第十三話:雛の晴れ舞台 続
「え、今なんて? 」
《だから、迷ったって言ってるでしょっ!! 》
「...やっぱり」
《やっぱりって何? やっぱりって? 》
「こっちの話だ。で、今何処だよ? 」
《えっとね・・・分かんない》
「あ、まあ、そうだよね。一応、ここ君の母校なんだけどな」
《そんな大昔のことなんて覚えてないわよっ!! 》
少し切れ気味で受話器越しに叫んでくる雪。
「二年前の話だっ!! 」
仁もちょっといらっとしたので同じ調子で返してやる。
《二年前は大昔っ!! 》
「ちげーよっ!! てか、こんな不毛な言い争いしてる暇はねえだろうが」
《あ、そうだね》
受話器越しにまるでやる気がないかのような平淡な声が聞こえた。
「何その他人事のような応答は。もういんだな、切るぞ」
《えっ、待って駄目っ!! 》
「嘘だよ。取りあえずそこに今何が見えるか言ってくれ。迎えにいってやるから」
《えっとね、太陽が見えるね》
「オッケィ、てことは日陰ではないんだな・・・って馬鹿かっ!! 」
《ナイスノリツッコミっ!!》
「言ってる場合かっ!! 」
《っていうのは冗談で・・・えっと、たこ焼きの屋台が5軒並んでるのが見えるね》
「うおっ、すげぇ激戦区っ!! 」
てか、もっとバラけさせろよと思いながら仁は言葉を紡ぐ。
「ちょっと、待ってろ今確認してやる」
そう言って仁は今朝ここに来たときに貰ったパンフレットを開いた。
そこの地図で探していると、ここから少し行ったところにある本校舎の前にたこ焼き屋の文字がズラッと並んでいるのを発見した。
うわ、本当にあったわ・・・と小さく心の中で感嘆しながら雪に言う。
「じゃあ、今から行くから。そこで待ってろよ」
《うん》
雪の少し嬉しそうな声音を聞いてから、仁は霞達に「ちょっと行ってくる」と、声をかけて体育館を飛び出した。
「お、どうしたんだ? もうすぐ、はじまるぞ」
「仁にぃ、がんばってね」
背後から二人の声が聞こえた。この分だと霞姉さんは状況を全く理解できていないな、と心の中で苦笑した。
―
体育館を飛び出すとその場所には直ぐに辿り着けた。
そこにはパンフレットに書いてある通りにたこ焼きの屋台が5軒隣り合わせで並んでいた。
それらのたこ焼きは繁盛しているらしく、大なり小なり行列ができていた。一軒を除いて。
って、中学生の作るたこ焼きなんてそんな大差ねえんだからあっちにも並んでやれよ。
と、心の中で周りの人々に怒鳴ってから、雪の姿を探す。
が、どこにも見当たらない。
「おいっ雪、お前俺が見えるか? 」
少し息を切らしながら、仁は受話器越しの雪に話しかける。
《うーん、見えない》
暢気な声が帰ってきた。
「お前、今どこだよ? 」
《えっとね~トイレの前》
ここにトイレ何かあったか、そう思いつつ仁はパンフレットを見る。
だが、このあたりにトイレは見受けられない。
ここから一番トイレでも少し距離がある。
「なあ、動いてないよな」
仁が鋭い声音で問いかけると、受話器越しに、うっ、と一回息を漏らしてから言葉が返ってこない。
「どうなんだ? 」
さらに低い声で問う。
《我慢は健康に悪いんだぞっ!! 》
「開き直るなっ馬鹿っ!! 」
そんなこんなで仁はもう一回走らされる。
―
意外と疲れた。
全速力で走ってきたのと、以外と距離があったからだろうか。
息は切れ、心臓はバクバク言っている。
仁は中腰になりながら、あたりを見渡す。
女子トイレには少ないながらも行列ができていて、その中に雪がいるのかなと思った。
しかし、どれだけ目を凝らしても雪らしき人物はいなかった。
ていうか、一人の女性に睨まれた。それもすごい形相で。
「雪、来てやったぞ。どこにいるんだ? 」
《ん、あ、仁、ごめーん》
受話器越しに雪の上機嫌な声が聞こえる。
この時点で嫌な予感がしていた。
だが、仁はそれを声色に出さず雪に尋ねた。
「ん? どうして謝るんだ? 」
雪の次の言葉にそれは確信へと変わった。
《トイレで夢に会って今、体育館だから。ごめんね、わざわざ探しに来てくれたのに》
「・・・そうか」
そう言い残して、仁は電話を切った。
全くの無表情で。
その後、仁は雪にどんな罵声を浴びせようか考えながら一人虚しく体育館に帰ったそうですよ。
そんなこんなで、続いて




