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フットボールのギフト ~底辺Jリーガーの俺がフットボールの神様からもらったご褒美とは~  作者: 相沢孝
第二章 あすなろジュニアユース(中学生)編

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真夜中のフットボール その4

  挿絵(By みてみん)


「あー、チーズバーグディッシュにしようかなー、それとも、カレーバーグディッシュにしようかなー、神児お前何にするー?」


 司は「びっくりドンキー」の例の馬鹿でっかいメニュー表の前で本当に嬉しそうに悩んでいた。また太るぞ、デブ。


「俺は、エッグバーグディッシュの300、ライス大盛、みそ汁付けて」と俺の中の定番メニューを頼む。かれこれ、ここ何年も、これ以外のメニューを頼んだ記憶はない。


「ああ、そうかー、エッグバーグディッシュってのもありだなー」と司は本当に嬉しそうに言った。


 注文が終わると、


「でさ、神児、お前、身長止まったのって、何歳くらい?」


 司は苺ミルクをおいしそうに飲みながら聞いてくる。


 そういやお前、さっき風呂上りに苺牛乳飲んでなかったっけ?また腹下すぞ!!


「うーん、高2の夏くらいだったかなー。確か、ビクトリーズを止めた後も、まだ少し、背は伸びてたような気が……」


 そういいながら、実は俺も同じ苺ミルクを飲む。だって、コレ、美味しいじゃん。


「おまえ、最近、睡眠時間は?」


「ああ、司に言われたようにちゃんと8時間は取ってるよ」


「ちなみに、前の時に比べて身長は?」


「うん、前の時に比べて背は伸びてる。確か160cm超えたのって、中二の冬くらいだったような気が……」


「やっぱり、睡眠時間との関係性はでっかいよなー。そういや、プロテインは飲んでるか?神児」


 司に言われて、俺もプロテインを飲むようにしている。


「ああ、ちゃんと朝と夜と寝る前に飲んでるぞ」


「おっけー」


 そんなことを話していたら、料理がやってきた。


 見ると司のハンバーグの上には、チーズと目玉焼きが乗っかっていた。おまえトッピングもつけたのかよ!!


 二人して、びっくりドンキーのハンバーグを300gにライス大盛とみそ汁まで飲んで大満足。


 司もお腹パンパンで顔もツヤツヤ。これはこれで健康そうに見える。


 腹もいっぱいになり、さあ、帰ろうかと思ったところで、司が話し掛けて来た。「なあ、神児、お前、もう少し食べれそうか?」と。

 

 お前は相撲取りにでもなるつもりか!!


 結局、その後、司はメリーゴーランド、俺はミニソフトクリームを食べる羽目になった。


 司はメリーゴーランドの上に乗ってる白玉を美味しそうに食べながら、「なあ、神児、お前、ゴールデンエイジって言葉、知ってるよな」と聞いてきた。


 そりゃ、あんた、俺だってコーチの端くれだよ。そのくらい知ってるって。


「確かアレだろ、10歳から12歳までの間って爆発的に運動神経が向上するって奴」おれはソフトクリームをスプーンですくいながら返事をする。


「ああ、大体、その年齢の子供たちにはフィジカルトレーニングなんかよりも、テクニカルなトレーニングで脳の運動神経を活性化させることが重要視されてるんだ」


 そう言いながら、今度はメリーゴーランドに乗っているブルーベリージャムをおいしそうにすくう司。食べるかしゃべるかどっちかにしなさい。


「まあ、コーチやってた時は俺もそういう指示でやってたぞ」


「ってか、そのメニューを考えていたの俺だし」


「ああ、そうだよなー。そういや、司、こっちの世界に来てもそういう勉強してるのか?」


 先ほど取っ散らかった部屋の中にトレーニング関係の本がちらほらとあったのを思い出した。


 すると、司は「ダメ、ダメ、何冊か本を読んだけれど、俺たちの時にはもう意味がないって証明されたものまで平気で混じっていたから」と手を左右に振りながら言う。


「なるほどねー、ここ14年間の間に、運動生理学の分野もすごい勢いで進歩したからなー」


「ああ、なんてったって、俺達、コーチ研修で、あの時代の最先端の理論と学問を勉強させてもらってただろ」


 確か、現役最後のオフシーズンには司に連れ回されて、あちこちの大学の講義に参加させられたもんなー……


 お前も指導者としてこの先、飯食っていくつもりなら、ここで勉強しておいて損はないぞって言われて……1年ちょっと前の話なのに、随分と昔のように思える。


 まあ、もっとも、それも、未来の話なんだけれどな。


「でさー、神児、ゴールデンエイジの後って、なんて呼ばれているか覚えているか?」


 おおっと、ここで北里教授の講義が始まっちゃうんですか?


 ちゃんと答えられないと、向こうの世界に戻った時に、ボーナスの査定に響くからな。


「ええっと……確か、ポスト・ゴールデンエイジ……だったっけ?」


「ピンポーン」司はそう言うと、「ご褒美に白玉をあげます」と言って俺のミニソフトの上に白玉を乗っけた。あっ、どうも、ありがとうございます。


「で、ぶっちゃけ、神児、俺達、今、その、ポスト・ゴールデンエイジにいるわけじゃん」


「まあ、なー、」俺も司も、もうすぐ13歳になるわけだし…………


「じゃあ、次の質問です。その、ポスト・ゴールデンエイジでは、どういう狙いを持って、トレーニングをしていかなければならないのでしょう?」


 えええー、なんだったっけかなー……「えーっと、うーん……フィジカルだっけ?筋トレみたいな……」


「ブッブーー」司はそう言うと、俺の1枚しかないソフトクリームの上に乗っかってたウエハースを取り上げる。


 何するんだよ、デブ!!楽しみにとっておいたのに!!


