11、《魂の回廊》
姉さんが突然訳のわからない事を言い出したので確認する事になったが、正直かなりの衝撃的な事件だった。
「ルーク、今回の仕事で《魂の回廊》ってスキルを手に入れた?」
「うん、今回のボスが持っていたスキルだね。なんでわかったの」
「そのスキルのお陰ね。『ワタシハ、ツイニチカラヲ、テニイレタゾ!!』って訳よ!」
「うん…………意味が分からないから!」
「鈍いわねぇ! 私も《ウィンドウ》を手に入れたっていっているのよ!」
……はい、驚愕の事実が来ました……。
この驚愕の事実に対する姉さんの予想は二つ。
双子であり、ずっと一緒に育ち、同じ目的の為に行動してきた僕達に《魂の回廊》が発動する条件が存在していた。
もう一つが、本来姉さんの持っていた能力が僕に流れ込んでいるだけなので、《魂の回廊》により道が発生した事で、元の持ち主にも戻ったと言うものだ。
「まぁ、どっちでも良いし、どうでもいいわ。ポイントは私にも使える様になったって事よ!」
そう言って、肩幅に開いた両足、くの字に曲げて腰に当てた左手、真上に掲げられた右手、斜め上を見つめる瞳で晴れやかに宣言した。
「もうルークだけに苦労はさせないわ! 私もすぐに一人前の魔法使いになって見せる!」
◇ ◇ ◇
翌日僕は昼過ぎにライルさん達の宿に向かった。
やはりかなり飲んでいたらしく男性二人はダウンしたままらしい。
カルナさんとレラさんから、これから暫くは一緒に行動する事で合意した事を告げられた。
ただし、故郷のあるカルナさんとレラさんは親族が住む村へ冬になる前に食糧等を届けに行くらしいので最低でも十日程は待って欲しいとの事だった。
◇ ◇ ◇
姉さんの一人前宣言が宣誓されてから二日が経った。
結果は、
「やっぱすぐは無理ゴメン。地道に頑張るわ」
だった。
まず僕達の状況を整理しよう。
僕達の《ウィンドウ》は共通のものだった。
お互いが持っているスキルは全て合わさって持っていたし、聖眼獲得値や《アイテム》の中身も共通だ。
違うのは、実際に今まで得た熟練度が個別になっている。
要は、僕が一度もやった事が無い錬金術スキルの熟練度は、0(0/1)が現状であった。
そして姉さんが即諦めた理由は、クレリアさんの錬金術スキルはもちろんの事、各種変換魔法を使ったのを見て獲得したのだが、納得がいく結果が得られなかったらしい。
「変換魔法自体は使えるんだけど、どうも全部の魔法は使えないみたいなのよ。その上、威力調節なんかも出来ない自由度が低い感じなのよね」
どうもこの辺りは《ウィンドウ》の処理自体の問題だと姉さんは予想した。
《ショートカット》が確率を無視して決められた結果を自動成功させる様に、故意に別要素を割り込ませない限り変換魔法も決められた威力や範囲を自動決定するらしい。
姉さんがすでに得た錬金術の知識を駆使した変換魔法を使った場合は色々応用がきいた。
すなわち錬金術の知識が今度は問題になったのだ。
錬金術も微量な調整で効果に幅を持たせるのだが、《ウィンドウ》での使用は画一的な効果にしかならない。
様々な変化をする事が特徴と言える変換魔法が、《ウィンドウ》では自然魔法の単純強化程度の効果にしかならなかった。
「まぁ、どっちにしても冬の間はそれ程慌てて動くこともないし、しっかりと錬金術の勉強しとくわ」
結論。
いままで通り。
以上。
ちなみに、《魂の回廊》をオフにしているとスキルを獲得しても共有化されなかった。
何故それがわかったかと言うと、ウルフロードに力を渡していた狼の意識が戻らなかった事を話したら、スキルの効果がはっきりしないうちは危険があるかもしれないからと常時オフにする事にしたからだ。
《ウィンドウ》の効果として面白い発見もあった。
《コンフィグ》というものが、通称《裏ウィンドウ》の中にある。
この中に《終了》というものがあった。
これを押すといつもの《ウィンドウ》が消えて、角が丸くなった四角い箱の中に文字が書いてある物がいくつか現れる。
姉さんは、私の『スマホ』の画面そのまんまと言っている。
この中にあった《通話》を押すと以前は何も無かったが今は『エル』の文字がある。
これを押す事で姉さんと離れていても話せるようになったのだ。
声に出さなくても会話できるが、代わりに考えた事がそのまま相手に聞こえる危険な会話だ!
