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第9章:革命の引き金

――試験当日、午前9時00分


特別試験会場《第零演習区》


 空は晴れていた。だが、その空気には、張り詰めた緊張が漂っている。

 学園最上層部が設けた臨時のバトルフィールド――かつて、失敗したコード実験体を封印していた場所。

 そして今、その“処分場”が再び開かれる。


 ユウトは、その中央に立っていた。


 参加者は約50名。全員がA級以上のコード能力者。

 その中に、ユウトという「コードを持たぬ存在」が混じっていることが、奇妙な違和感となって漂っていた。



 試験官として現れたのは、コード管理機構直属の戦闘官――ヴァル=ミトラ。

 黒い義手と、金属質の瞳を持つ男。かつて、教授の戦闘指導教官でもあった人物だった。


 「本試験は“実戦形式”で行われる。制限時間30分、生存人数が20名以下になるまで、戦い続けてもらう」


 騒然とする参加者たち。


 「……つまり、“脱落”は、“死亡”も含まれるってことか」


 誰かが呟く。


 「冗談じゃない……!」



 ユウトの視界に、一瞬だけコード網が見える。


 (来る……全員、マークされてる……!)


 その瞬間、空間がきしみ、天井が崩壊する。


 現れたのは、コード暴走体――実験によって異常進化し、理性を失った元能力者たち。

 それらが“参加者たちを処分するための兵器”として、次々と解き放たれていく。



――10分経過


 フィールドは地獄と化していた。


 能力同士の衝突、逃走、裏切り。

 助けを求める声が次第に悲鳴へと変わっていく。


 エリスが重力壁を展開して仲間を守る中、ユウトは一人、中央へと歩を進めていた。


 (コード管理機構は、俺たちを“力の不要物”として処分しようとしている。

  なら俺は、ゼロとして“世界の定義”を変える)



 目の前に、ヴァル=ミトラが立ちふさがった。


 「コードなしの小僧が、どこまで抗えるか見せてみろ」


 ヴァルは右手の義手を解放する。

 それは、人間の肉体では到底耐えられない“複合コード制御”によって拡張された、制御兵装。


 (来る……三層構造、同時展開――見えた!)


 ユウトの脳内には、視覚ではなく構造式としてヴァルの攻撃パターンが流れていた。


 そして――


 「ゼロコード・起動(Phase.Ω)」


 彼の周囲の空気が、ねじれる。


 次の瞬間――ユウトの手から、“存在”そのものを書き換える球状フィールドが展開された。


 コードを持つ者だけが感じる、恐怖。


 「おまえ……その力は……“能力の否定”じゃない……“能力の無効化”だと……!?」


 「違うよ。俺がやってるのは――“お前たちの力の定義そのものを書き換える”ってことさ」


 その瞬間、ヴァルの能力発動が止まり、義手が崩れ落ちた。



――試験終了5分前


 ユウトのフィールドには、能力が一切通用しない“絶対空白域”が広がっていた。


 逃げる暴走体、沈黙するコード保持者たち。

 その中央に、ただ一人“力を持たぬはずの少年”が立つ。


 やがて、上空に機構の監視ドローンが現れ、試験官の声が響く。


 > 「これより、ユウト=カミシロを正式にコード機構反逆者として認定。即時拘束を実行する」


 ユウトは、空を見上げて呟いた。


 「ようやく、俺を“認識した”ってわけか」



終章:始まりの終わり


 その夜、学園は封鎖された。

 コード管理機構の内部で、緊急会議が開かれる。


 「ゼロコード保持者の存在は、もはや隠せない」

 「力を否定し、再構成する者――それは、“神の座”そのものだ」


 誰かがつぶやいた。


 「……あの少年を、どうする?」


 沈黙の中、ただひとつだけ言葉が返る。


 「抹消対象ではない。確保対象だ。」


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