……良く判らない……。

窓の外の蝶々を見ている気はするが、考えている事は綺麗だとかじゃない気はする……。

しばらく廊下を歩いた先に、荘厳な装飾がなされた豪華な扉があった。

その扉へ案内の方がノックをすると、中から威厳はあるが年齢的には青年にも聞こえる声で入室を許可された。

中にはお嬢様が座り、その後ろにラナとルルが控えており、部屋の奥の方に、おそらくこの屋敷の主であるミルロード六爵だと思われる男性が座って居た。


 歳はおそらく三十台。

綺麗で豪華な服を着ているのは勿論だが、本人の見ため自体がとても精悍かつ優雅、顔自体の造形も文句のつけ様がない美男子だった。

そのミルロード六爵が立ち上がり、僕達の方へ歩いて来て、


「はじめまして、みなさん。私がこの屋敷の主、クリス=ヴェリエル=ミルロードです。宜しく」


そう言って僕達の挨拶に対応しながら、僕には握手を、姉さんとミラには手の甲に軽く口づけを、そしてゲルボドには……、


「おお、本当にリザードマンみたいな人だね! 宜しく、ゲルボド君!」


僕の時より相当高いテンションで、ブンブンと音が聞こえる位の握手をしていた。


「お待ちしておりました、皆様。ゲルボド様の件はどうなりましたか?」


お嬢様も立ち上がってこちらへ近寄ってきながら、そう聞いてきた。


「まぁ……、何も無かった訳では無いのですが……ゲルボドの人としての認定は完了しました。その後、冒険者登録もしてきました」


「無事終ったのですね。それは良かった。これで一安心ですね」


お嬢様はそう言ってほほ笑んだ。

そんなお嬢様を見て、僕の心に安らぎが訪れた頃……隣でゲルボドと姉さんとミルロード卿の話が盛り上がって居た……。

ああ、この六爵様、そっちの分類の方だ……。

納得すると共に、今後は更に暴走する面子が増えそうで、不安が膨らんできたのは言うまでもない。


 取り敢えずそんな面子は放置して、僕は気になって居た事をさりげなくお嬢様に聞いた。


「この御屋敷は凄く立派ですよね。ミルロード卿は……その、相当な資産をお持ちなのですか?」


その答えはお嬢様では無く、六爵様自身から返って来た。


「ルーク君が気にして居る点は理解できるよ。要は、民に対して圧制を敷いて居ないかが気になるのだろう? 私はエルナリア六爵を尊敬しているのでね。自分で言うのも何だが、理想的な領主の一人だと自負しているよ」


「ルーク様、おじ様のおっしゃっている事は事実ですわ。この御屋敷が立派なのは、単にミルロード領が豊かなお陰なのです」


お嬢様がそう付け加えた。

その後にミルロード領について聞いた所、エルナリア領より温暖で農作地も豊か、加えて各種鉱山を有しており、税収も安定して高い状態を維持しているらしい。


「言わせて貰うと、この豪華な屋敷は僕の趣味では無いよ。王都に屋敷を構えるに当たって、他家に軽く見られない為には仕方が無い事なのだよ。自分の領地に見合った屋敷も持てないとは高が知れている……って、すぐに陰口が飛び交うのが、暇なパーティ好きの奴らの常だしね」


ウンザリした顔でミルロード卿が言った。


 まぁ、この状態ならば当然と言えるが、全員が好きなだけ滞在しても良いと言われた。

ミラは馬車に閉じ込められて居た間に随分とお嬢様達と仲良くなっており、もうしばらく一緒に居られると喜んでいた。

もっともミラに関しては、お嬢様はこちらでの使用人として雇う事も考えている様だ。

ゲルボドとの絡みもあるから、話自体はまだして居ないらしいが。





 ◇ ◇ ◇




 お嬢様の学校が始まるのは二週間程後らしく、それまでは一緒にミルロード邸にお世話になる事にした。

その間に僕と姉さんは王都の事について、色々調べている。

拠点として活動できるのかを確認する為に冒険者ギルドの依頼を日々確認したり、実力のある戦士や魔術師のスキルを見る機会が無いか等と言ったイベントについてや、実力者が指南している道場等の場所の確認等だ。

加えて、冒険者が使用する宿等も調べている。

僕達の年齢の事もあるので、環境を確認しておかなくては問題も起きる事が多い。

因みに、戦闘を行わないこの期間に、僕は毎日の日課にしている事が有る。

《迷宮創造》を使用して、僕の迷宮を作成しているのだ。

現実問題として、僕のMPでは迷宮の基本となる入口が出来るのに数日かかってしまう様だ。

スキルを使用すると、残り必要MPが大体分かる。

僕だと、おそらく十日前後だろう。

姉さんは毎日、余裕で作成と破棄を繰り返している……。

色々なタイプの移動迷宮を試しに作っている様だ。

完成時に熟練度が大きく上がるらしいので、毎回次に作る時に破棄している。

僕は事前に決めてあった通りに、転移系の迷宮にした。

その中でも、基本的に僕の現在位置について来るタイプにした。

宿として使うのならば、その方が都合が良い。

色々設定できるようだが、まだ迷宮自体が出来て居ないので予定だけ立ててある状態だ。

迷宮のレベルが上がると常時自分にくっ付いて来るようだが、最初は一日一回程度、僕の居る位置に転移してくるらしい。

これが迷宮レベルの上昇に伴って、転移間隔の半減を繰り返す。

目安としては、迷宮を一つしか持たない状況で《迷宮創造》スキルが六十位で常時移動するようだ。

……って、迷宮を複数もてるのかぁ……。

いずれ姉さんが何かやらかす!

そう確信を持てるのが怖い……。




 ◇ ◇ ◇




 こうして日々は過ぎて行ったが、一つ予想外の事が起きた。


「私はゲルボドさんと一緒に行きたいです……」


ミラがそう言ってきた。

お嬢様が自分達と一緒に居ようと、誘った時に発覚した事実であった。

正直、これから上位竜を倒す為に活動する際に、姉さんやゲルボドは既に実力があるので問題無く活動できるだろう。

しかし、まだ十一歳の戦闘力を持たない少女が一緒では、三年と言う期間は厳しい。

逆に期間を優先した場合は、下手をするとミラの命に係わる難易度になるだろう。

ミラには悪いが……三年間は諦めて欲しい……。

姉さんも同じ結果に至ったらしく、


「ミラ、気持ちは分かるわ。でもね、ルークとシェリーにとってはとても大切な時なの。ハッキリ言うと、足でまといになる人を連れて行ける余裕はないわ」


そう伝えた。


「確かに今はまだ役には立たないと思います! でも、すぐにお役に立てる様になれれば問題は無いですよね?」


「そんな事が出来るのならば問題は無いけど……。ハッキリ言って私やルーク、ゲルボドは普通じゃないと思った方がいいわ。それらの足手まといにならないって言うのは相当厳しい物があるわよ?」


ミラが姉さんの答えを聞いて、何かを決心したような顔をしてからゲルボドに向き直った。


「ゲルボドさんは、私が付いて行っても構わないでしょうか?」


「ミラがその方が良いと言うなら、問題は無いシャ――――!」


その言葉を聞いたミラは、何かを短く言った。


スキル:隷属…………習得不可能(種族限定スキル)


ミラの使用スキル欄にそう出ている。

名前だけ見ると……心配になるスキル名なんですが……。


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