38、王都到着
旅は順調に進み、途中で出て来る魔物も今となっては雑魚としか言えなくなっていた。
……いや、本気であの迷宮のお陰と言ってはアレだが、凄い事になって居る……。
旅立ち直後に出て来たグリーンオーガと同等の強さを持つブルーオーガが出たのだが、冒険者ランク四のパーティー推奨の敵だ。
姉さんは一人で平気な顔して倒していたが、僕では無理な強さだった。
しかし、僕一人で戦ったブルーオーガとの戦いは圧勝だった。
魔法も不使用。
自分の剣は折れてしまったので、代わりに使っているハイゴブリンから獲得した剣すら使わずに勝ってしまった。
何をやったのか……ハイ……盾と《握り潰し》だけです。
イヤッ! 僕はやりたくなかったよ!!
「ルークも相当強くなっているから、その位でやった方がスキルの上りが良いわ」
だそうです。
絶対何か間違ってるよ……。
「三年しかないんだから、死ぬ気で頑張る!!」
そう言われたら、やるしかないんですけどね……。
更に道中は《騎乗槍》と《戦闘馬術》の訓練だと言われ、三頭の馬を順に使って馬車の前方を百m位全力で行ったり来たりして動きに慣れようとしている。
因みに、現在の馬は五頭。
迷宮の外で最初に襲ってきた奴らが乗って居た馬を、一頭連れてきている。
夜には外で繋いで置く事になるが、姉さんがアイアンゴーレムの残骸から作った網で囲っているので襲われる危険は非常に少ない。
網と言ってもただの網では無く、相当色々魔法を付与してあるそうだから……襲ってきた方が危ない代物らしい。
相変わらずやりすぎな気はするが……気にしたら負けだろう。
夜になるとお嬢様と顔を合わせる事になるが、正直その少し恥ずかしがりながらも優しげな微笑みを向けられると疲れすらも一気に解消された気分になる!
浮かれすぎて、
「浮かれるのもいいけど、全ては今後の三年間にかかっているんだから、気を緩めない様に!」
そう、姉さんから言われる日々が続いている……。
そうは言っても! 後数日もしたら、王都へ着いてあまり会えなくなってしまうかもしれないんですよ。
夜のこの時間位は、幸せな気分でもいいじゃないか……。
「ルーク様はとても頑張っていらっしゃいますもの! 絶対に【竜殺し】になれますわ」
そう言って真剣な眼差しを僕に向けてくれるお嬢様に報いる為にも、絶対に貴族になって見せる!
そう、何度目か判らない決意を固めて今日も終わって行った。
◇ ◇ ◇
順調に旅も続き、街道沿いでは殆ど魔物も出て来なくなっていた。
後一日もすれば王都に着くらしい所までやって来た。
ここで再度確認する事は、ゲルボドの扱いである。
姉さんは大丈夫だと言っていたが、実際にどうするのかを確認した。
まずはゲルボドには話をさせないで、大人しく姉さんの指示に従う事だけを徹底する。
そして、手足に拘束具の様な金属の輪を付けており、鎖によって動ける範囲が制限されている様に見せている。
この状態で王都へ行き、姉さんがクレリアさんから貰った錬金術師である証と、ゲルボドの行動に対する保証責任を記載した文書提出。
これにプラスして、お嬢様が書いた保証書を提出する事で中にはおそらく入れるらしい。
入ってしまえばこっちの物。
冒険者としての依頼は終了しているので、そこから人として認定されても依頼には問題無いし、人扱いされて無い時期の同行者はやはり人では無い事になるとの事。
そんな情報をどこから得たのかと思ったら、どうやら領主様から預かった今回の旅の注意点の中にあったらしい。
この国は、現在奴隷を認めて居ない。
ただし、隣国では一部認められている居る為、その扱いについて書かれており、奴隷は人としての扱いを受けて居ない事から記載された部分との事。
基本的に奴隷と一緒に行動する事は無いので本来無駄な説明であったが、今回はそのお陰で事情が分かって有難かった。
ふと気が付いたが、ミラは奴隷として売られそうになったと言っていたけど、よく考えたらどこで売るつもりだったのだろう?
