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莠の凪  作者: 藤泉都理
21/27

のこのこのこ




 拝啓 中井恵様。


 まずは、謝罪をさせてください。

 あなたの歌声を勝手に録画して、勝手に機械開発に使いました。

 了承を得てからすべき事だったのですが、私にその勇気がなかったのです。

 誠に申し訳ありませんでした。

 そしてもう一つ。

 死ぬ時は一緒だと、あなたは言いましたが、やはり、その言葉に応じる事はできません。

 誠に申し訳ありません。


 あなたが気絶している間に、おばあさんに聞きました。

 あなたの家に行く前に、すでにニイサの身体の中に入っていたおばあさんは、ニイサと二人で探して、七星天道虫も捕獲してから、あなたの家に行ったそうです。

 ニイサというのは、ボディが液体金属のアンドロイドで、おばあさんに擬態して、おばあさんをボディの中に入れて守っていたそうです。

 ニイサは本当は七星天道虫とあなたたちを抹殺する指令を受けて、未来から現在にタイムトラベルしてきた刺客だったそうですが、未来で聴かされたあなたの歌声に聴き惚れて、過去に来る前に指令を全うするのを止めようと決意していたです。

 やはり、あなたの歌声は特別だったようです。

 流石は、私に雷を打たせただけはあります。


 ニイサはあなたの歌声を直に聴いて、あなたに擬態して、未来に戻って、七星天道虫とあなたたちの抹殺の指令を出したボス(【はぐさ】)に聴かせて、リラックスさせている間に、【ゆらららぎ】を装備しようと考えていたそうですが、あなたの歌声を直に聴いて、自分では実力不足だと悟ったそうです。

 なので、


 あなたがこの手紙を読んでいる時、私はあなたの傍に居ません。

 誠に申し訳ありません。

 私は、私のできる事を全うします。

 もしかしたら二度と会えないかもしれません。

 けれどもしももう一度、この現在において、会える事ができるのなら。

 常識の範囲内で、何かを奢らせてください。

 

                                   敬具



















「いやこれ未来に行ったやつが現在に残ったやつに残す手紙でしょうが。違うでしょうが。あなた、未来に行ってないでしょうが」


 中井恵は苛立った。

 とてもとても苛立った。

 ニイサのとてもいい声で開基からの手紙を読んでもらっても苛立ちは生まれてしまった。




 未来にて。


「よし行くぞ。過去の中井恵。現在の中井恵」


 電気屋のおっちゃん、もとい、現在の開基から【ゆらららぎ】を受け取ったニイサは、自分の身体に取り込んだ中井恵とおばあさん(現在の中井恵)に話しかけた。

 いや私はもうここで待っている。

 中井恵とおばあさん(現在の中井恵)は同時に言ったが、ニイサはすげなく却下だと言うや、露わになっていた二人の顔を立体映像で覆って見えなくしては、駆け走った。

 ボスの元へと。











(2024.6.24)




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