3-16 獣人の姉妹
遅れましたすみません。
主にア○キエイジが面白過ぎるのが原因です。
「待ってください。お願い、タリスを殺さないで」
そういって俺たちがいる場所――闘技場の中心まで駆け寄ってくるタリア。
そこまで来たタリアは地面に抑えつけられたタリスと目線を合わせるためにしゃがんだ。そして、目深にかぶったフードを上げる。
瓜二つだった。
タリスの顔は、少し目つきがきついながらも、タリアと瓜二つ。まるで、双子のような――。
その顔が、今は驚愕で彩られていた。
「今....タリアって....」
かすれた声が、タリスの喉から何とかひねりだされる。
「タリス....」
目に涙をためた二人は、互いに見つめあい――ぎゅっと、強く抱擁を交わした。
今まで離れていた分を、埋め合わせるように。
「お姉ちゃん、奴隷になったんじゃあ....」
「あの人たちに、助けてもらったの。さっきも、牢屋のカギを外して貰って」
そう言ったタリアの目線の先には、義賊の男たちが壁にもたれかかって立っていた。
こちらの目線に気が付くと、親指を立てて、にやりと笑って見せた。うわ、すごいかっこいい。というかピッキングしたのか。そんな技術持った人が捕まってたなんて、思いもよらなかっただろうな、アラディンも。
「そんなことより、タリスこそ、なんでこんなことをしていたの?」
「だって....お姉ちゃんを買ったって言った奴がいるんだよ。その....お姉ちゃんに変なことをされたくなかったら、手伝えって。それで今回は、そこのやつのところを手伝って....」
その後も、タリスの話を聞いた。要するに、奴隷になって離れ離れになってしまった姉のタリアを見つけ出すために、王都の裏社会で数人のグループを作り、便利屋....まあ簡単に言えば暗殺でもなんでもやりますよな闇社会の始末屋のようなことをしていたらしい。
で、王都の裏社会での生活も板についてきて、裏社会ではそこそこ有名になってきたところに、「姉のタリアを買った、エロ漫画みたいなことをされたくなかったら命令を聞け」(意訳)という人物が現れたそうだ。
その組織の指示に従い、いろいろなことを組織の人間としてきたらしい。要人暗殺からわけのわからないキノコ集めまでやらされたそうだ。
「たぶん、あの組織はあたしの能力を使いたかったんだろうな」
「能力って....この結界か?」
「そうだ。あたしは霊力を消費して結界を作れる。規模や種類にもよるけど、相当な霊力を消費するんだ。霊力は組織がかき集めてきたやつの一部を使ってた」
霊力を消費して結界を張る、か。なるほど、あのリッチがいた廃城はタリスが従わされてた組織のものだったのか。
とはいえ、かき集めるという表現から、霊力を集める装置が一つではなく、各地にあることがわかる。しかも、タリスの結界に使う霊力はその一部だという。残ったその霊力を一体、何に使うっていうんだ....?わからないけど、考えてもしょうがないような気もする。今はまだ情報が少ないしな。その組織が一体どういったものかもわかっていない。
「ん~、それにしても、魔法を使えなくする結界か。敵に回すと厄介だけど、仲間になったらこれほど頼りになる仲間もいないな」
ユウがタリスに言うが、
「悪いな、結界は霊力が大量にないと作れないんだ。....悔しいけど、あの組織じゃないと、あたしを使いこなすのは無理だろうな」
「そうなのか....。まあでも、あいつらが結界を使えなくなったのは大きいな!」
「いや、あいつらあたしの能力を解析して、多少使えるようになってる。専用の機械がいるし、あたしよりも効率は悪いがな」
ユウがうなだれた。
まあ、そりゃそうか。ユウ、魔法が使えないと役立たずだもんな。雨に濡れると役立たずになる例の大佐と同じ感じで。まあそれでも、魔法が効かないってだけの相手なら何とか戦いようもあるみたいだけど。さすがに今回みたいに完全に使えないとなると、厳しいのか。
「あ、それ、私解除できますよ」
....え?
そういったのは、タリスの実の姉であるタリア。
できるの?解除とか。あ、でも姉だったらできるのかな。関係ないか。
「私たちは、二人で一つの能力なんです。タリスが結界を張って、それを私が解除し、霊力に還元する。もちろんロスは出ますが、私たちがそろってこその能力なんです」
そうなのか....。でもそうなると、この二人絶対に只者ではないな。なんでそんな尋常じゃない能力を持っているのか。そもそも二人はどこからきて、どういった種族なのか。問い詰めたい気もする。
「なるほど、そうだったのか。それで、二人はこれからどうするんだ?」
そんな俺の気持ちを置いて、ユウがこの話を多少強引に終わらせる。
そりゃあそうだ、俺だってそうしただろう。だって、自分の能力の話をするタリアの表情が、少し歪んで見えたから。何か、つらいことがあったのだろう。
なら、好奇心に任せて聞くことはない。自分から話すのを待つだけだ。
「ん~そうですね、また孤児賊に帰りたいところですけど....」
「それは駄目だ、お姉ちゃん。あたしがいたら迷惑になる。やつらがいつまた襲ってくるかわからない」
どうでもいいけど、タリアのことお姉ちゃんって言うのな。それ以外のしゃべり方はなんか、男らしいというか、サバサバした感じなのに。むしろ俺のほうが女子力――いや、何も言うまい。俺とタリスの精神衛生的に。
「――だよね。私はタリスと一緒にいたいし....。そういうわけなので、私たちは組織から逃げながら、何とかして生き延びたいと思います」
その言葉からは、重い覚悟が見て取れた。タリアには、タリスを見捨てて自分だけ生き延びるという選択肢はないみたいだな。まあ、当然か。タリスと再開するためだけに、危ない場所で頑張ってきたんだから。せっかく再開できたのに見捨てるなんてことはないだろう。
たとえその選択が、この後の人生を大きく揺るがすとしても。
だとするならば、俺にできることはほんのわずかしかない。
「あの、ユウさん。タリアたちを連れていくことって、できませんか?」
質問という形ではあるが、俺はユウが承諾してくれると信じていた。ユウのやさしさに頼るような手で、少し卑劣なような気もするけど。....いや、ユウは俺が言わなくても、タリアたちを連れて行ったのかもしれない。
「もちろん、言われなくてもそうするつもりだ。タリアたちは、どうする?」
「でも、ご迷惑じゃあ....」
「大丈夫だよ、二人くらい増えても何ともない」
それを聞いたタリアとタリスは、目に大粒の涙をためて――再び、強く抱き合った。