僕は大抵思った事をそのまま、声に出して突っ込んでいるから隠すような事はないけどね。
ちなみに、《通話》と同じ様に存在する《紅の剣》を押すといつもの画面に戻るようだ。
◇ ◇ ◇
パーティーが再集合するまでの間、僕は一度村へ帰る事にした。
一人でやっていた時の稼ぎでもそれなりにやっていけていたが、今回のシャドウウルフやロードの素材でかなりの収益が得られた。
その上、実は密かに回収してきたシャドウウルフの骨が、牙同様高値で売れる事がわかった。
武器にするには若干使い道が限られるが、クレリアさんが魔法薬の素材に使いたいからと骨を買い取ってくれた。
とりあえず一頭分を売ったがそれでもかなりの金額になった。
《アイテム》の事はカルナさんにすら教えていないので分配金として渡すのは無理だったので、半分を自分用に、半分をパーティーで必要になった場合用に別保管にした。
小麦や日持ちする食材等、かなりの量を購入して《アイテム》へ入れる。
姉さんにも帰るかを聞いたが、今は錬金術と変換魔法の修行で忙しいからパスと言われた。
こうして僕は一人、久しぶりに村へ帰った。
◇ ◇ ◇
何事も無く村へ着いた僕を、家族は暖かく迎えてくれた。
収穫を終えた結果としては、思ったほど収穫量は悪くなかったらしい。
どこの家庭も余程の事が無い限りは飢える事は無い程度には収穫できたとの事。
僕は街へ向かってからの事を色々と話した。
姉さんが錬金術や魔法を学ぶ為に弟子入りして今回は来なかった事を伝えると、危険な事をしてない事にとりあえずは安心していた。
生活に困らない稼ぎを得られている事を伝え、とりあえず現金も多少渡す。
流石に今日は移動で疲れたから今回の目的のメインは明日にしようと早めに寝る事にした。
姉さんの発案で、今回の目的となる一番重要な確認事項があった。
他の家族に《魂の回廊》による《ウィンドウ》の発現が無いかの確認である。
これが上手くいった場合、とても有効な事が期待できる。
《アイテム》の共有による物資の輸送と《通話》による遠隔地からの会話だ。
オフにしてあった《魂の回廊》を有効にして、家族に触る。
順番に触った結果、一人だけだが反応があった!
しかし、どうもおかしな感じがするのは姉さんの時ほどの脱力感は感じ無かったからだ。
反応のあった人物は不思議そうな顔で目だけを右に向けていた。
何かを言うために口を開けそうになったが僕がすぐにちょっと来てと外へ連れ出した。
「目の前に何か見えるよね? 母さん」
僕は連れ出した母さんへ向けて質問をした。
「ルークはこの変な物が何か知っているのね?」
やはり母さんには《ウィンドウ》が見えているようだ。
母さんと話した結果、おかしな感じの理由がわかった。
どうやら完全な形の《ウィンドウ》は見えて居ないらしい。
見えているのは時間、右ウィンドウ、ウィンドウ縮小ボタンだけだ。
最低あると嬉しかった機能である右の二つがあったのは運が良かった。
もしかしたら、有効だと考えていた物が優先されたのかもしれないと思ったが、答えは出ないので考えるのを止めた。
「母さん、それは便利な魔法みたいな物だから、今から使い方を教えるよ」
こうして僕達は《アイテム》から食糧やお金を受け渡せる手段を得た。




