第55話 会議初日終了、リーフェル村側は署名せず帰る
森術学術会議の終盤、会議場には疲労が沈んでいた。
それは、ただ長く座っていたからではない。
言葉のひとつひとつを確かめ、記録し、曖昧な部分を拾い、危ない流れを止めてきた疲れだった。
剣を振ったわけではない。
魔物と戦ったわけでもない。
けれど、俺の肩はひどく重かった。
シルフィも、さっきから木札に何度も触れている。
マルタさんの薬草茶を飲んだ後は少し顔色が戻ったが、それでも疲れているのは明らかだった。
クラウディアさんは姿勢を崩していない。
マリナさんも羽ペンを持つ手は安定している。
でも、二人とも目の奥には強い集中の色が残っていた。
会議とは、こんなに体力を使うものなのか。
勇者パーティーにいた頃、俺は王都の会議や交渉を遠いものだと思っていた。
剣や魔法を使う人たちが偉くて、俺のような支援役は後ろで荷物を整えていればいい。
そんなふうに思っていた。
でも、違う。
言葉を扱う人たちも戦っている。
ただし、傷が見えにくい。
だから余計に危ない。
「では、本日の確認事項を整理しましょう」
セラド法務官が言った。
彼の声は相変わらず滑らかだった。
だが、最初の頃より少しだけ硬さが混じっている。
思い通りに進まなかったからだろう。
シルフィの過去記録をそのまま資料として扱おうとした流れは止まった。
俺の善意に訴えて、その場で協力の言葉を引き出そうとした流れも止まった。
リュシアさんがリーフェン家側で異議を唱えたことで、会議の空気はさらに変わった。
表向きは穏やか。
けれど、水面下では、こちらが一歩踏みとどまるたびに相手の道が一つ塞がっていった。
セラドは円卓に三枚の羊皮紙を並べた。
「第一に、シルフィ殿の過去記録について。今後提示する場合は、本人確認を行い、当時の家内評価であることを明記し、現在のリーフェル村側記録を併記する」
マリナさんが記録する。
シルフィも、自分の記録板へ同じ内容を書きつけた。
指は少し震えていたが、字は崩れていない。
「第二に、魔力回路損傷症例について。個人特定情報を伏せた概要資料を後日作成し、王国騎士団および冒険者ギルドを通じてリーフェル村へ送付する。資料受領は、研究協力または治療協力への同意を意味しない」
「その文言は必ず入れてください」
クラウディアさんが言った。
「当然です」
セラドは答えた。
当然。
その言葉が、少しだけ薄く聞こえた。
最初から当然だったわけではない。
こちらが何度も確認して、記録して、ようやく当然になったのだ。
「第三に、森術と付与術の相互作用について。本日は再現手順、実演、詳細な術式開示は行わない。後日必要があれば、改めて文書で協議する」
俺は、懐の四角に触れながら頷いた。
ここまで来た。
まだ何も署名していない。
俺は何も約束していない。
シルフィも、検査を受けていない。
世界樹の場所も話していない。
それだけで、もう十分に疲れるほどのことだった。
エルドランが静かに口を開いた。
「本日の意見交換は、有意義でした」
その言葉は、穏やかだった。
だが、本音は違うかもしれない。
それでも会議場では、その言葉で進めるしかない。
「リーフェル村側の慎重な姿勢は理解しました。リーフェン家としても、今後は双方の信頼を積み上げる形を望みます」
信頼。
大きな言葉だ。
俺は、その言葉だけで頷かないようにした。
信頼は、言葉で言われたから生まれるものではない。
今日、何度も思い知った。
セラドが最後の羊皮紙を取り出した。
「そこで、本日の会議結果を踏まえ、今後の継続的な情報共有のため、簡単な覚書を用意しました」
その瞬間、マリナさんの羽ペンが止まった。
クラウディアさんの目が鋭くなる。
シルフィも、ぴくりと指を止めた。
