三十七 イキオイで終わった話
王都に行った時から、あーしのネイル人生が花開いたんだよね。
レオナイル様は、嫌な予想が当たっただけだった、って言うけど。
王妃様と王女様に、ネイルをめっちゃ気に入ってもらえてさ。
「我らにネイルを施すために、ここに留まることを許します」って。
でも怖いのがこれ、許しますって言いながら命令なんだって。
レオナイル様はこの時、ひたいに青筋立ててた。
「此度は軍事利用の報告に上がったまで。辺境を守るため、王宮に留め置くことは出来かねる」
これ、めっちゃ圧かけてたかんね。王妃様相手に。
「レオナイル……。変わりませんね。まぁ、良いでしょう。しかし必ず、ネイルの技術を普及させると約束なさい」
「……御意に」
なんてやり取りとかしてさ。ハラハラしちゃったよね。
だからあーしも必死で、施術の方法を他の人でも出来るように改良したり、レオナイル様が分析して新しくネイル魔法理論を確立してくれたりで、なんとかなった。
レオナイル様のネイル魔法は、補助魔法の付与が出来ないけど、ネイルを施すだけなら出来る。それでも人は選ぶみたいだけど、それなりに出来る人が増えてきたお陰でどうにか王都住まいは回避できた、って話。
王都は華やかだけど、近くに森とかの自然がなくって。あーしは、レオナイル様が治める領地が気に入ってたみたい。
すんごい忙しかったから、王都は忙しいって印象になっちゃったなぁ。
――あれからもう、七年かぁ。
あーしも成長して、竜になった時の大きさはミリィに負けないくらいになったんだ。
前世の、二階建ての家くらい?
がおー! って吼えるのも様になってるんだよ。あーしってば、まじイカつい。
でもさ、絶対に見た目じゃオスメス分かんないよ。あでも、ニオイで分かるかもしんない。
オスの竜はちょっと、男くさいっていうか。メスはほとんど匂いがないと思う。汗とかかかないし、魔力で体温調節するからどうのこうの……って、レオナイル様が言ってた。
じゃあオスは普通におっさん臭なのかな?
ちょっとイヤなんだけど。レオナイル様のことだし。
人化した姿はね、超絶美人さんになった。おっぱいも大きくなったし。
自分で言うのもアレだけど、これはもう自分で言ってもしょうがないくらいに美人。街を歩いたら三度見くらいされる。
……それはウソだけど。だって街のみんな、あーしがレオナイル様んとこの娘だって知ってるから。ミリィもいつも一緒だから、目立ってるしね。
ミリィは変わらずに真っ白な妖精みたい。作法も覚えさせられたから、静か~にしてるともう、どこのご令嬢かってくらい。誰彼かまわずに睨んだり暴言吐いたりしなくなったしね。
正直、ミリィの方が貴族に馴染んでる。でも、怒ると引くくらい怖いから、王都でも有名人になってる。アレを怒らせたら、雷を落とされるぞって。
「……ミリィ。普通に魔物の能力使ってない? 大丈夫?」
「私がそんな目立つことをするわけないでしょう?」
「いや……最初から目立ってんのよ。この無自覚美人」
「人間の美醜感など知るものですか」
睨みグセも無くなって、せっかく話し方までキレイになったのにさ、ダメなのよこいつ。
根本的なとこでズレてんの。
雷の魔法とか、人間は使えないらしいから。まじでバレないようにしてほしい。
ちなみに、ユリーシアは結婚した。
レオナイル様のことは諦めたんだって言ってた。王都の貴族と結婚したから、最初は離ればなれになっちゃったんだけど、実は三年前にレオナイル領の近くに越して来たんだよね。
だから、会いたい時はわりとすぐに会える。これほんとに、跳び上がるくらい嬉しかった。
ま、実際にピョンピョン跳ねてたっけ。
あーしと会いたいからってのは、一回も言ってくれないけど。絶対あーしのために頑張ってくれたんだと思う。
だってお茶会しよって言ってくるの、ユリーシアの方が多いし。
『二日後、お菓子を持って伺おうと思います』
って手紙が、毎週届いたら笑うよね。嬉しくってさ。
「ねぇ、あーしに会うためにこっちに領地もらってくれたの?」
「違いますわよ。国の防衛力を高めるためですから」
「えー? でもあーしは嬉しいけど?」
「ま、まぁ、エルフィオラが寂しがってはいないか、気にはしていますけど」
そうやって誤魔化すけど、耳が真っ赤っかなんだよね。カワイイ。
どうやって王都から出てきたかっていうと、王都でいっぱい功績を立てたから。その褒美にって、こっちの方に領地をもらって今も開拓中。
レオナイル様もたくさん出資とか、整備の手配とかいろいろ手伝ってくれてるみたい。
いいとこあるじゃんね。大人げないとこがあるのはそのままだけど。
いっつも……いや、時々かな。すごいなって思う。
マリアンはまだ一緒に居てくれてる。
相変わらず美魔女のまま。もしかしてエルフとか、そういうのかもしんない。他に見たことないけど。あ、普通に魔女って線もあるか。
怖くて聞けないんだけどね。
街におつかいに出たら、メイド服だし男の人は寄ってくるけど……マリアンは男に興味ないのかも。レオナイル様とそういう仲なのかな~って、定期的に疑ってたんだけどそうでもないし。
何年か前に、酔っぱらってるマリアンが、「私はカワイイ子が好きなのぉ」って言ってたから、恋愛とかは頭にない人なのかも。
「エルフィオラちゃん。今日は一緒にお風呂入りましょうね」
「え、もう子どもじゃないしヤだけど」
「だめ。ちゃんと洗えてるか、隅々までチェックしますからね~」
「それ毎回言うけど! 洗えてるよね?」
「貴族の娘は、メイドに洗ってもらう習わしなんです~」
っていつも押し切られるんだけど、なんか逆らえないんだよね。
あーしのこと猫可愛がりするのも変わんなくて、もしかしてターゲットされてた?
