01.『友達』
読むのは自己責任でお願い。
色々ない。
あと、多分5万文字で終わるのかなあ。
私、今泉玲には友達がいない。
単純に興味を抱けないから? 見た目に自信がないから? コミュ力ないから?
それのどれにも違うと答えることができる。
何故だか昔からそうだった。
ひとりでいるのが当たり前で、自分もそのことに違和感を感じてはいかなかった。
それでも少し寂しさというのはある。仲良さそうに友達と一緒にいる人を見て羨むことだってある。
「今泉ー」
「はい……」
「もっと大きな声で返事しろー」
「は、はい」
「よし、及川ー」
「はーい!」
ああ、及川さんみたいに大きな返事ができたら、多分、こうはなってなかったんだろうな。
HRが終わって私は担任の服部先生のところに向かった。
「先生、どうしたら大きな声が出せますか?」
「そうだな、わっ!」
「きゃっ!?」
「はははっ、ほら、大きな声出せたろ?」
基本的にいい先生なんだけどこういうところは嫌いだ。
あとなんか髪がツンツンしているし、見た目もや○ざ――少し柄が悪く見える。
「ま、そうだな、今泉は全然他人と一緒にいないし、友達でも作ってみたらどうだ?」
「友達……の作り方が分かりません」
「生徒にこんなこと言うのもなんだけどさ、今泉は見た目もいいんだしそれでできるだろ?」
「み、見た目……だけでできませんよ」
いいのかも悪いのかも分からない。
髪だって切るの面倒くさいから伸ばしているだけだし、ボサボサしてるし。
出るところも一応出てるけど、私より大きい子なんて五万といる世界なわけで。
「俺だったら友達になりたいと思うけどな」
「え、ちょ……そんな真っ直ぐ言われると……」
「いや……口説いているみたいに思われるじゃないかそんな反応されちゃあ!」
「酷い……弄ばれました!」
「ぶっ、ははははは! そういう冗談言えるなら大丈夫だ! ふぅ、そろそろ戻るが頑張れよ!」
先生は私の頭をぽんぽんと叩いて教室から出ていった。
どうすればいいんだろう、悩みつつも席に戻って座ると、後ろの及川さんが横に来て言った。
「服部先生に手を出したら殺すよ?」
(こ、怖いわね……)
可愛い笑顔を浮かべているのにその目が全く笑っていなかった。ついでに言えば私の方を見ずに正面を見ているのも怖かった。
「あ、安心してください……」
「なーに?」
「安心してください……」
「だから、なーに?」
「すみませんでした!」
「あははっ、分かればいいのよ」
そういう意味で先生に近づいたわけじゃないんだ。
いや、まあ結構格好良くて面倒見がいい先生ではある、それに優しくしてくれて嫌いではない。
でも、先生を狙おうとはしていないし、先生が人気なのは知っている。
そもそも、友達の作り方すら分からない女が出しゃばれるわけがないのだ。
(友達頑張って作ろうかしら……)
先生を狙っているわけじゃないけど、せっかく教えてくれたんだし少しくらいは頑張らないとね。
「あぁ……できなかったわ……」
家のソファに寝転んで私は唸る。
どうすれば友達ってできるんだろうか。
「ただいま~あ……陰キャ姉貴……」
「酷い言いようね……ねえ晴、どうしたら友達ができる?」
私は体を起こして固まったままの晴を抱きしめながら聞いた。
これだけが癒やしだ。1日の疲れをふっ飛ばしてくれるくらいの魅力があった。
私は高校1年生で晴は中学の3年生。
姉弟揃って全然恋の話題とかそういう浮ついた話は出てこない。
「ばっ!? だ、抱きつくなよっ」
「いいでしょ、こうしないとやっていられないのよ」
「……陰キャ姉貴には友達なんか無理だ!」
「あ、こうして抱きしめればできるかしら?」
意外と甘えたがりな性格なのと、相手の顔を見なくて済むのは大きいかもしれない。
「だ、だめに決まってるだろ!」
「どうして? 晴は嫌なの?」
「痴女って思われるだろっ。高校に進学した時、俺が悪く言われたら嫌なんだよ」
そもそも「お前の姉貴友達いないよな(笑」とか言われて馬鹿にされそうだけど。
「あ、最近は草よね」
「はぁ? ……とにかく、抱きしめるのはやめろ」
「はいはい、……嫌なら普通にそう言えばいいじゃない、ばか……」
遠回しに言われることが1番悲しい。
だったらあの最恐及川さんみたいに直接言ってくれた方がマシだ。
「あ……今度さ、花ちゃん来るから部屋にこもっててくれよな」
「は……ああああぁぁ!?」
「ど、どうしたんだよ!?」
唯一の癒やしが遠ざかってしまう。
でも……晴のためを思えばあんなことはやめるべきなのかもしれない。
「……分かった、応援するわ」
「な、なに誤解してるんだよ!」
「ふっ、いいのよ、陰キャお姉ちゃんとしてせめてできることはするつもりよ。こもってるだけで晴の役に立てるなら嬉しいわ」
自分より背が低い弟の頭を撫でてリビングを出た。
瞳から溢れた涙を拭いつつ私は2階へと上がって自室にこもる。
「あぁ……友達作らないといけなくなったじゃない……」
それも抱きしめられるくらい仲良くならないといけない。
そうしないと爆発してやらかしかねないからだ。
「姉貴っ、誤解するなって!」
「だって……その子のためにやめなくちゃいけないじゃない」
「別に……姉貴がしたいならいいけど」
「だめよ、私がその子に申し訳ないわ!」
「……なんでこういう時ばっかり……」
新しい癒やしを作るのが必要なことか。
クラスの女の子はどっちかって言うと派手な子ばっかりだし、図書室とかに通ってる子がいいのかもしれない。
人より本! みたいな感じで、でも適度にコミュ力があるような子!
