プロローグ
前作「消えたシンデレラ~婚約破棄に至る顛末とその結果~」を先にお読みいただくと、より楽しめると思われます。
サフィーア・ベラルディンは、リダレス帝国の皇帝の娘。第五妃の娘、九番目の姫として生まれた。
後宮の中で皇妃とその子供達と共に暮らす日々。嫁いで行くその日まで、蝶よ花よと磨かれて育つ生活だ。
それが当然の事で、運命。出来るだけ好みの相手に嫁げれば幸せだが、決定権を持つ父皇帝の意向は分からない。親子と言えど、帝国の太陽たる父皇帝には会う事も話す事もままならないのだ。
小さな頃は物語の王子様に憧れた。とっても素敵な恋をして、愛されるお姫様になるのだ、と。とっても素敵な恋、がどんなものかも知らないけれど。
キラキラと輝く金髪、海のような青い目の美しい王子様。優しくて、強くて、頭が良くて――と、物語ならではの完璧な王子様。
数多いる兄皇子や弟皇子を見るにつけ、それは物語の中だけだと悟った。
まあ自分達皇女も似たり寄ったりのものある。
ところが金髪青目の美形の王子は、実は身近に居たりする。
9年前に隣国ヴェンブルグ王国が敗戦の折に人質として差し出して来た、ミューゼウス・ヴェンブルク第二王子。
8歳になったばかりの不憫な王子は、リダレス帝国では珍しい色彩を持った少年だった。
同じく8歳の夢見る少女であったサフィーアは、物語から出て来たような美しいその王子に――一瞬で恋に落ちたりはしなかった。
だって当時の彼は冷たくて哀しい目をした、昏い少年だったから。




