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代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第一章
16/111

15、魔法具の行方

 四人の戦士風の冒険者はとりあえず武器を構えてはいない。

しかし《危険感知》が鳴りやまない事には油断出来る訳が無い。

先頭のリーダーらしき男がニヤニヤしながら口を開いた。


「討伐ご苦労さん、俺達が手を出すまでも無く倒すとはやるじゃねぇか。まぁそれでも俺達もそいつを確認して他のパーティーが集まるのを待っていたんだ。分け前は当然貰えるんだろ?」


成程、僕達より先に見つけた事にして分け前を要求する訳か。

何故このような言い方になるかと言うと、


スキル:詐欺術…………聖眼獲得率8%


完全に騙す気だよね、これ。


「私はギルド職員です。残念ですが私達はギルドから発注されているクリムゾンベア討伐依頼とは関係無く動いています。よって、討伐依頼自体の扱いがどうなるのかは担当者に確認してください。又、素材は全てこちらに所有権があります」


ルヴェールさんもこの集団の言い分に疑問を持っているのか若干棘のある言い方で答える。

その間に僕は一つの行動を起こしている。

ややルヴェールさんの方へ向きながら《ショートカット》から《スティールMP》を発動させて、ルヴェールさんの視界に入る位置の木の幹に当てた。

もちろん効果など無い。

しかし、ルヴェールさんの視線は面白いように木の幹に誘導される。

それを確認してすぐに四人組に視線を向けた。

全員こちらをニヤニヤしながら見ており、誰一人木の幹を見ている奴はいない。


「おいおい、それじゃ横取りじゃねぇのか? こちとら知らせて待てって言うから従ってるのに、その間に他のパーティーで狩ってしまうとかおかしくないか?!」


少し焦るような感じで恫喝を始めるリーダー。

後ろの二人も似たような顔をしながら一人に至っては武器に手をかけている。

一人だけ意味がわかっていないらしくニヤニヤして呑気なままだ。

《危険感知》の警報音が若干うるさくなる。


 何故こいつ等が急に焦り始めたのか理由を一応予想してはいた。

ルヴェールさんがギルド職員のネームプレートを付けていた為、僕達が討伐隊の一部だと考えた為に自分達も分け前を要求する事にしたのに、そうではなかった。

そうなると、僕達が戦いだした段階で探索部隊側に発見した信号が発信されて居ないという事に気が付いたのだ。

自分たちが嘘を言っていたのがバレる可能性が高い事に気が付いてしまった三人は、どうにかしようと動き始めたという所か?

もしそうだとしたら結局はバレて終了な気がするんだが……。

真相は不明なままで良いや……。


 こいつ等の対応はルヴェールさんに完全に任せている。

ルヴェールさんも僕が〝何をやっているか″理解してその役目を担ってくれている。

次々と行っている僕の〝行動″によって結果が出始めた。

武器に手をかけていた男が突然崩れ落ちる。

次にニヤニヤしたままの男。

何が起きているか分からないのだろうがリーダーが武器を抜きながら怒鳴る。


「手前ら何しやがった!!」


しかしもう遅い!

僕は容赦なくリーダーへ魔法を《ショートカット》から無詠唱で撃ちまくる!

