(仮)対ブランドル戦 その4
「前半24分、北里司、衝撃のドッペルパーック!!」
モニターからアナウンサーの大絶叫。
「試合開始直後から、完全にブランドルの右サイドを支配したリバプール、前半4分のゴールに続いて、24分、ゴール前に侵入した北里が得意の右45度からのシュートでブランドルを突き放したー」
「このままいけば、加山真司以来、プレミアリーグ日本人二人目のハットトリックも夢じゃないですよ」と解説の松本のやっさん。地上波放送の時はイケイケゴーゴーの乗りだが、海外リーグの配信だと意外と玄人受けの解説も出来るのです。
「そもそも、前半10分のシュートもアレはノーゴールじゃないでしょ」
「ブランドルゴール前のこぼれ球を押し込みましたが、その直前、同僚の鳴瀬の立ち位置がキーパーの邪魔をしたということで理不尽なゴールの取り消しでしたね」
「ありゃ、ゴール右上の完璧な神コース。鳴瀬がそこに居ようが居まいが関係ないですよ!!」
すると、俺の横でギロリと司の目が光る。おー怖っ!
「でも、この調子でいけば、日本人として初のシーズン二桁ゴール&二桁アシストも夢じゃないですね」
「しかも、DFでですよ!!」
「昨シーズンはプレミアデビューイヤーにも拘わらず、5ゴール、5アシストの大活躍の北里。それまでレギュラーだったロバートにとって代わる存在になりました」
「最近ではクラップ監督のファーストチョイスとなっている北里。代表でもその活躍は目覚ましいものになっております。こりゃー、今度の代表戦も楽しみだなー」
「北里、マジ、半端なーい!!」
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「いうても、今日のポジショニングほぼ、左ウイングやけどな、司君」と俺の横でモニターを見ながら優斗。
「でも、前半の45分だけで実質3ゴールはすごかったのねー」と目をまんまるにして拓郎。
「ホント、今日の北里はヤバかったなー。特にあの右45度のシュート。今度教えてくんないかな」と感嘆のため息を吐く南君。
「南君、やめとけ。シント=トロドンの時、郁の奴がマネして腰いわしとったから」と優斗。
「そういやお前も明和の時マネして腰痛めたよなー」と、前の世界でビクトリーズの時、同じように真似して腰を痛め、今世では身の程というものを弁えるようになった俺。
「お前ら、体弱過ぎだろ」と司はため息を吐いた。
「「うっさい!!」」
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「ったく、もともと、こんな予定じゃなかったんだけどな。全部この馬鹿のせいだ」とモニターに映る試合を観ながら相変わらず俺にだけ当たりの強い上司。
それというのも、試合開始早々、俺と三苫君のバッチバチのデュエルが始まってしまい、ゴリゴリの削り合いにエスカレートしてしまったからだ。
でも、聞いてください、上司。最初にケンカ売って来たのは三苫君の方なんですよ。あー、痛かった。と試合開始早々、三苫君に削られた右の脛をナデナデ。
お互いに一触即発の雰囲気のなか、ゴール裏のKOP達もヤンヤヤンヤの大喝采。これでこそ、サッカーの母国、イングランドのフットボールだと喜んでくれていたのに、ああそれなのに……
その状況にブチ切れなさった我らが上司。ならばこうだと、直後のオーバーラップがハマり、モーさんが打ったシュートのこぼれ球を渾身のダイレクトボレーで、ブランドルゴールの天井にブッ刺すと、偽サイドバックというよりも、マネラさん押しのけて純粋な左Wに変貌した司はブランドルの右サイドを完全に制圧した。
まあ、確かにブランドルの右サイドのマートとフォルトマンは左の三苫君とカクレジャに比べて弱いかなとは思ってたけれど、あそこまでチンチンにすることは無いんじゃないですか?
そんな感じで一方的にブランドルをゴール前に押し込めることに成功した我が軍は、その後もシュートを雨霰の様に打ち続けると、前半10分、フェルミンのシュートを相手ゴールキーパーのロバートが執念のセーブ。
ならばと俺がダイビングヘッドで押し込もうとするも、スライティングして来た三苫君の足に当たりバーに跳ね返る。
あー、ちきしょー、と思う間もなく、再び司がそのこぼれ球に反応してブランドルのゴールにぶっ差すも、なにやら相手GKが俺を指さしあーだこーだ。
なんか嫌な予感がしたら見事的中、VARが介入してどうやら俺がキーパーの進路を防いだとかなんとかで司のゴールが取り消し。
俺はもうおっかなくて、それ以降司とはまともに目を合わせられなくなっちゃいました。テヘペロ。
しかし司はその後も一向に攻撃の手を緩めること無く、前半の24分、完璧な体勢から右45度のシュートを決めてブランドルを2-0に突き放した……
――そして今、俺達は家に帰って来て、優斗や南君達と一緒に、今日の試合の録画を見ている真っ最中です。
でも、なんで、上司はこんなにも機嫌が悪いのでしょう?(なーぜかーしらー……)




