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フットボールのギフト ~底辺Jリーガーの俺がフットボールの神様からもらったご褒美とは~  作者: 相沢孝
第十一章 飛躍のリバプール2年目編

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2022年4月2日未明 その1

「三苫ー、行く、カットイン、自分で運んでシュートだー!!」


「うおっ!!」


「決まったー!!W杯行き、確信しました。森監督!!」


「すごい、三苫」


「カタールW杯アジア最終予選、日本対オーストラリア、後半の93分、三苫、ダメ押しの2点目だぁー!!」


(カタールW杯アジア最終予選B組順位)

挿絵(By みてみん)



 --------------------⚽⚽⚽--------------------



「何度見てもスゲーな、三苫君」と食器を片付けながら俺。


「まあ、言うても、二点目のコースは、あまあまだったけどな」と最近購入したエスプレッソマシーンで入れたアフォガード※1を食べながら司。


「お前、そういうケチ付けるんじゃないの。ところで美味そうだなそれ、俺にも作って?」


「んっ?キャラメルソース掛けるか?」


「わかってるじゃん」



 --------------------☕☕☕--------------------



 今日は2022年4月1日、カタールW杯の切符を無事手に入れ、アジア3次予選の日程を全て終えた俺達はリバプールのマンションに戻っていた。


 ちょうど、つい先程まで、拓郎や優斗、南君達を呼んで、日本のW杯出場を祝うささやかなホームパーティーをしていたところだ。


 リビングのモニターからはW杯の出場権を手に入れた先日のオーストラリア戦のハイライトが繰り返し流れている。


 うん、何度見てもいい光景だ。


 時計の針を見ると、今は夜の11時57分、あと3分で2022年の4月1日が終わる。


 先程から軽口を叩いているが、俺の背中や脇からはじっとりとした冷や汗が流れている。それはきっと司も同じだろう。


 俺は司が作ってくれたアフォガードを食べながら時計の針を見る。


 ハーゲンダッツのバニラアイスの上に、特濃で入れたエスプレッソとキャラメルソースが掛けてある。


 いつもならば、ほっぺを押さえたくなるくらいの甘さなのだが、正直、今は味なんか全然わからない。


 俺も司も気にしないそぶりを見せながらも、目だけは壁の上に掛けられた時計の秒針から目が離せなくなっていた……




「日本、7大会連続W杯出場決定ー!!難敵オーストラリアを2-0で破りました」


 その時、モニターからアナウンサーの絶叫が聞こえた。


 それと同時に、秒針が文字版に刻まれた12を越える。


 10秒……20秒……そして30秒がたった時、「ふー」っと、司が深い深いため息を吐いた。


 既に日付は4月2日に変わっていた。


--------------------⚽⚽⚽--------------------


「どうやら、まだこちらの世界に居させてくれるみたいだな」


 司はちょっとおどけたそぶりを見せてから、グラスの底に残ったアフォガードの残りをくーっと啜る。


「そりゃ、そうだろ。ここまで来て、『じゃあ、元の世界に戻ってください』だなんて殺生にも程があるさ」


 俺も司同様にアフォガードをくーっと煽る。


 司の手前、強がって見せているが、正直、先程から心臓の鼓動が鳴りやまない。


 時差が9時間進んでいる日本では今は4月2日の朝9時だ。


 14年前のあの日、ハチスタのピッチの上でタイムスリップをした俺達は、14年の時を経て、遂にあの時の時間を追い越してしまったのだ。


 ここからの歴史はもう、俺も、司も知らない。


 そして、まだ、この世界に居させ続けてくれるということは、これから先の歴史を作ることもどうやらフットボールの神様はお許しをくれたみたいだ。



 今日のささやかなホームパーティーを計画したのは司だった。


 日本から帰りの飛行機の中で考えついたことだ。


「もしかしたら、俺達、‶あの日"を過ぎたら元の世界に戻ってしまうかもしれない。その前に、最後の晩餐じゃないけど、優斗や拓郎、そして南達と4月1日の夜、一緒に飯でも食ってバカ騒ぎでもしようじゃないか」と。


 もっとも、シーズン中なのでアルコールは一切なし。


 その上、バカ騒ぎしようにも皆、カタールW杯の抽選会に気が行ってしてしまいそれどころじゃなかったし、抽選会が終わったら終わったで、前の世界と同様にドイツとスペインと同じ組になった為、部屋の中はお通夜モード。


 俺達も微かな望みは持っていたが、やはりここでも歴史は変わらなかったのだ。


 ってことは、アレか。


 どうやらW杯の本戦で、俺達はドイツとスペインと戦わなくてはならないのだ。


 すると……「まぁ、決まっちまったもんはしょうがねえ、W杯が開幕する残り7か月弱、ドイツもスペインも徹底的に丸裸にしてやるか」とちょっと自棄になった感のある司。


「頼むぜ、元八王子SCのチーフアナライザーさん、頼りにしてますよ」


「と、その前に」


「その前に……?」




※1、アフォガード=冷たいバニラアイスクリームやジェラートに熱いエスプレッソコーヒーをかけた、イタリア発祥のドルチェ(デザート)です。イタリア語で「溺れた」を意味し、アイスがコーヒーに溺れているように見えることから名付けられ、アイスの甘みとエスプレッソの苦味、そして冷たさと熱さのコントラストが魅力で、自宅でも簡単に作れる人気のスイーツですぞ。最近の我が家の定番のデザート。司がエスプレッソマシーンを買った理由は、エスプレッソを飲むためではなく、どちらかというと、アフォガードを食べる為だったとか……太るぞ、デブ。


 挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
遂にあの日まで辿り着きましたね。
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