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莠の凪  作者: 藤泉都理
20/27

無言のままだ




「あ。その前に」


 二つ顔があるおばあさんの下の顔のおばあさんが軽やかに言ったかと思えば、よいこらしょっと、おばあさんの身体からおばあさんが抜け出そうとしたが。


「え?あの。ニイサさん。私、そろそろ外に出たいのですが」


 微動だにできなかったおばあさんは上の顔のおばあさんに、ニイサさんと呼びかけそう願い出たのだが、ニイサ(上の顔のおばあさん)はダメだと言った。


「おまえはまだ狙われている。俺の身体から抜け出す事は却下する」

「え?じゃあ、私はずっとあなたの身体の中に居なければならないのですか?」

「ずっとではない。七星天道虫、過去のおまえの抜け落ちた髪の毛。もう材料は揃っている。この材料を持って未来に戻り、電気屋に渡して【ゆらららぎ】を作ってもらい、俺たちのボスに【ゆらららぎ】を装備してリラックスしてもらい、おまえと過去のおまえ、七星天道虫の抹殺の取消の指令が出たら、俺から出してやる」

「それは、どのくらい時間がかかるのですか?」

「うまくいけば数時間で終わる。うまくいかなければ、数年かかるだろう」

「うまくいかせましょう。数年もこのままなんて嫌です」

「俺とてごめんだ」

「では。話がまとまったところで。ごめんなさいね。このままで話すわ」

「はい。どうぞ」


 開基は答えた。

 中井恵は無言のままだ。


「あらあら。気絶しちゃったのね。情けないわ」

「俺が代わりに聴くので大丈夫っす」

「ええ、そうねえ。ニイサさん。過去の私を無理やり起こさなくていいのかしら?」

「ああ。もう、目的は果たした。十分だ」


 ニイサ(上の顔のおばあさん)は、冷徹な表情に仄かな熱を加えた微笑を中井恵に向けたのであった。











(2024.6.24)




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