第6話:正しいのに、なぜ伝わらない? 蒼龍くんと「和顔愛語」
こんにちは、佐藤堅明です。
誰かを思って言った言葉が、なぜか相手を傷つけてしまったり、誤解されてしまったりすることはありませんか。
どんなに素晴らしい宝物も、それを包む箱や、差し出す手の温もりがなければ、相手は受け取ることができません。 今日の蒼龍くんは、玄龍さまから「心の光を届ける方法」を学びます。
「放下着」を学んだ蒼龍くんは、過去の失敗や未来への不安を手放し、毎日を軽やかな気持ちで過ごしていました。
「これで僕は、もう立派な修行者だ。あとは、もっと優しくなれば完璧だ!」
蒼龍くんは、誰にでも優しく接しようと決意しました。しかし、彼にはひとつ大きな欠点がありました。それは、顔の表情がちょっと怖いことです。
本人は優しく話しているつもりでも、集中したり真剣になったりすると、つい眉間にシワが寄ってしまうのです。
ある日、蒼龍くんは友達のピィとキューが、大きな木の実を見つけられずに困っているのを見かけました。
蒼龍くんはすぐに助けてあげようと、彼らに近づきました。
「ピィ、キュー、大丈夫か?(真剣な顔で)僕がどこにあるか知っているぞ。君たち、もっと集中して探すんだ!」
しかし、ピィとキューは、蒼龍くんの顔を見た途端、ビクッと怯え、急いで逃げ出してしまいました。
「あれ?どうしてだろう?僕は、正しいこと、優しいことを教えてあげたのに…」
蒼龍くんは悲しくなって、玄龍さまに尋ねました。「玄龍さま、僕は心の中で優しく接しているのに、なぜかみんなに怖がられてしまいます。心だけで優しさは伝わらないのでしょうか?」
玄龍さまは、静かに頷きました。
「蒼龍よ、おまえの心は清く、優しい。それはよく分かっておる。だが、心の中の優しさは、そのままでは相手に届かぬ、温かい太陽の光のようなものじゃ。」
「その光を、この世界に、目の前の相手に届けるためには、二つの道具が必要なのじゃ。」
玄龍さまは二つの言葉を教えました。
一つは、『和顔』。和やかで、穏やかな顔、つまり笑顔のこと。
もう一つは、『愛語』。優しく、思いやりのある、温かい言葉のこと。
「心の中の光は、『和顔』という窓から差し込み、『愛語』という声に乗って、初めて相手の心に届くのじゃ。
眉間にシワを寄せ、鋭い言葉で正しさを説いても、それでは相手はただ怯えてしまうだけじゃろう。」
「『和顔愛語』とはのう、修行の基本じゃ。どんな真実も、どんな優しさも、まず笑顔と温かい言葉で包んで、初めて相手に受け入れてもらえるのじゃよ。」
蒼龍くんは、すぐさまピィとキューを探しました。そして、ピィとキューを見つけると、深呼吸をし、眉間の力を抜き、心からの笑顔を作りました。
「ピィ、キュー。ごめんね!さっきは、怖い顔で大きな声を出してしまった。君たちに、優しく笑いかけて、『一緒に探そうよ』って言ってあげればよかったね。」
その笑顔と優しい言葉を見た瞬間、ピィとキューは安心して蒼龍くんのそばに戻ってきました。
笑顔と優しい言葉という、誰でもできる、最も簡単な二つの修行。それが、人と人との心を結びつけ、世界を明るく照らす魔法の光だと知った蒼龍くんでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「和顔愛語」。 私たち僧侶が、最も大切にしている修行の一つです。
難しいお経を覚えることよりも、厳しい修行に耐えることよりも、目の前の人に「和やかな笑顔」と「思いやりのある言葉」を届けることの方が、ずっと難しい時があります。
正しさを振りかざすのではなく、優しさで包んで差し出す。 鏡を見たとき、もし自分の眉間にシワが寄っていたら、蒼龍くんのことを思い出して、ふっと表情を緩めてみてください。
次回の蒼龍くんは、もう二度と会えないかもしれない不思議なカモメに迫ります。
合掌
佐藤堅明
※本作は現在、「曹洞宗 蒼龍寺」のFacebookでも同時連載中ですが、こちらの『なろう』版ではより読みやすく整えてお届けしています。まずはFacebookの最新話に追いつくまで、毎日更新を続けてまいりますので、楽しみにお待ちください。
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