すぐにリーダー、そして残り一人が昏倒した。


 何をやったのか、答えは簡単だ。

すでに僕の得意魔法と化してしまっている例の魔法を撃ちまくっただけなのだ。

闇魔法は実際に暗闇等を作り出す場合以外、精神異常系や吸収系では目に見える物質は発生しない。

魔法物質が見えるルヴェールさんには黒い霧状の小さな塊が見えるのだが、こいつ等には見えていない。

木の幹に当てた闇魔法を理解出来ていない事から魔法使いが居ない事を確認した僕は、容赦なくMPを削りまくった。

相手にももしかしたら違和感はあったのかもしれない、しかし魔法使いではなく、MPを削られる経験等も普通では味わえない。

結果、気が付いた時には僕の魔法を順番に受けて順次昏倒という訳だ。

まぁ、その代償は僕が魔法具を使って戦っていたという嘘が発覚する事にもなってしまったが……。


 魔法具を使用した場合には、魔法物質の属性変化を魔法具内で行われる。

例外はあるが、基本的に自動発動型は身に着けているだけでOK。

任意発動型は腕や指、口等に装備して使用する意思を持って相手に向けて使う。

故に任意型の魔法具を密かに使うのは難しい。

指にはめるタイプの物が何とか注意されて無ければ使える程度だ。

しかしその魔法具経由の魔法物質の流れが僕には全くない。

そりゃ使ってないのだから当然なのだ。

すなわちルヴェールさんには僕の異常な魔法使用を完全に見せる結果となった。

余計な事をされてかなりゲンナリな状況だ。


 ちなみに、念の為に《簒奪の聖眼》を使った詐欺術スキルの取得は16%の難易度に負け、取得不可能だった。

……人を騙して得をしようと思った訳では無いです!

《ウィンドウ》関係ではどうしても嘘をついてしまっている訳なので……あったら良いかなと……。


 余計な邪魔が入ったがクリムゾンベアの処理を再開する。

ルヴェールさんは四人を逃げられないように縛って木に括り付けてから応援を呼んだようだ。


 探している魔法具の大きさはそれなりに大きい。

縦横共に五cm程度の八角形に近い金属で出来た台座、そこに魔力の籠った宝石がはめられており、チェーン状の長い金属が四十cm位ある首飾りだ。

切り裂いた食道から胃に至る部位には固い物は無い。

続けて腸を全部引きずり出して一ヶ所に集めた。

密かに肝臓と胆嚢だけは回収して《アイテム》へ入れた。薬としてかなり高価な素材らしいのだ。

ルヴァールさんは何か魔法具を使用して腸の集積場所で確認作業を行う。

僕は離れてクリムゾンベアの解体を再開すると、すぐにルヴェールさんが寄ってきた。


「この魔法具は短い範囲内の魔力を感知する魔法が付与されているの。腸の中には無かったから、一応体の中も全体的に探すわ」


そういって死体の端から順番に全体を調べていく。

邪魔にならない様に牙や爪を解体していると一匹目の確認が終わった。

ガッカリした感じで二匹目の確認に入ったルヴェールさんを見送って僕は皮を剥いでいく。

肉は諦めるが、皮が崩れた肉で汚れるのは後の処理が面倒になるから遠慮したい。

黙々と作業を続ける僕の後ろでルヴェールさんの溜息が聞こえた。

どうやら無かったようだ。


 皮が全て剥ぎ終えた頃に応援の職員の人が到着した。

捕えられた四人はそのまま連行される事になるのだが、嬉しい事にクリムゾンベア素材はギルドへ運んでくれる事になった。

元々、倒したら持っていく予定だったので問題ないとの事。

この人数の前で《アイテム》を使用出来ないからどうしようかと思っていました。


 昨日から計三匹居た事もあり、絶対にもう居ないとは言えなくなった為、クリムゾンベアの探索は継続させるようだ。

居ない可能性も高い為、居なかった場合は日当を出す方向で報酬が約束されたらしい。

魔法具について事情を知っている僕は、職員達と共に退治した近辺を探索する事になった。

この近くに全部居た事を考えると巣としていた何かがあるか、無かった場合でもこの辺りで排泄物等に含まれている状況も考えられる。

ちなみにこの探索は僕にとってとても有益だった。


スキル:追跡術 スキル:森林探索 スキル:悪路移動 を得たのだ(聖眼熟練度は割愛)。


 最終的に一時間程の探索の末、とんでもない所から発見された……。

僕達が戦闘した際に、五m程の高さから飛び降りた奴が居た事を思い出してその木も調べた所、高さ十mを超える場所の枝に引っかけられて居た。

故意なのかどうかはわからないが、とても迷惑な奴だ。

こうして僕はようやくこの件から解放される……なんて甘い事は無かった。


思いっきり《ショートカット》で無詠唱魔法見せておいて、何も聞かずに放置なんてしてくれませんよね……。

ちなみに無詠唱魔法は勇者様の専用スキルだそうです。


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