ゲルボドと会った場所から隣の国は遠い上、流石に国境を奴隷にする為の少女を連れたままではそうそう抜けられないと思うのだが……。
若干キナ臭い話が出て来る気がしてきたな……。
特に某五爵とか、五爵とか、五爵とか……。
王都に着いたら、何とか調べる事が出来ないか考えてみよう。
取り敢えずゲルボドは、用意周到に準備されている様なので大丈夫そうだ。
……それにしても、姉さんのゲルボドに対する扱いが若干酷いと感じる時もあるがゲルボドは全く動じないな……。
図太いのか姉さんと同類なのかはわからないが、気にして無さそうだから放って置こう。
◇ ◇ ◇
遂に僕達は王都へ着いた!
王都の城壁はとても大きい。
六爵領の街ではあくまで魔物用に外壁があったが、この城壁は規模が違う。
頑丈な石で出来たブロックを積み上げた上で、どれだけの経費と人員をかけたのか不明だが、表面に魔法を付与した劣化防止用の薬液が万遍なく塗られ、レンガ状のブロックを組み上げて出来た様な高さ五mにも及ぶ巨人が壁にはまり込んでいる。
どうやらこれらはゴーレムで、外敵用に相当数が配備されている様だ。
流石に王都、あらゆるものが凄そうです。
入口は王都へ入る人で、行列が出来て居た。
僕達はこの列から離れた位置にある、貴族専用の入口へ行く。
出発時に渡された、旅の案内に書かれていたからだ。
衛兵がやって来て、丁寧に挨拶をしてきた。
お嬢様が入学の為の王都入りに対する手続きをする為に、必要な書類をまず渡す。
そこに記してある内容とお嬢様が一致するかを、担当のスキル保持者に確認してOKが出た。
次に僕達の年齢確認を行う。
六爵領から来たメンバーは、既に年齢を確認出来る物を所持している。
ミラは持っていないのでスキルにより調べて貰い、当然OKが出た。
……さて、肝心のゲルボドだが、やはり驚かれた……。
しかし、姉さんが自信満々に準備してあった書類を渡すと、確認してすぐに許可が出た……。
流石にリザードマンは珍しいらしいのだが、錬金術師等が亜人を連れて入る事自体はそこまで珍しくないらしい。
もっとも、偶に問題を起こして賠償責任に発展する事もあるから、十分気を付けてくれと言われた。
全ての手続きが終わり、ようやく中へ入る事が出来た。
……流石王都!
その街並みは、凄いの一言しか出て来ない!!
ぶっちゃけると、田舎者の僕には最早表現出来ない凄さなのだ。
まず驚いたのはとても整備された街並みと、とても太い石畳の道がどこまでも続き、巨大な建物が整然と建ち並ぶ。
見た事が無い程の人で溢れ、田舎では見る事が出来ない河の流れの様に人が動いて行く。
道を歩く事すら、流れに乗る事が必要になる程の人混みなのだろう。
まずはお嬢様達を入学までの間お世話になる、領主様の親友という方の御屋敷にお嬢様達をお届けする為に馬車で移動する。
馬車の流れに乗って移動し、旅の案内に描かれた地図を見ながら大通りから脇道へ入るとすぐに御屋敷は見つかった。
「私達はこれからしばらくはこちらの御屋敷でお世話になる予定です。皆様も当面はこちらでお世話になれますよう、お父様が一筆書いて下さっていますので、御用が終わり次第こちらに来て頂きたいのですが……」
僕、姉さん、ゲルボド、ミラを見回した後、僕に方に少し頬を染めたまま見つめて来た。
僕は心臓の鼓動が高まるのを感じた。
「そうね、まずは用が終わったらこちらに顔は出すわ。実際に泊めて貰えるのかはそこで確認させて貰うわ」
姉さんがそう言って、ゲルボドも見た。
「領主様の一筆ってのにはゲルボドとミラは書いて無いでしょ。……正直、ゲルボドのインパクトは確実に大きいから、確定するのは取り敢えず会ってからにしましょう」
「そうですね……おじ様には私から先に説明しておきます。その上で実際に会って決めて貰うのが良いのかもしれませんね」
「OK。それじゃゲルボドの件を取り敢えず終わらせて来るわ」
姉さんとお嬢様の話はそこで終了したので、一度別れて移動した。
目的地はこの地区にある、王都軍詰所に付随して存在する役所の様な場所らしい。
因みに、お嬢様は馬車を使用しても良いと言ってくれたが遠慮した。
ここのルールが正直良くわからないので、何らかの違反とか知らずにしてしまいそうだったからだ。
ただでさえ今のゲルボドは亜人扱いなので、余計な面倒は起こしたくない。
さて、それでは行ってみましょうか。




