【アストラルに休日はありません①】
この物語はフィクションであり、実在する人物などとは関係がありません。
ミリアは最後の行の文章を読み終えると、パタンと本を閉じた。今日は魔法学校がお休みの日なので、ミリアはゆっくりと趣味を楽しんでいた。
まずは、マグカップからほわほわと湯気が立ち上る淹れたてのミルクココアを一口。
ホッとする温かさとほんのり甘いミルク味が喉を通して心を穏やかにしてくれる。
そして、四角形でピンク色がアクセントの市松模様のクッキーをお皿から手に取る。バニラ味とイチゴ味のクッキーだ。
ミリアはパクッとクッキーを口に入れる。
プレーン味のナチュラルな甘さに加えて、イチゴの酸っぱさが追いついてくる。カリカリとしたクッキーを咀嚼するごとに、甘いと酸っぱいが交互に来る。
それからもう一度ミルクココアを飲む。
ミリアの顔が綻んでいく。甘い物は素晴らしい。食べても飲んでも美味しいなんて。
ミリアはクッキーのお皿とココアのマグカップを空にしてから本を手に取り、ベッドでリラックスしながら読み始める。
「今日はなんだか平和に過ごせそうかも~」
そう言いながらミリアは本を読み進めていく。
「あ~面白かったなぁ。この猫ちゃんが旅をする物語がハートフルで、お気に入りなんだよね~」
ミリアは読み始めて数分後、何度も読み返している本の表紙を撫でながら余韻に浸る。
「さて、次は何を読もっかな~」
そう言いながらミリアはベッドから立ち上がり、自分の部屋にある木製の本棚の前に立つ。
カタンと音を立てて今読んでいた本を戻し、次に読む本を選定する。
「ミステリアスなのがいいかな~?それとも恋愛小説…?それか、あえての─────」
「キャーーーーーッ!」
「キャー?」
『あえてのキャー』などというタイトルの本なんて持っていたかな…?それってホラー系…?
ミリアは一瞬腕を組んで思考を巡らせたが、すぐに頭を左右に振る。本のタイトルなんかじゃない。今のは間違いなく女性の悲鳴だった。
それに気づいてミリアはすぐさまベッドに飛び乗り、閉め切っていたカーテンをチラリと開けて外の世界を覗く。
「キャーー!」以外にも、「うわぁーーっ!」や「助けてーー!」という悲鳴が聞こえてくる。
それもそのはず、そこに広がる世界はさっきまで晴れていたはずなのに、差す陽の光が全くなく、暗く分厚い雲が空を覆っていた。街の道に歩いている人は一人も居なく、居るとすれば恐怖感を表情や仕草に表しながら走り逃げる人たちだけだった。
ミリアはカーテンと窓を開けた。何度も経験した嫌悪感を抱く空気がミリアの髪を揺らし、頬に当たって通り過ぎて行く。
「また来る───────魔物が」
ミリアはベッドを降りて部屋の机に本の栞を置き、さっきまでのハートフルな気持ちを切り替え、相棒になりつつある長い杖を出す。同時にフワッと長いローブと、魔法学校上級クラスを示す赤いリボンが背中と胸元にそれぞれ姿を現す。
ミリアは窓枠の上に片手を、下に片足を乗せてジャンプと同時に杖に乗り、渦を巻く雲の中心地に向かう。
飛んでいる際に耳に入る風の音は、ただ単に高速で飛んでいるからという訳では無さそうな、ゴォーゴォーという嫌な風の音だった。
ミリアは中心地付近に着くと杖を降り、空中で様子を伺う。
もう街の道には誰も居なく、建物内で不安げな顔で空を見上げる人たちしか居ない。それだけ魔物は恐ろしい生き物なのだ。その恐怖感は魔法が使えない人たちにとっては、なおさらだろう。
「ミリアちゃーん!」
「ミリアさん」
「ミリア!」
「ミリアっち~!」
自分の名前が呼ばれ、ふとミリアは声がした方に振り返る。そこにはいつものメンバーが居た。リリー、ジル、ハル、ルークの四人もこの事態に気づき、長いローブを纏い杖に乗ってこちらに向かって来ていた。やがて四人も杖を降り、空中に立つ。
「来るわね、魔物が」
「えぇ、リリーさん。どうやらそのようですね」
「え~っ、せっかく今日は魔法学校お休みの日なんだよ~?」
「ジル、魔物は休みの日でも関係なく現れるものだよ。でも、休みの日でも仕事を全うするアストラルはカッコイイと思わないかい?この街を守っているんだよ。小さい子たちからはヒーローなんて言われたりしているんだ」
「ヒーロー?何それ超ーーーカッコイイじゃ~ん♡あたし、戦うーっ♡」
『さ、さすがハルさん…ジルさんのやる気スイッチを理解している…』
ミリアは呆れと驚きが混じったなんとも言えない感覚になる。素直…という事なのだろうか…?まぁ、今はそういう事にしておこう。
そんな話をしている間にも渦は形を変え、毒々しい紫色の魔法陣を展開した。
アストラルのみんなは表情を引き締める。
〖作品を読んでいただいた方、少しでも覗いてくださった方へ〗
読んでいただき、ありがとうございました。
小説を書くことに慣れていないため、拙い部分もあったと思います。
ですが、少しでもこの作品を読んで良かったと感じていただけたら幸いです。




