第十二話:雛の晴れ舞台
こんな題名ですが、雛の登場はもう少し後となります、ご了承下さい。
後、ちょっと短いです。
今日は日曜日。
空には雲一つ見受けられず、文字通りお出かけ日和だ。
その日、仁は霞、雪、夢の三人と日並中学校に来ていた。
日並中学校とは雛が現在通っている中学校であり仁、霞、雪三人の母校でもある。
地元の公立中学校なのでこのままだと後三年後にも夢もこの中学校に通うことになるだろう。
その中学校に何故この四人が来ているかというと、今日は日並祭当日だからである。
日並祭とはこの中学校特有の行事で文化祭とは違うもなのだが、まあ似たようなものだと思ってくれればいいだろう。
その日並祭で七海家の三女である雛は演劇の発表をするのだ。
そのために仁達は日並祭に足を運んでいた。
母親も愛する我が娘の晴れ姿をすごく見たがっていたのだが、どうしても外せない仕事があるために来れなかったのである。
そういうことで、仁は母親にビデオカメラ係を任命されたのであった。
そのため、演劇は昼からなのだが、仁達は少しでも言い席を取るために朝早くから日並祭に来ていた。
校門を潜るとまだ朝早いというのにかなりの人数がこの日並祭に足を運んでいた。
美味しそうな匂いを醸し出す屋台が校舎の前にズラッと並んでいて、人々の足も自然とそちらに運ばれていく。
だが、仁の目的地はそこではない。
「じゃ、俺は席取りに行って来るから、姉さん達はそこらへんで遊んどいて」
「おぉ悪いな」
「よっしっ、どんどん遊ぼうっ」
「仁にぃがんばってね」
「おう、それじゃ待ち合わせは一時に体育館な」
「おうっ!! 」「うんっ!! 」「はいっ!! 」
仁は嬉しそうに屋台に向う三人の背中を見送って、体育館に向った。
―
現在の時刻は待ち合わせの1時ちょうど。
開演まで後15分ということもあって体育館の中にはもう人で溢れかえっていた。
仁は缶コーヒーを飲みながらゆっくりしていた。
朝早くだったことが効して仁は最前列という願ってもない席をキープすることができたのだ。
缶コーヒーをもう一口飲んでいると、ちょうど霞と夢が入り口に入ってくるのを見つけたので手を振ってここだと合図を送ってやる。
幸い夢がすぐに気づいてくれたようでにっこり笑って手を振り返し、霞を連れてここまでやってきた。
「仁にぃ、凄い。一番前だよ」
「さすが、我が弟」
「ま、これぐらいお安い御用だよ」
仁は軽口を叩くと、そういえば雪が一緒ではことに気づく。
「それより、雪は? 」
「あれ、まだ来てないのか? 」
「一緒だったんじゃないの? 」
「いや、あいつ勝手にさっさと行くもんだからほっといた」
「・・・そうか」
その姿はいとも簡単に想像できる。それもかなり鮮明に。
「あいつのことだから、迷子にでもなってんじゃないの」
「流石にあいつも高校生だからそれはないだろう」
「仁にぃ、雪ねぇを馬鹿にしすぎるのはよくないよっ!! 」
そうか、この二人は知らないのか。それじゃあ、雪の尊厳の為に黙っておこう。
と、密かに優しさを見せる仁であった。
「そうだよな、いくらなんでも自分の母校でそりゃないわな」
「でも、もう後10分しかないな」
「ま、いくら食べ物に目が眩んだからって自分の妹の晴れ姿見るのをすっぽかすやつじゃねえって」
霞は仁の隣の席にズカッと座ると、そう言った。
雪も霞につられて、そっと霞の横に座る。
姉妹でえらい違いだなと思った仁だが、自らの保身の為に黙っておこう。
と、密かにへたれを見せる仁であった。
ふと自らのポケットから携帯の振動が伝わってくるのを感じる。
仁は慌ててそのポケットから携帯を取り出すと、
ディスプレイに雪の名前が出ていたので仁は訝しげに電話に出る。
「どうした雪? もうすぐ始まるぞ」
「・・た」
「は? 」
「・・・迷った」
「よく聞こえなかったもう一回」
迷ったと聞こえたが、聞き間違いだろう。そう思いながら仁は聞き返した。
「・・・迷った!! 」
だが、帰ってきた答えはやはりそれであった。
そんなこんなで・・・続くっ




