第107話 秘密のアジトは現在とんでもない場所にあった!
(うっわ、臭いが酷い)
姉上の描いた簡単な地図、
意外とわかるもんだなと到着したのがここ、
旧々下水道処理施設の倉庫、から梯子で降りた地下四階だ。
「何にもないのに、えげつない匂いがしますね」
「おそらく壁か床にに穴でも空いているのでしょう」
「いや、何も無いですね、逆に無さ過ぎて不安になります」
もうすでに引っ越した後かも知れない。
「坊ちゃま、気付きませんか」
「えっサエラスさん、何をですか?」
「壁も床も何も無い、にもかかわらず匂いがする、ということは」「あっ」
とりあえず、あちこち叩いてみよう。
「ええっと、まずは壁から」
「では私は、床の方を踏んでみます」
色々と確かめてみるが何も無い、
おっかしいなあ、確かに匂いは……
降りてきた所は特に何もないていうか。
(いや、天井か?!)
僕が見上げたのに気付いて、
アイテム袋からモップを出して柄の先でコツコツ叩く、
すると……
「坊ちゃま、ここだけ音が違います」
「本当だ、突き破れるかな?」
「試してみま……ああっ?!」
パカッと開いて不気味な仮面が!
「……何用だ」
「えっと、これですっ!!」
たった一回しか使えないという、
暗号の紹介状を見せる……って暗いけど見えるかな?
一応、光魔法はずっと灯しているけれども。
「……これだ」
ひらりと紙が落ちてきて、
仮面の男は天井の小窓? がパカッと閉じられた。
「ええっと、なんだろこれ」
「また地図ですね、家の見取り図、いえ外壁、外郭だけですね」
「この形の家を探して、矢印の所から入れってか……」
今、ここで見ていてもさっぱりだな、
大人しくお家に帰って調べるとするか、
もちろん借りているここ王都のアジトの方ね。
(……梯子や階段で1階まで戻って、出るとそこには!)
「あっ、アンヌさん、迎えに来てたんですか」
「心配でな、どうだった」
「はい、この形の家を探しています」
特徴的な変な形だな、
これならすぐに見つかるかも?
「ふむ、王都の案内図か、普通に地図を見れば」
「でも家って多いですよね、見つけるの大変そう」
「誰か居たのか」「ええ、変な仮面の」「捕まえなかったのか」
その発想は無かった。
「まあ、こうやって教えてくてたのですし」
「……この家、屋敷か、心当たりがあるような無いような」
「大きさがわかりませんが、矢印の感じから大きそうですね」
家と見せかけて畑とかだったらどうしよう、
と一応、途中で王都の案内板を見るが簡略化されててわからない、
こまかい案内板を巡ってたら時間がかかるな、一旦帰ろう。
(実は意外と時間がかかりました!)
と、家に帰ると……
「あら、おかえりなさい」
「姉上、どうでした」
「婚約内々定パーティーの真っ最中だったわ」
(あっ……)
「教頭先生もアンナさんも、お戻りで」
「ありがとう、中々楽しかったわ」
「しっかりサポートしてきました、ご主人様」
イレイタさんは買い物を楽しんできたようだ。
「それで魔導書は」
「かなり高価なようだったので、これから」
「じゃあ爺ちゃんの所へ」「私も行くわ」
姉上は夕食を食べず、かぁ。
「あっ、ちなみにこれ、どこかわかります?」
と例の、謎の見取り図を見せる。
「……王都に三年居たけど、さっぱりだわ」
「ですかぁ、姉上でも」
「特徴的だから、地図を見たらすぐでしょ、これって」
簡単に例の集会所跡地での出来事を話した。
「なるほどね、じゃあもうあの紙は使えないわね」
「一応、持っておきます」
「助けになったようで良かったわ、またねダル」
そう言って二人は転移魔方陣の方へ……
「ええっと、じゃあ夕食の間に誰か地図を」
「では私が、私は夕食は必要ありませんので」
「あっ、アンナさんの方が分身なんだ」「行って参ります」
サエラスさんからお金を貰って出て行った。
(簡単に見つかると、いいんだけどなぁ……)
こうして夕食の時間、
王都で買った食材をもぐもぐいただく、
それにしても広い食堂だなあ、ここも元は何かの倉庫か、それとも……
(元々が食堂なら、大人数用だな)
ここでひとりで食べていると、
いかにメイドが世話してくれているとはいえ少し寂しい、
ワンディちゃんが居てくれたらまだ『婚約者』として一緒に食べられるのに。
(僕が食べ終わった後の、メイドだけの食事に乱入しようか)
うん、迷惑この上ないね!
「ただいまですぅ~~~」
「あっ、ナンスィーちゃん、お帰り」
「きょ~もおしごと、がんばりましたぁ~~」
(あっそうだ、いっそここは……)
「じゃあナンスィーちゃん、一緒に食事しよ?」
「えっ、いいんですかぁ~?」
「今はあくまでも闇の商人として、ね」
うん、これで少しは寂しくなくなる。
「では~~、お言葉に甘えてぇ~~」
ってテーブルに着くなり顎を乗せちゃったよ、
眼鏡かけてないと、まったくこれだから……
「買って参りました」
王都の詳しい地図が来た!
「食卓に乗せるとアレだから、壁に」「はい」
持って来たアンナさんが手で押さえる、
もう片側の方はアンヌさんが……うん、よく見える。
「で、見取り図は」
「私がお持ち致しますね」
サエラスさんが持って、
同じ家を探す……うーーーん、
なかなか見つからないなぁ、どこだろ?
(まさかお城ってことは、いやいや形の複雑さが全然違う)
どっちかというとこの見取り図、
大きい建物に挟まれた広大な空き地に建てられたような、
そんなちょっと大きくも大雑把ないびつさがあるな。
(道路でも書いてあったら、まだわかるのに)
あちこち見回しているうちに、タマラさんが声を上げた。
「……あっ、見つかりました!」
「えっ、どこ?」
「お城と学院の間ですね」
見比べてみると……!!
「おお、タマラさんありがとう!」
「……でも、ここって……まさか、もしや、でも、間違いなく!!」
それは、まさかまさかの場所だった!!
「ええっと、えっと、ここからだと……って、ここ?!」
まさかの現在地でしたー!!!