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フットボールのギフト ~底辺Jリーガーの俺がフットボールの神様からもらったご褒美とは~  作者: 相沢孝
第十一章 飛躍のリバプール2年目編

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2022年4月2日未明 その2

 司はそう言って席を立つと、キッチンに行き冷蔵庫を開けた。


 戻ってくると、その手にはカールスバーグ(※2)のビールが二本……おやっ?


「あれっ、いいんすか、上司」と気が付けば俺の顔はニンマリ。


「まあ、ここだけのお祝いだ。1本くらいいいだろ」とそういう司の顔もニンマリ。


 ようやく、この世界にまだいてもいいというお墨付きをいただいた実感が湧いて来たのか、俺達は改めてこの夢のようなフットボールにまみれた世界に残れたことをお祝いしたのだ。



 --------------------⚽⚽⚽--------------------



「それでだ、改めて確認したいことがある」とうっすらと目を赤らめて司。半年以上振りのアルコールに体がちょっと驚いてしまったのか、俺よりも遥かに酒の強い司の顔がアルコールでほんのり赤く染まっている。


「なんだよ、いきなりー」と、久しぶりにお許しの出たビールを片手に俺もついご機嫌になる。


「俺達のこの世界での目的だよ」と改まって司。


「そりゃー、W杯の舞台に立つって……えーっと」


「そうだ、俺達の今までの目標はW杯の舞台に立つことだった。だが、既にSAMURAI BLUEのレギュラーを張る俺達の目標が、果たしてそれでいいのかと……」そういうと、司は手に持ったカールスバーグの缶ビールをグビっと煽る。


「そんな訳にはいかねーよな」


 そうなのだ。既に3度決勝トーナメントに勝ち上がった我らがSAMURAI BLUE。だが、今だにそこから先、勝ち進んだことは一度もない。


「ああ、森監督の悲願は決勝トーナメントでの1勝、すなわちW杯ベスト8だ」


「だが、今回に限ってはなー」と俺は頭を項垂れる。


 つい数時間前に日本のW杯での対戦相手がドイツとスペインに決まった。やはり歴史は変わらなかった。


「正直、お前、どうよ?」俺は司に正直に聞いてみることにした。


「俺は……」


「俺は?」


「このままでいけば、結構、行けるんじゃないかと踏んでいる」


 司はそう言うとどこまでも真っ直ぐな目で俺を見つめた。


「だっ、だよなっ!!」


 我が意を得たりと俺もついビールを持つ手に力が入る。(ベコッ)


「おい、ビール零れてんぞ」


「ああ、貴重なおビール様がー……」


 やはり、どこまで行っても締まらない俺だった……


 その後、上司の特別なお許しをいただき俺は二本目のカールスバーグを開けた。


 --------------------◇◇◇--------------------


 14年前、あちらの世界で外野から見ていたSAMURAI BLUEは、カタールW杯でドイツやスペインと同組のグループEに入った瞬間、強がりは見せていたがある程度の覚悟を決めるようにも見えた。


 正直、当たって砕けろって感じで……


 だが、こうして、チームの一員となってカタールW杯の切符を手に入れることが出来た今となっては、あの頃に比べて、遥に高い解像度でこのチームのことを理解しているし、それにも増して手応えも感じている。


 それというのも、昨年末からのSAMURAI BLUEの快進撃を目の当たりにしたからだ。


 森ジャパンのラストピースとして三苫君が左Wの入ってからというもの、三苫君が出る試合では怒涛の4連勝。


 W杯出場を決めた後の最終戦のベトナムこそ、ターンオーバーで新戦力のテストのため引き分けてしまったが、それ以外の4戦は圧倒的とも言える勝利だった。


 特に、難敵と言われたサウジアラビアとオーストラリアに関しては殆ど相手にチャンスを与えないままの勝利だった。(まあ、オーストラリア戦に関しては三苫君が投入されるまでチャンスを外しまくっていたが……)