「だからこれで最後にするわ」
「あ……」
「好き……」
「はっ……」
「ふぅ、ありがと。その子と幸せになるのよ」
固まったままの晴を廊下に出して扉を閉じる。
「あぁ……できるのかしらぁ……」
頑張ろう。
最悪、約束を反故にして晴でも抱きしめればいいのよ!
「今泉ーちょっとこーい」
「あ、はい」
翌日。
服部先生に呼ばれて廊下に出ると「どうだった?」と聞かれた。
私はすぐに友達の件だと分かったので「だめでした」と答えておく。
「ふむ……あんまり口出しするべきではないとは思うんだが、髪の毛を綺麗にしてみたらどうだ?」
「髪の毛ですか? でも、これで不都合な――――」
「勿体ないだろ、それじゃあ」
「あの……私が殺されちゃうので、そういうのやめてもらってもいいですか?」
「こ、殺……日本ってそんな殺伐とした世界だったか?」
今だって見てるんだよなぁ……笑顔を貼り付けて見てるんだよぉ!
「あ、友達がやってる美容院の予約、しておいてやろうか?」
「いや、そういう敷居が高いところは少し無理ですね」
お母さんに連れて行かれたこと合ったけど、なんか聞かれるのが嫌だった。
こう無言でぱっぱっぱっと終わるのが理想だ。
「俺の母さんに頼むのはアウトだよなぁ……生徒を家に連れ込むってのもなぁ」
「いつもありがとうございます。でも、大丈夫ですよ!」
「そうか? ま、困ったらいつでも言えよな」
「はい!」
「…………」
「あの……なにかついてますか?」
「いや、なんでもない! じゃ、また後でな!」
また後でって今日は服部先生の授業ないけれど。
「今泉さーん」
「ひぃっ!? だ、大丈夫ですよ!」
「なにがー?」
「せ、先生は放っておけないだけですから!」
「はぁ? 服部先生の話なんか今してないよねー?」
た、助けて晴……。
「やめてあげなよ及川さん」
「あ、早見さん……」
な、なんだこの格好いい人はぁ!?
「今泉さん、服部先生と仲いいんだね」
「い、いえ……あのあなたも狙っているってことですか?」
「うん? いや、僕は違うよ。それより髪の毛梳いてもいいかい?」
「あ、はい……お願いします?」
少なくとも及川さんの追求から逃れることはできた。
優しく髪を梳いてくれてる彼女にお礼を言われなければならない。
「ありがとうございます」
「いや、せっかく綺麗なのに勿体ないからね」
「あの、友達になってくれませんか?」
「僕でいいのかい? 今泉さんがいいなら喜んでならせてもらうよ」
「ありがとうございます!」
「ん、敬語はやめてくれないのかい?」
「あ、少し不快にさせてしまうかもしれないので」
「構わないよ」
耳元で囁かれると落ち着かなくなる。
というか声も格好いい。
髪型はショートで色は青色。
少し不思議なのは左目と右目で色が違うというところだろう。
「か、カラコンなのかしら?」
「いや、これは天然だね」
左目が青色、右目は緑色だ。
身長は自分より高く、そして胸も大きい!
「終わった、うん、より綺麗になったね」
「ありがとう。あ、抱きしめてもいいかしら?」
「え?」
「甘えたがりなの、嫌なら嫌でいいわ」
「別に構わないけれど……」
抱きついてみると分かる。
自分より大きくて格好いい感じなのに柔らかい。
なによりこの正面の山のインパクトは凄まじく、もし彼女が晴に抱きついたらどうなのかが気になった。
もう欲情して抑えられなくなるのではないだろうか。……私だってずっと抱きしめていたいくらいだし。
「ふぅ、ありがとう!」
「どういたしまして、こんなので良ければいつでも構わないよ」
「ね、あなたって本当に人間?」
「えぇ……」
「冗談よ、優しすぎるのも怖いなと思っただけよ」
早見さんと別れて教室に戻る。
「今泉さん?」
「あ……すみませんでした!」
「えーなんで謝るのー? ……早見さんに手を出したら殺す」
そもそもあの子といるには色々足りないものがある。
どちらにしてももう関わることもないだろう。
だから大人しく席に座って俯いておいた。
胸……柔らかかったわねぇ……。
格好良くて胸も大きいとかやべえだろ。