第十五話:雛の晴れ舞台 終
雛の晴れ舞台篇ラストです、かなりぐだぐだですが、どうぞっ
あれからも会場に笑いが尽きる事はなく楽しい時間は終わりを迎える。
演劇が終わった後、仁達は体育館前で舞台後の雛を待っていた。
「皆、ちゃんと見てくれた? 」
少し待って雛が長い髪を風に靡かせて体育館から飛び出してくる。
その顔は達成感や安堵感で満たされていた。
「雛ねぇ、かっこよかったよ」
向かってくる雛に勢い良く抱きつくと、上目遣いでそう言う夢。
突然、抱きついてきた夢に一瞬よろけそうになるが直ぐに立て直して頭を撫でてやる。
「そんな、かっこいい役は演じてなかったんだけどな・・・でも、ありがと」
夢は雛に撫でられ、雛の胸の中で幸福感に浸っていた。
続いて霞が口を開ける。
「雛本当に凄かったぞ。流石我が妹だ、私に良く似て何でもできるな」
「本当、姉さんに似なくて良かった」
心から笑って口を挟む仁。
「ん? 何か言った? 」
「いえ、何でも」
そんな二人を見ながら雛は笑って、「霞姉さん、ありがとう」と言った。
「ホントっ面白かったっ!! 雛は本当凄いよ~」
そう言って笑いながら雛の頭をくしゃくしゃと撫でる雪。
「姉さん、くすぐったいよぉ」
「本当、雛の家族は仲がいいなぁ」
「そうね、別に私は興味ないけどねっ」
そう言いながら現れたのは、先程母親役と妹役を熱演していた高木と瀬野であった。
ショートカットでいかにも活発そうな印象を与える方が高木である。
逆に腰まで長い髪を垂らし少々、キツイ印象を与えるほうが瀬野だ。
「あ、民に未来どうしたの? 」
「いや、楽しそうな声が聞こえてきたと思って来てみたら、これはこれは仁さんたちではないかぁ」
そう言うのは高木である。
「何だ、高木か」
「何だとは何ですか? それと私のことは気軽にみんみんと呼んでくださいと言ったじゃないですかぁ。この恥ずかしがりやさん~」
「餃子? 」
「違いますよっ。誰が宇都宮の名物ですかっ!! 」
「そうなの? 」
「ま、もうそれは後回しにして私の演技どうでしたか、もうフェロモンプンプンでしたでしょ」
「あぁ、プンプンすぎてちょっと臭ったぞ」
「もうっ、何でそんな意地悪ばっかするんですか!? 」
「民、これは仁の照れ隠しだ」
今まで黙っていた霞がボソッと口を挟む。先程の反撃だろうか。
「えっ、本当ですかぁ? 仁さん私のこと好きなんですかぁ? どうしよっかなぁ、でも仁さんなら優しくしてくれそうだしなぁ」
「違うっ、勝手に暴走するなっ!! 」
「仁、顔が赤いよぉ」
雪も笑いながら応戦する。
「どこがっ!? ってか、お前もふざけるなっ!! 」
「兄さん、民は優しくていい子だよっ」
雛もニッコリ笑顔で。
「雛もふざけないのっ!! 」
「ホントッ、なに妹の友達見てにやけてんの、気持ち悪い。こっち見ないで 」
「いや、にやけてねーし、相変わらずお前、口悪いなっ!! 」
いきなり口を挟んできて否応なく暴言を吐き捨てる瀬野。
「未来、焼きもちやいてるぅ~、あはは~」
そんな瀬野に高木は突然、後ろから抱きついた。
「ちょっ、何やってるの民っ!? それにくすぐったいからやめなさいよっ」
「ホレホレェ~、ちゃんと本心を言いなさいよ~」
そう言いながら瀬野の脇をくすぐる高木の顔は変態オヤジそのものであった。
「はぁ...何やってんだお前ら? 」
そんな二人に呆れたような眼差しを送る仁。
「ちょっ、こっち見るなぁぁぁぁ」
相当くすぐったいようで瀬野は涙目で叫ぶ。
「ま、瀬野。お前の演技も良かったぞ」
「え...ってどんなタイミングよっ!! それと、民そろそろ離しなさいってばっ!! 」
「駄目だよ未来、褒められたらちゃんとお礼を言わないと」
「うぅ...ぁりがとぅ」
消え入るような声でそう言った瀬野は顔を赤らめて仁から視線を逸らしてしまう。
「聞こえないよ、未来」
そんな瀬野を面白がるように高木が笑いながら追い討ちをかける。
瀬野は一瞬、うぅ、と唸ると、
「・・・ありがとうっ!! これでいいんでしょ、離してよ」
そう仁に大声で叫んだ。
「よくできました、えらいね」
ようやく高木の魔の手に開放された瀬野。高木の顔には満面の笑みが浮かんでいた。
ちなみに七海家はそんな二人を見てずっと笑っていた。
そう言えば雛にまだ劇の感想を述べていないことを思い出した仁は雛を見て微笑み、
「雛、すごくよかったぞ」
と、本心からの言葉を口にする。
それを聞くと少し頬を赤らめながら雛は更に笑顔を上乗せして、
「ありがとう」
と、弾んだ声で言った。それを見て仁も自然と顔が緩んだのが分かった。
そうしていると不意に後ろから声を掛けられる。
「あなたが仁さんですか」
「ん? そうだけど」
そこにいたのは主人公のダイキを演じていた噂のイケメンこと谷島その人であった。
「僕は谷島 翔太と申します。以後、お見知り置きを」
「あぁ、俺は七海 仁だ」
あまりにも丁寧な挨拶に仁は困惑しながらも何とか返事を返す。
「それでは」
と、それだけ言うと谷島は最後に仁を睨んでからそこから離れていってしまった。
「翔太のやつ、勝手に仁さんをライバル視しちゃったなあ」
「え、まじ? 」
「何々? 」
良く分からないといった表情を浮かべる雛を尻目に、仁が谷島にライバル視されて終わる。