 実際、EPLイングランド・プレミアリーグで世界の強豪と毎週のように鎬を削っている俺達だからこそ言えるのだ。


 今の日本は相当に強いと……伊藤さんと三苫君の両Wがピッチにいる時の破壊力。それに引っ張られるように急成長を遂げている一英、そして相変わらず高いレベルを維持し続けている堂口君と南君。さらに今年に入り、森JAPANの常連となった古畑さんと大前田さんも心強い。朝野さんも相変わらずキレキレだし……


 中盤に至っては円藤さんと盛田さんという不動のダブルボランチが円熟の域に入り、それに負けじと釜田君や田中君が攻撃面でチームを引っ張っている。


 そして懸念だったDF面はここに来てガンナーズと富安君とシュツットガルトの井藤君が急成長しWクラスといっても過言では無い。さらにケガでなかなかコンディションが上がらなかった代表常連の坂井さんと偉大なるパイセンの永友さんもここに来てしっかりと仕上げてきた。


 正直俺達には立場的に怖いものがある。


 そしてそれにより、サムライプレスと言われている森監督が得意とする高強度のプレスが主力、控え組と関係なくいつでも発動させられるようになってきたのだ。


 スイッチの入った時の日本代表は今や世界のトップクラスに肩を並べられるのでは無いか?……と。


 もっとも、司に言わせれば、ビルドアップ時や撤退守備時における課題はまだまだあるらしいのだが、その修正もある程度の見込みは立っているとのことだ。(あくまでも司の話だが……)


「俺は……俺はやはり、W杯のベスト8を目指したいと思っている」と日本サッカー界の悲願を口にする。


「覚悟は出来てるのか」とどこまでも真っ直ぐな目で司が言う。


 ドイツとスペインのいるE組で決勝トーナメントに出るという事は、その両チームから勝ち点を捥ぎ取る必要がある。どちらかではない。両方からだ。


 96年のアトランタオリンピック、俺達オリンピック日本代表は初戦で優勝候補のブラジルから金星を挙げ、さらに第三戦のハンガリー戦で勝利したにもかかわらず、第二戦のナイジェリア戦での負けが響き決勝トーナメント進出を逃してしまった。


「ああ、決勝トーナメントに進出してそこで悲願の一勝を挙げる」


 一チームだけではダメだ。両方のチームから勝ち点を上げなければ決勝トーナメントに上がることは出来ない。


「分かった……しっかし、残りの1カ国、コスタリカかニュージーランド。ここまで一緒だと大したもんだ」と呆れたように司。


「コスタリカかニュージーランド、どっちが来ると思う?」


「おそらく、コスタリカの可能性が高いかもしれん。もっとも両チームともちゃんと見たことは無いが……」と司にしては珍しく自信なさげに言う。


「まあ、いいや。どっちにしろ、スペインやドイツがこのどっちかから取りこぼすとは考えずらい。そう考えると三カ国の三つ巴と考えるのが……」


「まあ、そう考えてるのは日本人だけだと思うがな」そう言うと自嘲気味に笑う司。


 そうなのだ。E組が死のグループと考えているのはおそらく日本人だけで、当事者であるドイツ人やスペイン人、そして世界中のサッカーファンからも、この組はスペインとドイツの二カ国が順当に勝ち上がるイージーな組だと思われているはずだ。


 だが、そうはさせるか。


 今年に入ってからのSAMURAI BLUEのパフォーマンスを考えれば、そう簡単に行かないのはこのチームで戦っている俺達が一番良く分かっている。


「今度のW杯でドイツやスペインだけじゃねえ、世界中のサッカーファンの度肝を抜いてやる」


 司はそう言うとどっかりとソファーに座り手に持ったビールをグビリと煽る。


 その双眸はまだ見ぬ未来を見据えるよう、真っ直ぐにただ一点を見つめていた。



※2カールスバーグ=1992年からリバプールのスポンサーを務めているデンマークのビールメーカー。また、 リバプールの試合ごとに、カールスバーグがスポンサーとなってサポーター投票で「プレイヤー・オブ・ザ・マッチ」を選出してその栄誉に輝いた選手にはおビール様が送られます。ごっつぁんです。プハー。

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― 新着の感想 ―
正直今でもワールドカップでの本気モードだったスペインとドイツに勝てたのが信じられん
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