でも、大切にお世話してくれるだけだし、あーしもマリアンのこと大好き。
――で。
レオナイル様のことなんだけど。
相変わらず不器用だし不愛想だし、ほんと、憎ったらしいのは変わらないし、まさかって感じだけど……。
なんか、成人の時にお酒飲んでもいいってなって、ちょっと飲んだらさ。
本音が漏れちゃったっていうか。
まぁ、頼りになる人だし、大切にしてくれてるのは、分かるつもりだし……。
体も大人になったから、気持ちも大人になった気がするし。
ネイルで色々と手助けできるようになって、一人前とは言わないけど、それなりに成長したと思ってさ。
ていうか、なんとなく自分でも意識してるかもな~? くらいは思ってたのよ。
他の騎士さんたちとは違って、大人の男の人って感じだし。
ひと際かっこよく見える時が、ちょいちょいあったっていうか。
夜の談話室で、マリアンとあーしと、ミリィも居たけど旦那様と、四人で飲んでてさ。
これって、つい三ヶ月前なんだけど。
あーしは成人祝いで、ちょっと調子に乗って飲み過ぎた。
初めて飲んだお酒、レオナイル様のとっておきらしくてびっくりするくらい美味でさ。舌の上でとろけるっていうか、甘みもあって飲みやすくて。
……その時は、なんか舞い上がってたんだよね。
後ろから、マリアンがイケイケ~って小声で押してきたりして。
つまり、告ったわけ。
一世一代のさ、告白なワケよ。
まぁ、本気で好きかって聞かれたら、たぶん……て感じではあったけど。
でもちゃんと好きだった。
「大人になったし、好きだから付き合って」
って告った。
じゃあさぁ、レオナイル様、何て言ったと思う?
それまで機嫌良さそうにお酒のグラス傾けてたくせにさ、急に真顔になったの。
あれ、なんでそんな顔すんの? って思うじゃん。
で、いつもみたいに眉根をちょっと寄せたりしてさ。
あー、なんかちょっと、ヤバいな~とは思ったんだけど。
「は? お前は成人しただけでガキのままだろう」
って冷たく言ったの。
――泣くよね。
一瞬さ、頭の中真っ白になって、ぽかーん、てしてた。
そのあとはもう、ぼろぼろ涙出てきてさ。
あの悔しさはまじで忘れない。
ミリィはレオナイル様に舌打ちして出ていって、マリアンは「最低」って吐き捨てて、あーしのこと抱き寄せてくれて、部屋に連れてってくれて一晩添い寝してくれた。
……だからさ、あーしは思ったんだよね。
もっと強くなって、力で示してやろうと!
黒竜だし、いつかは勝てるっしょ?
ママ竜は何て言うか分かんないけど、たま~に顔見せてくれるから、こんど会ったら相談してみる。
勝負して、あーしが勝ったら付き合ってもらうのどう思う? って。
たぶん、おやりなさいって言うと思う。
あの人は何千年も黒竜してるからか、ぶっ飛んでるし……。
あでも、レオナイル様だけじゃなくて、他にイイヒトが現れるかもしんないしね。
とにかく見返してやるんだ。
後悔しても遅いからね――。
……ていう感じの日記を、もう何回も書いてる。
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どうぞよろしくお願い致します。 作者: 稲山 裕
「なぜか皆から愛されて大公爵の養女になった話~内向的だけどそれなりに楽しく過ごしています?~『オロレアの民 ~その古代種は奇跡を持つ~』」
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