第111話 新年度二日目!
チュンチュン、チュンチュン……
「おっ、おはようございますううううぅぅぅ~~~」
「あっはい、おはようナンスィーちゃん、どうだった?」
「まあ、いろいろとぉ~~……とりあえずは朝のおこぉ~~ちゃおぉぉ~~~」
僕の両サイドでは、
添い寝してくれたサエラスさんとドリーちゃん、
紅茶の匂いで目が覚めたみたいだ、うん、ティーカップも三つ持ってきてある。
「おはよう、坊ちゃま」
「ダルくんおはよう、良い朝ね」
「あっはい、晴れてますね、って王都はどうなんだろう」
お紅茶を飲みつつナンスィーちゃんを見ると、
言われてもないのにスチャッと眼鏡を装着する、
とたんに人が変わったように真面目モードですらすら話しはじめる。
「本日のご予定ですが、私と一緒に王都回りです!」
「あっはい、して、その理由は」「将来の領主として、取引先と」
「顔合わせね、ナンスィーちゃんにだけ任せるのもアレだし」「一度でもお会いしないと!」
結構、大切な仕事だな、
これから三年間、身近に会う事もあるだろうし……
窓の外ではドラゴンが散歩、いつものことなので省略っと。
「ついでにワンディ様の情報を」
「うん、反国王派貴族のメイドをやっている、
ここまでわかれば後はなんとか」「売られてなければですがっ!」
嫌な事を言うなあ、
売るなら僕にお願いしたい、
そのためにも早く動く必要はある訳で。
「ナンスィーちゃんのネットワークなら、
何とかなりそうって期待してもいいのかな」
「そのためにも、ダルマシオ様のお顔を是非っ!!」
こんな顔で、
そんなに効果があれば良いんだけれども……
ふと鏡の方を見ると、うん、普通のぼっちゃんだ、多分。
「後は、他の予定は」
「一応、学院の方で改めて」
「あっ、ちゃんと遅刻の理由を」「ですね!」
出来れば違う人に話したいな、
例の先生は今日はまだ帰ってこないんだっけ、
望みの綱の……こうなったのは僕のせいだから、やれる念押しはしておかないと。
「その後は」
「ついでにクラス分け試験会場の下見を!」
「見ていいんだっけ」「昨日、入れましたし」「まあね」
それで粗方の攻略法は、
目途をつけておきたいというか、
先輩にも聞かなきゃ、姉上にも聞いておくか。
「あとは何を」
「時間が余ったらデートですね!」
「誰と」「この私とですが何か?」「ええぇぇぇ……」
優雅に紅茶を飲んでいるサエラスさんとドリーちゃん、
まあこの二人はいままでの流れから行くと今日は休みだろう、
だから普通に紅茶を嗜んでらっしゃる、僕もぐいっと飲み干す。
「それでロレッタですが!」
「うん、昨日購入した闇メイドだよね」
「今日から早速、尋問もとい詳しい情報収集を!」
もうすでに結構聞いた気がするけど、
より詳しく、あと裏取りとかもあるんだろうね、
昨夜はよく眠れたんだろうか、ちょっと挨拶くらいするかな。
「ロレッタさんと会える?」
「もう無理ですね!」「えっ、なんで」
「すでにユピアーナ様の秘密を知らせてしまっております」「それで?!」
僕だって知ってるよ。
「洗脳、いえ教育プログラムが開始されております!」
「なにその物々しいの」「なので余計な情報は、入れられませんっ!」
「そんなに大した事なの?!」「それはもう、絶対服従にきつく教育しないといけませんからっ!!」
いったい何をしているんだよ何を。
「ま、まあわかったよ、じゃあ落ち着いたら王都へ、
いや最初に姉上の所かな?」「いえ、先にお城の方へ」
「そんなに急ぐの?!」「試験の情報も、きちんと仕入れてからの方が」
なるほどね、
昨年とか以前どうだった? と聞くより、
今こんなの建設中だけど内容はどうなのって尋ねる方が確実だ。
(姉上と一緒に行くのが、もっと確実なんだけど……)
おそらくは領主としての仕事が忙しいからね、
恋人を、婿を連れてこれなかったし……その傷心もあるか、
しばらくは、そっとしておいてあげた方が良いのかも、実の弟として。
「わかったよ、じゃあとりあえず王都のアジトへ」
「はいです、では朝食もあそこでいただきましょうか?」
「作ってあるの? あっ、あっちで作るのか」「朝カフェというものがありましてぇ」
いきなりデートか、
まあいいや王都をよく知っておきたい、
朝の街中を散歩するのも良いだろう、と準備する。
「では顔を洗っていきましょーー」
そうこうして、
支度が終わって着替えて、
さあ王都への転移魔方陣へ、という時には……
「んあ~~~、いきまぁ~~~」
ナンスィーちゃん、
もう持たなかったか……
眼鏡を外してトロけモードじゃないか。
(これ、朝食は外させたままのほうが良いな)
こうして王都のアジトへ転移すると……
「おはよう御主人様」
「ご主人様、おはようございます」
「あっ、アンヌさんアンナさん、並んでどうしたの」
わざわざユピアーナ様が、
分離して待ってくれていた、
どっちが本体だろうか、50%の確率でしか当てられる気がしない。
「それはだな、地下深くにある、例の場所の捜索を」
「こちら側から、室内から行けるはずなのですが、これがなかなか」
「早くしないと空っぽになっていそうだね」「おそらくまだ居る」「逃げるならわかると思われます」
そのへんはユピアーナ様の能力かな?
上手い具合に取引とか何かできたら、
ワンディちゃんの最新情報なり本人なりを入手できないかな。
(そのためにやってくれているのか)
あれ? でもユピアーナ様って、確か。
「ロレッタさんに正体は」
「もちろん明かした、そして脅した」
「色々と説明し、後はディジィさんイーヴリンさん、イレイタさんに任せました」「投げたのか」
ウチの居残りサブメイドはまだしも、
イレイタさんにまでお仕事を……何するんだろ、
具体的にどんな教育を施すのか、知りたいけど怖い。
「それで御主人様はこれから」
「ナンスィーちゃんと朝食だけど」
「ではご主人様、どちらかが護衛に」「あっうん」
この状態のナンスィーちゃんだと、
色々と不安だからなあ、一応は連れて行こう。
「じゃあ、アンヌさんは高身長で目立つから、アンナさんで」
「かしこまりました」「では後の留守番は任せてもらおう、御主人様」
「うん、あと戻ったら学院へ行くから、その時にまた、改めて……じゃ行ってくるよ」
こうして王都の、
賑やかな朝の商店街へと繰り出したのであった。