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代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第一章
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10、クエスト終了

 シャドウウルフロードの討伐に成功した。

後は弱体化していると思われる雑魚の確認をした所、すでに動く事は無かった。

どうやらロードに渡していた力が戻らないと意識が戻らないようだ。


 今回の依頼内容は問題の解決なので、シャドウウルフの討伐部位自体は必要では無い。

依頼一覧では見た記憶の無い魔物であった為に証明部位が不明ではあったが、特徴的な牙を確保する方向となった。

ロードは切断した頭自体を持ち帰る事にした、理由は死んでも牙に発生した闇の光が消えずにいたためだ。

牙を回収する為に直接触る事は流石に危険があるかもしれないので躊躇われた。

その他で回収したのは皮だけだ。

骨等も何かに使える可能性はあるが持てる荷物の量的に厳しいとの判断である。


 確認の為、洞窟の中を確認しておいたが獲物となった動物の残骸が残されている以外は何もなかった。

ちなみに帰りがけに一応必要素材を取り終えた死体もこっそり《アイテム》に回収しておいた。

肉体崩壊を起こしてほぼ骨となっていたが錬金術でも使えるかもしれないから姉さんの役に立つかもしれないしね。




 ◇ ◇ ◇




 村へ戻り、早速村長さんへ報告する。


「と、言う訳でこれがそのシャドウウルフの牙とその親玉の頭です」


そういってライルさんは肉が崩れ落ちて骨だけになった頭部を差し出す。

その牙は時間がたっても闇の光が無くならずに、見る者を不安な気持ちにさせる存在感を放っている。


「こんなにすぐに解決するとは思っても居ませんでした。有難うございます」


「いえ、こちらも仕事ですのでお気になさらず」


村長から感謝の言葉を頂き、ライルさんがその後の相談を始めた。

恐らく群れで動くであろうシャドウウルフはロードの討伐が出来ている時点で解決していると思われる。

狩りをしていたロードと拠点を潰したので残党がいる可能性も低いだろう。

後は他の原因が存在するのかの確認となるが、村長もライルさん達も無いと予想している。

理由は村への移動時に会ったブラックハンターの存在だ。

危険度で言えば、このパーティクラスの冒険者ならばそこまで脅威とならないだけで、村人や単独の狩人程度では熊に遭遇する以上に危険な相手だ。

そんなブラックハンターが自分の縄張りを捨ててまで逃げる状況では、他の原因となる存在がいてもシャドウウルフに餌にされてしまうからだ。


 一応の確認の為に今日と明日の二日様子を見て、何事も無かったら終了という事になった。

元々その程度は解決にかかると考えていたので問題は無く、体を休めながらゆっくり待っていてくれとの事だった。

他の三人はこの後も多少見回りを兼ねて村の中を時折見て回るらしいが、MPをかなり使っている僕はそのまま休憩にしていいと言われた。


 お言葉に甘えて僕は離れに戻りすぐに寝転がる。

MP減少はあるものの、それ程眠くは無いので休憩しながら出来る事をやる事にした。

そんな僕に、今回の見回りからは外れて一緒に離れに戻っていたカルナさんが静かに話しかけてきた。


「随分珍しいスキルを持っているのね。あの詠唱無しでの魔法とかは特にすごい物だと思うのだけど?」


 う……やはり気づかれていたか……。


「それに、ルークって魔法の事を色々聞いてきたのがそんなに前じゃないのに、もう《エアシールド》を使っていたわよね? あれって初歩の《エアダガー》を安定して使える様にならないと難しい魔法なのよね」


にっこり笑われて問い詰められています……。


「と、まぁ疑問は沢山あるのだけどね。流石にそのおかげで助かった身としてはあまり無理に聞き出す訳にもいかないわね」


「すみません……」


「相手の名前や使ったスキルを知る事が出来る時点で驚きだったけど、今回のは更に驚きだったわ。それも生まれつきなの?」


この内容なら大丈夫かな、という感じで質問を続けるカルナさん。


「はい、正確にはそれらがひとまとめになったスキルという感じなのですが、あまり人には知られない方が良いというのが今の所の判断なのです。ですから本当は人前で使う気はなかったのですが……」


