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【癒やし】蒼龍くん物語 〜小さな龍と学ぶ、心を調えるための「禅の智慧」〜  作者: 蒼龍寺 佐藤堅明
第1章:気づきの門(第1〜12話)

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第5話:頑張りすぎてない?執着を捨てる「放下着」の智慧

こんにちは、佐藤堅明です。


勉強したり、経験を積んだりするほど、私たちは「こうあるべき」という重たい荷物を、心に増やしてしまうことがあります。


「もっと立派にならなければ」「失敗してはいけない」 そんな思いに縛られて、動けなくなっている方へ。 今日の蒼龍くんの姿が、心を軽くするヒントになれば幸いです。

「日々是好日」「平常心」「知足」「脚下照顧」。

四つの教えを学んだ蒼龍くんは、以前にも増して、毎日生真面目に修行に取り組んでいました。

(これだけ真面目にやれば、僕はもう立派な龍の子だ。誰にも負けないぞ!)

しかし、彼の心には、いつの間にか「立派な修行者でいなければならない」という、新しい「こだわり」の種が芽生えていました。


ある朝、蒼龍くんは修行の準備を始めました。

空を飛ぶ練習には、もしもの時に助けられるようにと、重い岩のお守りを両翼に結びつけました。

瞑想の練習には、心が乱れないようにと、様々な教えが刻まれた大きな木札をいくつも抱えました。

さらに、いつ人助けに出くわしてもいいようにと、大量の食料が入った大きなカバンを背負いました。

「よし、これで完璧だ!」


意気揚々と飛び立とうとした、その瞬間です。

「……う、うわわっ!」

体はグラリと傾き、自慢の翼は、地面から一寸も持ち上がりません。

「あれ? どうしてだろう。僕の筋力は、この前よりもずっと強くなったはずなのに……」

重い荷物に押しつぶされそうになりながら、蒼龍くんは必死に羽ばたこうと試みます。しかし、呼吸は乱れ、冷や汗が噴き出し、ついに力尽きてドサッと地面に座り込んでしまいました。


その様子を見ていた玄龍さまが、静かに歩み寄ってきました。

「蒼龍よ。おまえは一体、何をそんなに抱え込んでいるのじゃ?」


「玄龍さま……。僕はもう『おっちょこちょい』だなんて言われないように、完璧な龍になろうと、必要なものをすべて持ってきました。でも、どうしても飛べないんです」

玄龍さまは、蒼龍くんの背中でパンパンに膨らんだカバンを指差しました。

「蒼龍……。おまえが持っているそれは、本当に『今、この瞬間に』必要なものかのう?」


蒼龍くんは、自分の荷物を一つずつ見つめ直しました。

翼に縛り付けた重い岩は、「失敗したくない」という、過去の苦い記憶への恐怖でした。

抱え込んだ教えの木札は、「立派に見られたい」という、自分への期待という執着でした。

カバンの中の食料は、「いつか困るかもしれない」という、まだ来ぬ未来への不安でした。


玄龍さまは、静かに教えを説きました。

「『放下着(ほうげじゃく)』。……すべてを今、ここへ下ろしてしまえ、という教えじゃ」

「おまえは、過去の失敗、未来への不安、そして『完璧な自分』というこだわりを、重い荷物のように抱え込んでいる。それが、おまえが今、本当に成すべきこと――すなわち『今、この瞬間の空』を飛ぶことを、邪魔しておるのじゃよ」


蒼龍くんは、ハッとしました。

「そうだ! 僕は、ただ空を飛びたいだけなのに……自分で自分を重くしていたんだ!」


蒼龍くんは、恐る恐る、一つ、また一つと荷物を下ろしていきました。

重い岩を外し、木札を置き、大きなカバンを地面に置きました。

すべてを下ろした瞬間。

「……あ」

羽のように体が軽くなり、大きく深呼吸をすると、胸の奥に溜まっていた熱い塊が、スッと消えていくのが分かりました。


「ああ……なんて、自由なんだ!」

蒼龍くんはそのまま、何の力みもなく、ふわりと空へと舞い上がりました。


「必要なのは、今、目の前の最善を尽くす力と、それ以外をすべて手放す勇気だけじゃ」

玄龍さまの声が、下の方から穏やかに響きました。


執着を手放し、肩の荷を下ろした蒼龍くん。

彼は、何も持たないことの軽やかさこそが、一番遠くへ飛べる力になるのだと、身をもって知ったのでした。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


「放下着(ほうげじゃく)」。 直訳すれば「投げ捨ててしまえ」という、少し過激にも聞こえる言葉です。


私たちは「過去の失敗」や「未来への不安」、そして「他人からどう見られるか」という重い荷物を背負いながら、今日という道を歩もうとしてしまいます。 けれど、本当に大切なのは「今、この瞬間」を生きること。


もし、あなたが今「苦しい」と感じているなら、それは荷物が多すぎるサインかもしれません。 一つだけでいいので、その荷物をそっと地面に置いてみませんか。 下ろしてみると、驚くほど高く飛べる自分に気づくはずです。


次回の蒼龍くんは、あれ?小鳥のピィとキューに嫌われちゃった?そんなお話です。


合掌


佐藤堅明


※本作は現在、「曹洞宗 蒼龍寺」のFacebookでも同時連載中ですが、こちらの『なろう』版ではより読みやすく整えてお届けしています。まずはFacebookの最新話に追いつくまで、毎日更新を続けてまいりますので、楽しみにお待ちください。


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