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うっかりしていた。携帯端末を、教室のロッカーに入れっ放しにしてしまっていたらしい。


気が付いたのは今朝。忘れてきたのは二日前。二日前に終業式があったのでそのときにおいてきたのだと思う。


って言うか何でロッカーに入れたんだろう?最近の自分自身の考え方がよく分からない。


そんな訳で現在私鉄に乗っている。真昼なので客があんまり居ない。


シートに降り注ぐ夏の日差しを浴びている内に、眠気が襲って来た。それに抗う事が出来ず、意識を手放した。

















■


夕陽。

携帯端末。

通話。

keep out。

屋上。

重力。

クロロフィル。

アセドアルデヒド。

アシドーシス。

アポトーシス。
















>回帰<
















あれ?


変な夢を見ていた。


かなり長い間寝ていたのか、いつの間にか列車が終点に到着したらしい。乗った駅から二十三駅も過ぎていた。目的の駅は四駅目なので十九駅も乗り過ごしたと言う事だ。


プラットホームに降り立って向かいの乗り口で反対方向の列車を待つ。


ホームの屋根があるのにも拘らず、太陽光線が容赦無く躯に照射される。


視野狭窄。狭心発作。

散瞳。昏睡。


ノンレム睡眠中にこんな症状が出てくるようになった。


最初は五年前だった。それ以来習慣的になってしまった。


専門医でも原因が分からなかった。教授に相談してみても、無意味だった。


どうしようもないが危険なので、無理矢理不眠症にした。


この症状が治らないと三年前に自覚した。その時は自殺しようかとも思ったが、両親が止めてしまった。


思い起こすと傍迷惑な話だ。


最近は症状が露骨に成って来てしまい、まともに眠れない。


以前は症状が現れても眠ることが出来たが、近頃は発作にたたき起こされる。居眠りだけでも時々こんな事になるのだから気が滅入る。


二年前辺りからミオコールスプレーが手放せなくなってしまった。しかも、消費量が半端無い。携帯すると持ちが悪くなるのも困る。


こんな生き地獄みたいな生活を虐げる両親が、酷く自己満足の塊に見えてしまい、遂に一年前に殺してしまった。それを目撃した姉貴も殺した。


更に悪いことに、親戚一同も殺してしまった。


いや、流石に一人じゃ親戚を皆殺しには出来ないから人頼みだけど。


あの時はもう錯乱状態にあった気がする。もう罪悪感も感じないくらいに必死だったのかもしれない。殺す必要は無いにしても。


因みに現在義従兄妹が三人程居るが、どうやら二番目は似た様な経験をしていたらしい。多分、自分勝手な都合じゃないんだろうけど。理性も有って、冷静に殺して居たんだろうけれど。賢い子だから。


『間も無く、二番線に電車が参ります。白線の内側まで下がってお待ち下さい。』


そんなアナウンスが意識を現実に引き戻した。随分長く考え込んでいた様だ。やはり、それだけ疲れているのだろう。



扉が開いた。


車内に入った。


瞬間。


体感重力がおかしくなった。


心臓が締め付けられる。


「あっ!?が・・・・っ!!」


視界が狭まり、世界の色彩がモノトーンになる。


うそだろっ・・・?!今は起きてるぞ・・・!?


「・・・・・・!!!」


ポケットからスプレーを取り出したが、手に力が入らない。


拙い。黒色が強くなってきた。もう太陽が眩しくない。


人間は痛みが一定量超えると、ショック死を防ぐ為に痛みを感じなくさせる機能が有るって確か一番目の義従姉が言っていたのに、全く痛みが止まらない。もしかして未だ限界量じゃ無いのか?


だから早く死んでおきたかったのに!


あのクソ夫婦!止めやがって!


ああ、でも一番目の義従姉が悲しむな。未だ死ねないかも・・・。


考えが右往左往して、視界の色が大分濃い灰色になって来た辺りで、前で何かが動いた。


人影の様に見えるのできっと人間だ。髪の長さ的に女性だろう。流石に服までは特定出来ない。


その影は手に持っていたスプレーを取り出し、保護キャップを外して言った。


「口を開けて息を止めて」


あ。聴覚は生きてるみたいだ。指示に従い、口を開けて息を止めた。


スプレーを噴射され、苦痛に耐えること一、二分。心臓の痛みが治まった。


次は眼だ。きっと散瞳もしている。


ポケットから素早く点眼薬を取り出して、垂らした。


視野が回復し、世界に色が戻る。


「・・・」


深呼吸をして神経を落ち着かせる。


「大丈夫ですか?」


大分落ち着き電車の扉が閉まった辺りで、目の前の女性が話し掛けてきた。


「はい。有難う御座います」

「ふふ。如何致しまして」


微笑みながらスプレーを渡して来たので受け取った。その微笑みが、結構魅力的だった。



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