「使わなければ、どう考えても私がやられていたから使ってくれたと」


「……はい」


「だよねぇ。あれはどう考えても相当危険そうな攻撃だったものねぇ」


そういって静かに目を閉じたカルナさんは少しの沈黙の後に、


「あの魔法の不自然さに私以外は恐らく気が付いてないわ。だから、もう私達だけと一緒に居る時は隠さなくてもいいと思う。

そして、私としてはお互いが同じ街に居るうちは、一緒のパーティーを組む事を希望するわ。もう秘密は知ってしまっている私と一緒の方が気を使わないで済むと思うしね」


「今回は補充人員として入れて貰っている以上、今後ともっていうのは人数的にお邪魔になるのでは?」


「問題ないわよ。私達の場合、後衛メンバーが私しか居ない兼ね合いで前三人の四人構成だけど、ルークなら魔法も弓も使えるし色々な役割を担当できるから皆反対しないと思うわ」


 魔法の熟練度を上げる為にはパーティで実戦多くを積んだ方が良いのは間違いない。

《ショートカット》を使わないスキルなら他のパーティーに参加させて貰っても変わりはないが、魔法に関してはこの提案は魅力的と言える。


「わかりました。もし、他の皆さんの賛同を得られるようなら当面お世話になりたいと思います」


「私としては、本当は当面と言わずにずっとでもいいのだけどね」


「本来一緒に冒険者としてやっていくはずだった、姉さんの今後の状況次第なので今はなんとも言えないんですよね」


「わかったわ。とりあえずは一緒という方向で皆に提案する事にするわ」


「お願いします」


 こうして僕は見回りから帰ってきた二人の賛同も得て、今回居ないもう一人のメンバーの返答次第でこのパーティーに暫くお世話になる事になった。




 ◇ ◇ ◇




 結局その後、何事も無く仕事は終了した。

村長にクエストの完了証明にサインを貰い、街へ向かって移動を始める。

帰り道は何事も無く順調だった。


 街に戻ってすぐにクエスト完了の報告を済ませて、シャドウウルフの素材とロードの頭骨と皮がギルドでの買い取り素材なのかを確認した。

シャドウウルフの牙や皮は意外と高く売れた。

闇属性が強い魔物素材からは闇耐性のある装備や消耗品が作れるため、シャドウウルフの様な闇に特化した魔物素材は貴重なのだそうだ。

そして、ロードの牙は更に相当高い金額で売れた。

《魂の回廊》で強化されたロードは、仲間の力を牙に貯めこむらしい。

この牙は恐ろしく凝縮された闇の結晶と化している為に、闇耐性を持っていない相手に対して相当な威力を発揮する武器の素材になる。

同様に耐闇属性用の装飾品としても有効らしい。

通常、属性付与を行う場合は属性魔法とエンチャントスキルで付与するのだが、闇属性は使い手が居ない為にこの様な素材自体の属性でしか得られない。


「なんか、思った以上にいい稼ぎになったな!」


「ボスの素材があんなに高く売れるとは思わなかったわね」


ゾックさんとカルナさんが浮かれた表情で笑いあう。


「俺達はこのままいつも泊っている宿に戻ってレラと合流するけど、お前はどうする?」


ライルさんが僕に問いかける。

レラさんは今回参加出来なかった本来のメンバーの人だ。


「僕は姉さんに戻った報告をしないといけないのでこのままそちらへ向かいます」


「そうか、それじゃお前の事をレラに確認しておくから、明日また会うって事でいいか?」


「はい、いつもの通りだとライルさん達の場合は今晩結構飲むと思いますので、明日お昼すぎ位に皆さんの宿の方に行きますね」


「わかった。それじゃ明日な。おつかれさん」


 こうして皆に挨拶してこの日は別れた。




 ◇ ◇ ◇





 姉さんが居る錬金術工房に着いた僕が裏口から入っていくと姉さんは薬の調合中だった。

クレリアさんも一緒に真剣な顔をしながら話をしていたので軽く帰ってきた挨拶だけして部屋へ上がった。

そのままベッドに横になったらそのまま意識が遠のいた。

思っていたより疲労が溜まっていたようだ。


 どの位経ったのかはわからないが、寝た時はまだ明るかった外がすでに暗くなった時間に姉さんがやってきた。

ベッドに軽く座った体勢で僕の頭に手を乗せる。


「………………ッッッ!!」


姉さんが突然硬直して声にならない呻き声をあげる。

僕の方は何故か急激な脱力感を感じた。

姉さんの方を見ると目線が色々な方向へ彷徨っている。

しかしその視線には力があり、何かを見ている様にも感じた。


 突然立ち上がり、僕の目を見つめながら足を肩幅に広げて手を腰に当てながらこう言い放った。


「フハハハハハハッ! ワタシハ、ツイニチカラヲ、テニイレタゾ!!」


…………………………姉さん、完全にそれは悪役の台詞です………………。


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