マルタさんは椅子の背から体を起こした。
俺は、無意識にバツの木片を握っていた。
覚書。
署名。
出た。
セラドは、その反応を見て薄く笑った。
「ご安心ください。これは署名を強制するものではありません。あくまで今後の連絡経路と資料共有方法を確認するための草案です」
「草案でも、その場で署名しない条件です」
クラウディアさんが即座に言った。
声は冷静。
しかし、迷いがない。
「もちろんです。署名は求めません。内容をお持ち帰りいただき、後日ご検討いただければ」
セラドは羊皮紙を机の中央へ置いた。
その題名は、こうだった。
『森術および付与術に関する継続的知見共有覚書案』
案。
その一文字がある。
だが、油断はできない。
シルフィが羊皮紙を見つめる。
俺は、彼女が読み始める前に小声で言った。
「四角」
「はい」
シルフィは小さく頷いた。
マリナさんが記録した。
「リーフェル村側、覚書案について即時判断せず、持ち帰り検討の姿勢」
セラドの眉が、ほんの少し動いた。
こういう記録があるだけで、こちらの足場になる。
シルフィが覚書案を読み上げる。
「リーフェン家、リーフェル村、王国騎士団、冒険者ギルドの四者間で、森術および付与術に関する知見共有を行う……」
彼女は一文ずつ止めながら読む。
「資料共有は、相互の合意に基づく……症例資料の取り扱いは秘匿……今後必要に応じて追加会議を開催……」
ここまでは問題なさそうに見える。
だが、次の一文でシルフィが止まった。
「リーフェル村側は、可能な範囲で付与術的見解を提供する……」
俺も眉をひそめた。
可能な範囲。
便利な言葉だ。
広すぎる。
シルフィも同じことを考えたらしい。
「この『可能な範囲』は、こちらが判断するものですか。それともリーフェン家側の要請に応じて判断するものですか」
セラドが答える。
「当然、双方協議の上です」
「文面では曖昧です」
シルフィは言った。
「リーフェル村側が提供可能と判断した範囲に限る、と明記してください」
マリナさんが記録する。
クラウディアさんも頷いた。
「妥当です」
セラドは、少しだけ笑みを深めた。
「では、そのように修正可能です」
修正可能。
つまり、今は修正されていない。
だから署名してはいけない。
次の文も危なかった。
「緊急症例発生時には、速やかな情報共有を行う……」
マルタさんがすぐに言った。
「その『速やか』ってのは、夜中に馬車を飛ばしてアレンを連れてこいって話じゃないだろうね」
森術師の一人が困った顔をする。
「そういう意味ではありません」
「なら、そう書いた方がいいよ」
マルタさんはきっぱり言った。
「急いでるって言葉は、人を走らせるからね。走って転ぶ前に、どこまで急ぐのか決めときな」
エルドランが、少しだけ目を細めた。
「マルタ殿は、実に生活に即した指摘をされる」
「生活してるからね」
マルタさんは平然と返した。
「学問も大事だろうけど、人間は飯食って寝て歩くんだよ。急がせるなら、誰がどう動くかまで書かないと、結局弱い人間にしわ寄せが行く」
その言葉に、年配の女性森術師が静かに頷いた。
「確かに。緊急時連絡は、まず資料送付と王国側への連絡に限定した方がよいでしょう。本人移動を含む場合は、改めて同意が必要です」
「その内容を入れてください」
クラウディアさんが言った。
セラドは羊皮紙の端に修正案を書き込む。
その様子を見ながら、俺は少し不思議な気持ちになった。
会議が始まる前、俺はリーフェン家の立派な言葉に飲まれるのではないかと怖かった。
でも今、マルタさんの「飯食って寝て歩く」という言葉が、覚書の文面を変えている。
すごいことだと思った。
立派な学術語より、生活の言葉の方が強い時がある。
◇
