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一人、途中無事ではなかったけれど、無事に帰宅

BGM: エイジア 2nd アルバムから "The Smile Has Left Your Eyes"

ロンドヒルスの街からのったりとチャリを転がしてお城まで戻って来た。


「あっ、貴女は! ヤスコ殿、ギデア様が心配なさっていましたよ」

「あ、ヤン、おこんばんは。うん、ちょっと不慮の事故があってね、すぐに報告に行くよ」

「どうぞどうぞ、中へ。道案内しましょう」

「うん、有難う。なんだかお城も久しぶりで、道に迷いそうだから助かるよ」

「そりゃ、敵に攻められてお殿様の部屋まで一直線じゃ困りますからね」


暫く歩いて。


「一体これまでどうしていたのだ!?」

「ちょっと油断していたら、運悪く顔に矢を受けてしまってね、えへへ」

「えっ!?」

ざわ……

 ざわ……

「その少し前に宿場で行き会った請負人の人達が居たんだけどさ、彼らが討伐した山賊の塒にあたしが死んだまま転がってたみたいで、この特徴的な防具のお蔭で見分けがついて、ハートゥーンの神殿で生き返らせてくれたんだよ。有難いねえ~」


ギデア様が大層心配してくれたが、シコーキにはもっと心配された。


「貴女ねえ……、油断しすぎよっ! 貴女の世界とは違うのだから、もう少し気をつけるべきところでは気を引き締めなさい!」

「うん、叱ってくれてありがとう、そういうところも大好きだよ、もう少しでシコーキにも二度と会えなくなるところだったね」

「のほほんとしてないで、本当に、もうっ……」



それから、今日は家に急いで帰るから、また六日後か九日後くらいに来るねと約束して、鍛冶場に連れて行って貰った。


「おっさーん、遅くなったけど、もう出来てるかなー?」

「ん? おう、お前さんか。ああ、あの大剣な、出来てるぞ当然。何か月経ったと思ってる」

「色々あってさ。さ~て、どんな感じかなぁ?」


いい感じに作り直されていた。

まるで別の剣だ。

鮫剣のような長巻とは違う、本当に大剣で、反り返っている。


「簡単な鞘も付けておいたからな。金かけるなと言われたから、最低限の機能しかない粗末な代物だが、とにかく鞘だ」

「有難う! ど~れ、ちょっと隅っこで試し振りを」

「あっちで」

「はい」


鞘のベルトで背中に斜めに背負って歩く。身体の線に合うような仕上がりではないから揺れるが、仕方ない。鞘としては機能していて安心できる。

左肩越しに柄を握り、鞘を担ぎ上げる感じで、大きな刃をスライドさせて身体の前へ引き抜く。

あー、やっぱり長すぎるな、引き抜くには鞘を下ろさないと無理だ……、と判って、鞘に突き戻し、鞘をちゃんと下ろしてからもう一度大剣をちゃんと引っこ抜く。

肩に担いで、反り返ってるから自然と刃の向きが上を向くから、握りやすくて助かる。

ふんっ。


ぶんっ


袈裟に素振りをすると、やはり重すぎるから、回転して切っ先を床につけないように引き上げて、また担ぎ直す。

何度か回転すると、大体の感じは掴めた。


「おっちゃん、有難うね。さすがの仕上がり、使いやすいよ」

「当然だ。褒めたって何も出ないぞ」


感謝して、ここでは金は払わなくていいので、帰ることにする。

仕上げてもらった大剣は、大剣二本持ち帰るのが面倒くさかったので、シコーキの部屋に置かせてもらうことにした。

「甘えちゃって悪いね」

「良いの、良いの。でも、あたしが居ない時は取り出せないから、そこは我慢してね」

「そりゃ、当然」


--


そして空中通廊の下まで草原を歩いて来たのだが、灌木に結び付けてあった細紐が風を受けているうちに枝にこんがらがっちゃってて、外すのが面倒くさかった。

それだけでなく、下ろしたハーネスの汚れはともかく、まだ脆弱なトラロープだったのが、そろそろ取り替えようと思っていた矢先に予想外に長く風雨に晒されてたもんで、上がろうとして両手で引っ張ったらプツンプツンとほつれだして、ヤバかった。

帰ったら、ちゃんと新しいロープに買い換えないと。

(´・ω・`) 今回、大赤字……


--


自転車と鮫剣も引っ張り上げて、久しぶりに暗闇行路。

ゆっくりチャリを転がす。


そうそう、この感じだよ。

この通路はこうでなくちゃ。

やっぱり怖くてナンボだよな。

緊張感、必要だよね。


なんだかやっと戻って来た感じがして、怖い場所なのに、怖さ以外に、意外と安心感すらある。

あちこち確認したいけれど、今は色々荷を失ってしまってるので、まずは帰宅を最優先。

補給しないと。


--


そして出かける前に長くなるとは言ったけど、ちょっと長く空けすぎた為に、さすがに心配させてしまっていて、こちらでも叱られた。


甥の健太郎が訊いてくる。

「ヤッちゃん、海外にでも行ってたの?」

「うん、そう、国の外までちょっと。秀司、秀ちゃんはまだ学校?」

「強化講習受けてるよ。ヤッちゃんと同じとこ行くんだとさ」

「あらっ、じゃあ後輩になるのね……」


姪の美和が肩に乗っかって来て

「お土産ーっ」

「ごめんね、今回は無いの。ちょっと死ぬほど大変で、余裕無かったの」


エプロン姿の姉が台所から、

「やっちゃん、何処まで行ったの? そんな急に帰りが延期しなくちゃならないような目に遭うなんて」

「ちょっとね。いい場所だったんだけど、あたしが気を緩めすぎてて、それでちょっとね」

「やあね、また男の人絡み? それとも女の人? 貴女もねえ、少しは懲りた方がいいわよ?」

「違うわよ、そっちじゃなくてねえ……」

「怪我はしなかった?」

「ああー……うん、しました」

「もうっ! 本当に……。保険は効いたの?」

「保険というか、現地で親しくなった人が払ってくれたから、これからちょっと頑張って返しに行かなくちゃいけないの」

「えっ、国際送金じゃ駄目なの?」

「ちょっとね、現地通貨が特殊でね、日本からは払いが効かないから、もう一度行って来ます」

「怪我するような場所なんでしょ、だいじょぶ?」

「あ、違うのよ、場所柄というよりかは、あたしの油断だったから今回は。交通事故みたいなものよ」

「え、交通事故じゃあないの?」

「似たようなものかしら? 運転中だったし」

「え? それって交通事故じゃないの?」

「ぶつかり事故ではあったわね」


反撥係数ゼロで完全非弾性衝突しちゃったよ。入射物体が標的核を破砕したんで核のみならず小宇宙(ミクロコスモス)再構成(リビルド)が必要になってしまった。


「ふうん……本当に、気をつけてよ?」

「はい」

「疲れたでしょ。それじゃ、お風呂入っちゃいなさい」

「はあい」

「あ、あと保険ちゃんと効くか、電話しときなさいよ」

「はあ~い」


でも、「あのぉ、蘇生して貰ったんですけど、神殿で」って、保険は無理だと思うなあ。







サブタイの元ネタなんて解る訳ないだろうし、知りたいと思う人も居まいと思うけれども、一応。

少年少女世界文学全集の『十五少年漂流記』の【 全員無事帰国 】から。

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