 おいしそうにウエハースをパリパリと食べるデブ。俺が恨めしそうな顔でそれを眺めてたら、「あれ、神児、そんなに、コレ食いたかったの?じゃあ、もう一杯頼むか?」と店員さんを呼ぶブザーを押そうとする。


「大丈夫、大丈夫、もう、結構です」俺は必死にボタンを手で覆う。


 すると、近くにいた店員さんが、なにか用があるかと思いやってきた。


「お客様、何か、ご注文ですか?」


 俺が、えっ、いや、なんでもないです。という前に、司は、「コーヒー二つ」とにっこり笑ってVサインをする。と、「お前も飲むだろ?神児」


 注文する前に確認しろよ、司。まあ、いただきますけれど……



 ほどなくしてコーヒーがやってくると、司はメリーゴーランドとホットコーヒーを交互に飲んでは食べるを繰り返す。ほんと幸せそうだな。まあ、美味しいけど……


「あー、そうそう、さっきの話の続きな」そういって、コーヒーをゴクリ。「あのさー、こっち来る前の研修で、その事をやったんだよ」


「えーっと、ポスト・ゴールデンエイジでのトレーニング?」


「そうそう、その時期って、男性ホルモンが出るようになって筋肉が付きやすくなるんだけれど、まだ骨端線も閉じてないし、軟骨も柔らかいんで過度のフィジカルトレーニングは推奨されないって言われるようになっててさ」


 まあ、言いたいことは分かるよ。成長期の子供に筋トレって、昭和の時代ではガツガツやってたけれど、今のご時世では奨励されてないもんな。


「で、ポスト・ゴールデンエイジで最も伸びる部分ってのが、内臓なんだよ。」


「内臓?」そう言って、俺は自分のお腹を指す。


「ああ、内臓って言っても、主に心臓や肺、つまり心肺機能だ」


「あああー、なるほど」


「つまり、俺たちみたいな年齢のプレイヤーにとって最もやるべきトレーニングは、心肺機能の強化なんだ」


 まあ、確かに、去年も今年も水泳をあほみたいに泳いだおかげで、スタミナは確実に前の世界の時よりも付いた感はある。


「さらに、ここに俺の理論を一つ加える」


「なんじゃ、そりゃ?」


「消化器系の向上だよ」


「消化器系??」


「ああ、つまり、胃や腸やその他の内臓器官だよ。」


「どういうこっちゃい?」俺はコーヒーを飲みながら聞く。


「つまり、この年代、心臓や、肺の機能が飛躍的に向上するなら、胃や腸やその他の内臓の消化器官も、他の年代に比べてその機能が飛躍的に向上するんじゃないかってことだよ」


「まあ、そりゃー……確かに」


「でも、心肺機能は分かるけれど、消化器系が向上して、なんか、サッカーのプレーに影響するのか?」と俺。


 すると、首を振って「あーあ、俺なんかよりも、プロのフットボーラーだったお前の方がよっぽど心当たりがあるだろうよ」


「えーっと、それって……」


「お前だって、リーグ戦やカップ戦が重なった時、体がピーピーになってたじゃんかよ」


 ああ、確かに、J3にいた頃、特に夏場、リーグ戦やカップ戦のスケジュールが重なって、体重がどんどん落ちてきたことがあった。そしてもちろんそれに伴ってパフォーマンスもどんどんと低下した。


「なあ、お前、ワールドカップに出るんだよな」司が聞く。


「……おうよ!!」そこだけは一点の曇りもなく言い切れる。


「だったら、ワールドカップのスケジュール、お前知ってんの?」


「えーっと、スケジュール??」


「おう、どんな日程で試合するかってことだよ」


「えーっと、確か……」そういいながら、俺は指を数える


「2018年のロシアでは13日間で4試合だ」


「……ああー、結構きっついなー」


「しかも、相手は、コロンビアにセネガルにポーランドにベルギーだぞ。試合の強度だって親善試合のそれとはまったくの別物だ」


 たしかに、ワールドカップのガチ試合となるとインテンシティーが全く違ってくる。


 しかも、たしか、すべて日本よりもランキングが上のチームだ。


「ついでに、この前の東京オリンピックの時なんて、もっとえぐいぞ」


「ああ、たしかに……でも、どんくらいだっけ?」


「真夏の東京で13日間に5試合、しかも延長戦が2試合だ」


「あああー」


 そういや、ずーっと出っ放しの円堂さんとか、最後ボロボロになっちゃったもんなー。その後、主力は軒並み怪我したし……


「結局、ああいう火事場の時に、しっかりと栄養を吸収できる頑丈な内臓を作り上げるのも大切なんだよ」


 そういう狙いがあったの?


 俺はてっきり、フードファイターかなんかに転身するかとおもってたぞ。


「俺はな、神児、たったの1日だってワールドカップのことを忘れたことなんかねーからな。お前もそのつもりでいろ」


 司はそう言って、コーヒーを一気に呷った。


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― 新着の感想 ―
[一言] 司の意識の高さ凄いわ。 それに比べて主人公の意識はそれでいいんか…
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