覚書案の確認は、思ったより時間がかかった。
危ない言葉がいくつもあった。
『協力』
『可能な限り』
『緊急時』
『相互理解』
『継続的関係』
『必要に応じて』
どれも、悪い言葉ではない。
だが、広すぎる。
広すぎる言葉は、後で誰かを縛る縄になる。
シルフィは一つずつ拾った。
マリナさんは記録した。
クラウディアさんは法的な危険を指摘した。
マルタさんは生活の感覚で引っかかりを見つけた。
俺は、分からない時は四角を出した。
「これは、どういう意味ですか」
「その場合、俺がすぐ行くことになりますか」
「村で相談する時間はありますか」
「俺が断った場合、どうなりますか」
質問するたび、少しだけ怖かった。
相手を疑っているようで。
面倒な人間になっているようで。
でも、そのたびにシルフィが頷いてくれた。
クラウディアさんが「必要な確認です」と言ってくれた。
マルタさんが「いい質問だよ」と言ってくれた。
だから、俺も質問を続けられた。
やがてセラドは羽ペンを置いた。
「なるほど。現時点では、覚書案の即時合意は難しいようですね」
「その場署名禁止です」
シルフィが言った。
声は少し疲れていたが、はっきりしている。
「覚書案は持ち帰り、リーフェル村、王国騎士団、冒険者ギルドで確認します。必要なら修正案を文書で返します」
マリナさんが記録する。
「リーフェル村側、覚書案を持ち帰り検討。即時署名なし」
クラウディアさんも言った。
「王国側も、その扱いで確認します」
エルドランは、しばらく黙っていた。
彼の前には、修正で赤くなった覚書案がある。
当初の狙いでは、今日の会議の最後に「では今後も協力関係を」と柔らかく流れを作るつもりだったのかもしれない。
だが、そうはならなかった。
覚書は、署名されない。
持ち帰り。
四角。
俺は布袋の中の四角を握った。
ここまで来た。
今日の会議は、まだ終わっていない。
でも、一番大きな罠は越えた気がした。
◇
エルドランが静かに息を吐いた。
「分かりました」
その声は、穏やかだった。
穏やかすぎて、かえって冷たい。
「リーフェル村側の慎重な姿勢は理解しました。本日の覚書案については、持ち帰り検討としましょう」
セラドが一礼する。
「では、本日の会議はここまでといたします」
終わった。
そう思った瞬間、全身の力が抜けそうになった。
でも、まだ立つまでは気を抜けない。
会議は、席を立って、建物を出て、村へ帰るまで終わりではない。
マルタさんの言葉を思い出す。
帰って鍋を食べるまでが会議だ。
セラドがまとめを読み上げる。
「本日の会議では、シルフィ殿の過去記録提示に関する扱い、魔力回路損傷症例資料の持ち帰り検討、付与術の実演および詳細開示を行わないこと、継続的知見共有覚書案の持ち帰り検討が確認されました」
マリナさんとシルフィが、それぞれ記録を照合する。
クラウディアさんが条件書と照らし合わせる。
「相違ありません」
マリナさんが言う。
「リーフェル村側記録とも一致します」
シルフィも答える。
エルドランが俺たちを見た。
「アレン殿、シルフィ。今日はご苦労でした」
シルフィの表情が、ほんの少しだけ硬くなった。
シルフィ、と呼ばれた。
リーフェン家の人間として。
でも、彼女は木札に触れ、静かに頭を下げた。
「本日はありがとうございました」
それだけだった。
戻りますとも、戻りませんとも言わない。
必要な挨拶だけ。
俺も頭を下げる。
「ありがとうございました。資料は持ち帰って確認します」
「ええ。期待しています」
期待。
その言葉にも、俺は頷かなかった。
「確認します」
そう返した。
エルドランの目が少しだけ細くなる。
だが、それ以上は言わなかった。
◇
会議場を出る時、リュシアさんが廊下で待っていた。
