第112話 王都の商業ギルドでご挨拶!
「おはようございます、ナンスィーですっ!」
「おお、ギルマスなら奥で待っているぞ、よく来てくれたね」
「今日は次期スゥクネィダ領主様も、ご一緒ですよっ!!」「あ、どうも」
頭を下げる僕、
と言っても相手は商業ギルド受付のおじさん、
促されて僕らは奥へ……ナンスィーちゃんとアンナさん、護衛はこのふたりだけ。
(ナンスィーちゃんが精神力切れたら、事実上アンナさんだけか)
だが『魔神ユピアーナ様』と思えば心強い、本体であればだが。
「こちらですね」
「いつも来ているんだ」
「勝手知ったる、というやつですっ!」
さすが眼鏡ナンスィーちゃん、頼もしい。
コンコンコンッ
「ナンスィーですっ!」
「おお、どうぞ入ってくれたまえ」
「しっつれい致しますねっ!!」
失礼をしっつれいと言うのは失礼じゃないのか、
とか思いながら僕も続けて入る、そして最後はアンナさん、
ここはギルマスルームか、勝手にテーブル前ソファーに座るナンスィーちゃん、良いのか?
「早速本題か、並べてみてくれ」
「はいっ、予備を入れて十三個ですっ」
「ほう、なかなか良さそうなマジックバッグだ」
あっまだこんなに隠してたのか!
背負っていたアイテム袋から出したアイテムバッグ、
黒を基調にした、なんというか学生のバッグみたいだ、ということは!
「いやあ、新品の入手先はもうナンスィー嬢しかなくてな、
中古ならたまに流れてくるが新品より高いと来た、それでも買うがな」
「修理もお任せ下さいっ! そしてご紹介します、スゥクネィダ次期領主予定サマですっ!」
あっ、僕が紹介された!
立ち上がって、さっきよりきちんと頭を下げる。
「ダルマシオ=ダクリュセックです、新一年生ですっ!」
「おう、ナンスィー嬢から噂は色々と聞いている、頑張ってくれ」
「噂、ですか」「なんでも大魔導師ギリオス様の血を直接、受け継いでいるとか」「ま、まあ」
確かに嘘ではないし、
うちの一族で唯一、可愛がってくれた、
あんな後ろめたい理由があったとは知らなかったが。
「将来はダルマシオ=スゥクネィダ様か、ダルマシオ=ダクスヌール様か」
「スゥクネィダにはずですが、どっちにしろ、ちゃんと学院を卒業しないと」
「ではこのバッグ狙いか」「といいますと?」「これは新一年生のSクラス生徒に与えられる」
このマジックバック、
アイテムバッグとも言うけど、
僕の持っているのと若干、デザインは違うが結構、似ている。
「ナンスィーちゃん、僕の持っているのは」
「あれの方が沢山入りますよ、あとあれはあくまでもダルマシオ様の私物ですっ!」
「じゃあ、いいんだ」「はい、Sクラスでなくとも父や兄のお下がりを持ってくる生徒も居るかと!」
なるほど、私物であれば別に校則違反とかでは無いのか。
「それでナンスィーちゃん、例のアイテムは」
「はいっ、まだ試作品で使い捨てですが……この袋に」
「この中にあるのか」「そうです、『雨雲魔法発生装置』日照りの強い時期に、丸三日は雨を降らせ続けますっ!」
凄いなそれ、
量産できれば干ばつ知らずだ。
「助かる、量産できるように頼む」
「頑張ってはいますが、完成は十年先かと」
「次はいつに」「大掛かりですから、3~4か月後ですかねぇ」
アンナさんも頷いている。
「前よりは短縮できたようだが」
「はい、とっておきの助手が入りました、アンナさんです!」
「アンナです、よろしくお願いします、祖母がギリオス様の弟子でした」
笑顔になるギルマスのおじさん!
「ではこのアンナさんも、マジックバッグやアイテム袋を!」
「あっ、それをさせる発想はありませんでした、あくまでメイドですのでぇ」
「そう言っているナンスィー嬢は、いつまでそのメイド服を」「ダルマシオ様がご卒業なさるまでですねぇ」
あっそうか、
ナンスィーちゃんは闇魔法道具の業者として出入りしてたんだから、
いつもここへメイド服で来てた訳じゃないんだ、むしろここ最近かぁ。
「とにかく闇魔法道具の作り手は減る一方だった、
増えたという話は聞いた事が無い、しかし、助手ということは、期待して良いのか?!」
「ダルマシオ様次第ですね!」「ではダルマシオ次期領主!」「ええっと、お金に困ったら」
まあ、困ってないかな、今のところは……
とはいえユピアーナ様の資産を、分け前をポンポン使うのもね、
ここはあくまでも、現地のお金は現地で稼ぐって事を考えたら……アリだな。
「わかった、遊ぶに困らない金は用意しよう」
「いやまあ、アンナさん次第ですし」「私はご主人様が喜ばれるのであれば」
「実際、アイテムボックスって造れるの?!」「教えてさえ頂ければ、努力はします」
うわ、ギルマスが目を輝かせてやがる!
「これは良いニュースだ、ダルマシオ坊ちゃん、何か困った事があったら何でも言ってくれ」
「ええっとじゃあ、ウチの新しい住居の改修、リフォームを……お金はありますから、それなりに」
「わかった任せてくれ、場所は」「お城の近くの、あと学院の隣とも言える好立地な場所で……」
転移魔方陣の部屋だけは入らせないようにだな、
あと、あんまり地下までやらせると反国王派のアジトが、
まあいいか、あれはあれで勝手に住み込んでいるんだし!
「では、学院のテストに使う建物の仕事が終わったら、すぐに取りかからせて貰おう」
「あれって商業ギルドだったんですか!」「ああ、解体も請け負っているから、もうしばらく待ってくれ」
「あのそのっ」「なんだナンスィー嬢」「設計図を見せて貰えたりは」「それは不正だ、さすがに無理だ」「で、ですよね」
あっ、眼鏡を外した!
「ざんねんですぅ~~~」
「おっ、今日は魔力切れが早いな」
「ええまあ、実は朝、ウチで……って朝食まだだった」
ギルマスがテーブルの引き出しから何か出した!
「ウチの食堂の食券だ、喰っていってくれ!」
「い、いいんですかあ?!」「ああ、お近づきの印だ」
「ありがとうございます!」「そのかわりくれぐれも、闇の魔導具を、な?!」
安い、やっすい買収だこと!!!