vsマクレクターC戦 その1
♪ うぉーこーん うぉーこーーん うぃずほー いんよはー ♪
♪ あんじゅ ねーばー うぉー あぁ ろ~~~ん ♪
♪ ゆー ねーばー うぉー あぁ ろ~~ん …… ♪
何度聞いても、心が揺さぶられる。
俺はアンフィールドのゴール裏を見上げると胸に手をあて、KOP達が奏でる『ユール・ネヴァー・ウォーク・アローン』に耳を傾けた。
今日は2022年4月11日(月)、EPL第32節、リバプールSC vs マクレクターCの試合が行われる。
現在、EPLの順位はというと1位がマンCで勝ち点80。2位が我が軍で勝ち点79。
つまり今日勝てば、首位が入れ替わるってわけだ。
一時は勝ち点、8差まで広げられたのだが、その後はコツコツと勝ち点を積み上げ、ようやくここまでやって来た。
今日の試合でしっかりと勝ち切り首位の座から引きずり降ろしてやる。覚悟はいいか?The Bluesよ。(※1)
ここで勝てば、司が言ってたシーズン四冠もかなり現実味を帯びて来る。
俺はKOP達の歌う『ユルネバ』に闘志を漲らせ、今まさに臨戦態勢に入ろうとしたその時だった。
「シンジ、シンジ、久しぶりだねー」と俺の背後から気安く話しかけてくる奴がいる。
チッ、なんだよ、うるせーなー、人が集中してる所だってのに……
このタイミングで空気を読まずに話しかけて来る奴なんて一人しかいない。
振り返ると、そこにはトレードマークのカチューシャをしたグーリッシュの姿が……
「なんだよ?」
試合前のルーティーンである『ユルネバ』を聞きながらの精神統一を邪魔されて、ちょっとムッとする俺。
「なんだよ、シンジー、そんなおっかない顔して」とニコニコのグーリッシュ。そして、「ところで、今日は弥生は来てないの?」そう言って手をかざしてゴール裏をキョロキョロ。
「来てねーよ!!ってか、もし来てたとしても、ゴール裏なんか呼ぶかよ!!」(だって、KOPの中に女の子一人きりだなんて危ないじゃないですか!!あっ、なんかすいません……)
「そりゃ、そうか。呼ぶとしたら、あっち側だよな」
そう言って、VIP席が置かれている『サー・ケニーダルグリッシュスタンド』の方をキョロキョロキョロ。
「だから、来てねーつうの!!」
--------------------⚽⚽⚽--------------------
昨シーズン、当時、グーリッシュが在籍してたアストンビラ戦で、たまたま弥生がリバプールまで応援に来てくれた時に鉢合わせしてしまい、グーリッシュの中の焼けぼっくり(※2)に火が付いてしまったのか、それ以来、顔を合わせる度に「今日は弥生は来てないのか?」としつこく訪ねて来る。言っときますけど、勝手に火が付いてるのはお前だけだからな!!
「なーんだ、残念。でも、この試合は見てるんだろ。日本から」
「そりゃ、まあ、いつも、ライブで見てるとは言ってるけどな」
「そっかー、分かった」
そう言うと、グーリッシュはテレビカメラに向かって投げキッスをすると自分のベンチに戻って行った。
おいっ、その投げキッス、一体誰に向けてやったんだよ。ちょっと教えてくんねーかな?(ビキビキ)
(リバプール vs マクレクターC メンバー表)
という訳で、今日のシティー戦、リバプールのDFラインは4人中3人までもが日本人です。
レギュラーのマチャドさんは木曜日に行われたCLのベンティカ戦で怪我をしてしまい、念のため今日はお休み。頼んだぞ、拓郎。
というか、日本がW杯出場を決めてホッとしたのもつかの間、リバプールに戻って来たら、FA杯、CLと勝ち残っている我が軍は、4月だけで9試合の強行スケジュール。(あーつらいわー、名門チームに入ると、この時期カップ戦に勝ち残ってるんでスケジュールがめっちゃキツイわー……)
しかも、ここ一週間だけ見ても、今日はマンC(月曜日)、水曜日はCLのベンティカ(第二戦)、そして土曜日にもマンC(こっちはFA杯準決勝)とギッチギチやでギッチギチ。(ぞくぞくするやろ)
どうやら、チーム的にも、しっかりとシーズン四冠を狙っているらしく、五日前のCLでフル出場してたTAAとロバートさんは今日はお休みの予定。
クラップさんからは「なるべくカードをもらわずに最後までがんばってね」と言われている。
もちろん、フォワード陣にも疲労は蓄積しており、状況次第では南君や優斗も後半から出場するかも知れないのだ。
シーズン終盤のここに来てスクランブルな我が軍。いうても、お相手さんもまったく同じスケジュールなので泣き言を言っている場合ではない。というか、シティーのCLの相手は、なんと、シメオレさんところのアトランティス。
うーん、どっちもどっちだなー……
そんな感じで、シティーのキックオフで試合は始まる。
ヨーイ、ドン!!
※1、「The Blues=マクレクター・Cの愛称、スカイブルーのユニフォームからそう呼ばれている……って、アレ?確かチェルシーもそう呼ばれてませんでしたっけ?」(神児)
司「一応、マクレクターのもう一つのチーム。マンUとの区別でそう呼ばれてるので、場合によってはシチズンズ (The Citizens)やマンCと呼ばれたりもしているぞ」(司)
「はへー……上司はやっぱり物知りだなー」(神児)
※2、「『焼けぼっくりに火が付く』ってのは『焼け木杭に火が付く』の間違いな。そもそも、一度焼けた杭は火が付きやすいってとこから、以前に関係のあった者同士が、再びもとの関係に戻ることの例えなんだけれど、お前の言う『焼けぼっくり』ってのは一体何よ?」と司はドヤ顔で言った。
「まっ……まっ、松ぼっくりの一種……かな?」
「ハッ!!」司は鼻で笑うと、思いっきり蔑んだ目で俺を見る。
「……すいません、以後気を付けます(……ッチ)」
そういうとこやぞ、お前がいまいち、人から信頼されてない所は……