正式な見送り役としてだろう。
でも、その表情は少し複雑だった。
「本日は、お疲れさまでした」
リュシアさんが言う。
マルタさんが答えた。
「本当に疲れたよ」
「申し訳ありません」
「謝るなら、次はもう少し胃に優しい会議にしておくれ」
リュシアさんは、少しだけ笑った。
「努力します」
シルフィは、リュシアさんの前で足を止めた。
廊下の窓から、森の光が差し込んでいる。
リーフェン家の森。
整いすぎた森。
シルフィがかつていた場所。
「姉様」
シルフィが言った。
「はい」
リュシアさんは、少し緊張したように返事をする。
「私は戻りません」
短い言葉だった。
でも、とても重い言葉だった。
リュシアさんは、静かに頷いた。
「分かっています」
「でも」
シルフィは、少しだけ言葉を探した。
「姉様の言葉は、覚えておきます」
リュシアさんの目が揺れた。
「私の言葉?」
「私を失敗とは呼べない、と言ってくれたこと」
リュシアさんは、少し息を呑んだ。
会議中の発言。
記録にも残った言葉。
その言葉を、シルフィはちゃんと受け取っていた。
「私も覚えておきます」
リュシアさんは言った。
「あなたが、自分の記録を自分で守ったこと」
シルフィは小さく頷いた。
「さようなら、姉様」
「ええ」
リュシアさんは、深く頭を下げた。
「また、記録の中ではなく、あなた自身と言葉を交わせることを願っています」
シルフィは、その言葉に少しだけ微笑んだ。
昔の関係に戻ったわけではない。
リーフェン家へ戻るわけでもない。
でも、完全な断絶でもない。
それは、丸ではなく、四角に近い別れだった。
◇
研究館の外へ出ると、風が冷たかった。
馬車が待っている。
クラウディアさんが周囲を確認し、マリナさんが記録鞄を抱え直す。
マルタさんは、建物を振り返って言った。
「立派な建物だったねぇ」
「そうですね」
俺が答えると、彼女は続けた。
「でも、うちの外部対応広場の方が落ち着くよ」
その言葉に、思わず笑った。
「比べる場所じゃない気がします」
「比べてもいいだろ。あたしは、あっちの木の机の方が好きだね」
シルフィも微笑んだ。
「私もです」
馬車に乗り込む。
扉が閉まる。
車輪が動き出す。
研究館が少しずつ遠ざかっていく。
その瞬間、俺はようやく大きく息を吐いた。
「終わった……」
「まだ村に着いてないよ」
マルタさんがすかさず言った。
「帰って鍋を食べるまでが会議です」
シルフィが真面目に続ける。
「そうだった」
俺は笑った。
でも、本当に体から力が抜ける。
手を見ると、木片を握りしめすぎて指に跡がついていた。
四角。
バツ。
丸。
全部、今日は使った。
マリナさんが記録鞄を膝に置き、静かに言った。
「今日は、一切署名していません」
クラウディアさんも頷く。
「検査も受けていません。実演もしていません。世界樹の詳細も話していません。症例資料と覚書案は持ち帰りです」
「それって」
俺は少し考えた。
「勝ち、なんですか?」
マルタさんが、すぐに答えた。
「勝ちだよ」
「そうなんですか」
「大勝ちじゃなくていい。今日は四角で帰れた。それが勝ちだよ」
今日は四角で帰れた。
その言葉が、胸にすとんと落ちた。
丸ではない。
全部解決したわけではない。
リーフェン家との問題は続く。
症例資料も来る。
覚書案も確認しなければならない。
リュシアさんの立場も気になる。
エルドランがこのまま引くとも思えない。
でも、今日は四角で帰れた。
その場で丸にされなかった。
勝手にバツで壊れることもなかった。
持ち帰ることができた。
それが、今日の勝ち。
シルフィは胸元の木札を握りながら、静かに言った。
「私は、戻りませんでした」
「うん」
俺は頷いた。
