第5話:頑張りすぎてない?執着を捨てる「放下着」の智慧
こんにちは、佐藤堅明です。
勉強したり、経験を積んだりするほど、私たちは「こうあるべき」という重たい荷物を、心に増やしてしまうことがあります。
「もっと立派にならなければ」「失敗してはいけない」 そんな思いに縛られて、動けなくなっている方へ。 今日の蒼龍くんの姿が、心を軽くするヒントになれば幸いです。
「日々是好日」「平常心是道」「知足」「脚下照顧」と、四つの大切な教えを学んだ蒼龍くんは、毎日真面目に修行に取り組んでいました。
(これだけ真面目にやれば、僕はもう立派な龍の子だ。誰にも負けない!)
彼の心には、いつの間にか「立派な修行者でいなければならない」という新しいこだわりが生まれていました。
ある朝、蒼龍くんは修行の準備を始めました。
空を飛ぶ練習には、もしもの時に助けられるようにと、重い岩のお守りを両翼に結びつけました。
瞑想の練習には、心が乱れないようにと、友達から借りた、様々な教えが刻まれた大きな木札を抱えました。
そして、いつなんどき人助けに出くわすかもしれないと、たくさんの食料や水が入った大きなカバンを背負いました。
「よし!これで完璧だ!」
意気揚々と飛び立とうとした瞬間、体はグラリと傾き、彼の小さな翼は、地面から少しも持ち上がりません。
「あれ?どうしてだろう?僕の力は、この前よりもっと強くなったはずなのに…」
重い荷物に押しつぶされそうになりながら、蒼龍くんはそれでも必死に羽ばたこうと試みますが、呼吸は乱れ、汗が噴き出し、ついに力尽きて、ドサッと地面に座り込んでしまいました。
その様子を見ていた玄龍さまが、静かに近づいてきました。
「蒼龍よ。おまえは、何をそんなに抱え込んでいるのじゃ?」
「玄龍さま…僕は、もう『おっちょこちょいな怠け者』ではないと証明するために、完璧な龍になろうと、必要なものをすべて持ってきました。でも、力が足りません…」
玄龍さまは微笑みました。「おまえが持っているものを見てごらん。それは、本当に『今、この瞬間に』必要なものかのう?」
蒼龍くんは荷物を見つめました。
重い岩のお守りは、「失敗してはいけない」という過去の失敗への恐れでした。
教えの木札は、「立派な龍でいなければならない」という自分への期待という執着でした。
カバンの中の食料は、「いつか来る大変な未来」への尽きることのない不安でした。
玄龍さまは、静かに教えを説きました。
「『放下着』。すべてを下ろしてしまえ、という意味じゃ。」
「おまえは、過去の失敗、未来への不安、そして『完璧で立派な自分』というこだわりを、まるで重い荷物のように抱え込んでいる。それは、おまえが今、本当に成すべきこと、すなわち『今、この瞬間の最善』を尽くすことを邪魔しておる。」
蒼龍くんは、ハッとしました。
「そうだ!僕は、今空を飛ぶ練習をしたいだけなのに、過去や未来の重さに縛られていたんだ!」
蒼龍くんは、恐る恐る、一つ、また一つと荷物を下ろしました。
重い岩を外し、木札を置き、カバンを地面に置きました。
すべてを下ろした蒼龍くんの体は、羽のように軽くなりました。大きく深呼吸をすると、彼の体から白い息が勢いよく吐き出されました。
「ああ…なんて軽いんだ!」
彼はそのまま、スッと空へと飛び立つことができました。
「必要なのは、今、目の前の最善を尽くす力と、それ以外はすべて手放す勇気だけじゃ」
蒼龍くんは、執着を手放し、肩の荷を下ろすことで、本当に自由になり、軽やかに修行に励むことができるようになったのでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「放下着」。 直訳すれば「投げ捨ててしまえ」という、少し過激にも聞こえる言葉です。
私たちは「過去の失敗」や「未来への不安」、そして「他人からどう見られるか」という重い荷物を背負いながら、今日という道を歩もうとしてしまいます。 けれど、本当に大切なのは「今、この瞬間」を生きること。
もし、あなたが今「苦しい」と感じているなら、それは荷物が多すぎるサインかもしれません。 一つだけでいいので、その荷物をそっと地面に置いてみませんか。 下ろしてみると、驚くほど高く飛べる自分に気づくはずです。
次回の蒼龍くんは、あれ?小鳥のピィとキューに嫌われちゃった?そんなお話です。
合掌
佐藤堅明
※本作は現在、「曹洞宗 蒼龍寺」のFacebookでも同時連載中ですが、こちらの『なろう』版ではより読みやすく整えてお届けしています。まずはFacebookの最新話に追いつくまで、毎日更新を続けてまいりますので、楽しみにお待ちください。
イイネ!と思ったら下の☆☆☆☆☆をタップして応援お願いします。