「ちゃんと言えた」
「怖かったです」
「うん」
「でも、言えました」
「すごかった」
シルフィは、少しだけ照れたように目を伏せた。
「師匠も、協力すると言いませんでした」
「危なかったけどね」
「でも、言いませんでした」
「うん」
クラウディアさんが、窓の外を見ながら言った。
「二人とも、今日の会議で自分の境界線を守りました。それは大きな成果です」
マリナさんも微笑む。
「記録にも、しっかり残っています」
「恥ずかしいな」
「大事な記録です」
シルフィが言った。
その言い方が、少し誇らしげだった。
◇
馬車が森を抜ける頃、空は夕暮れに染まり始めていた。
整えられた森から、少しずつリーフェル村に近い自然な森へ変わっていく。
枝は好きな方向へ伸び、草は高さが揃っていない。
地面には小さな石もある。
馬車は少し揺れる。
でも、その揺れが妙に懐かしかった。
「帰ってきた感じがする」
俺が呟くと、マルタさんが笑った。
「まだ着いてないよ」
「でも、森が違うから」
「そうだね。こっちの森は、ちょっと行儀が悪い」
「そこがいいんですね」
「そういうこと」
シルフィが窓の外を見ていた。
その横顔は、朝より少しだけ穏やかだった。
「師匠」
「何?」
「今日の記録に、最後はこう書きます」
「どう書くの?」
「会議初日、署名せず、検査せず、実演せず、持ち帰り。四角で帰還」
「いいな」
「はい」
彼女は微笑んだ。
「とても、リーフェル村らしい記録です」
◇
村の入口が見えた時、最初に気づいたのはミナだった。
外部対応広場の近くで待っていたのだろう。
こちらの馬車を見るなり、彼女は飛び跳ねた。
「帰ってきた!」
その声で、村人たちが集まってくる。
ぷる太も井戸の方から、ものすごい勢いで転がるようにやってきた。
「ぷるっ!」
馬車が止まる。
扉が開く前に、ミナの声が飛んできた。
「署名した!?」
「してない!」
俺が答えると、外から歓声が上がった。
「検査された!?」
「されてない!」
「少しならって言った!?」
「言ってない!」
「ぷる太、丸!?」
「ぷるるる!」
ぷる太が丸の木片へ飛びついた。
村人たちが笑う。
俺は馬車から降りた瞬間、膝の力が抜けそうになった。
でも、シルフィが隣にいた。
マルタさんも後ろから支えてくれた。
「ほら、まだ鍋までが会議だよ」
「はい」
村長が外部対応広場の前に立っていた。
俺たちを見て、静かに頷く。
「戻ったな」
「戻りました」
シルフィが答えた。
「会議は?」
「四角で帰ってきました」
シルフィが言うと、村長は深く頷いた。
「よい」
それだけだった。
でも、その一言で胸がいっぱいになった。
よい。
それで十分だった。
◇
その夜の鍋は、いつもより少し塩気が強かった。
マルタさんいわく、「疲れた日はこれくらいでいい」のだという。
村人たちは、会議の詳しい内容を急かさなかった。
まず食べろ。
まず座れ。
まず温まれ。
それから話せばいい。
そういう空気だった。
俺は椀を両手で持ち、湯気を吸い込んだ。
シルフィは隣で、少しずつ鍋を食べている。
ぷる太は井戸のそばで、丸と四角の間に体を置いていた。
ミナがそれを見て言う。
「今日は丸じゃないの?」
「ぷる」
「四角も?」
「ぷる」
「じゃあ、丸寄り四角?」
「ぷるる」
ミナは真剣に頷いた。
「今日の会議、丸寄り四角!」
村人たちが笑う。
俺も笑った。
でも、たぶんその通りだ。
全部解決したわけではない。
でも、帰ってこられた。
署名せず、検査せず、実演せず、持ち帰った。
リュシアさんは異議を唱えた。
シルフィは戻らないと言えた。
俺は協力すると即答しなかった。
丸寄り四角。
今夜のリーフェル村には、それくらいの答えがちょうどよかった。




